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あなたと永遠の時を  作者: 九条 樹
第一章 高校時代
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第44話 【文化祭】電話で

 皆が帰り、病室には私とお母さんの二人っきりになった。

「優希、さっきの態度は何?あれじゃ二人が可哀想じゃない」

 私はそれには答えず黙ったままだ。

「桜ちゃんすごく気にしていたわよ」

 私はお母さんを睨みつける。そんなことはわかってる。

「桜ちゃんは事故は自分のせいだから付き合えないと言ってたのを、私が無理やり取り持ったのよ。それなのにあなたはあんな態度をとって」

 わかってるよ。でも私だって辛いんだ。

「それと最後桜ちゃんは何を言おうとしていたかわかっているの?」

 何か言いたそうなのはわかったけど何が言いたかったのはわからない。

「お母さんにはわかるっていうの?」

「わかるわよ」

「なに?」

「桜ちゃんはあなたの本当の気持ちをまだ聞いていなかったからその不安があったのよ」

 そうか、結局何も話せてなかったもんね。

「あなた自身、二人が付き合うようになればいいと思って、鮎川君に告白するように頼んだんでしょ?それなのに情けないわね」

「分

「わかってるよ!」

 私は思わず怒鳴っていた。

 そんなことはわかってるけど……

「優希の泣きたい気持ちも分かるからこれ以上言わないけど、桜ちゃんにはちゃんとフォローしてあげるのよ」

「わかったよ」

「じゃ、お母さんもそろそろ帰るから一人で泣きなさい」

「うるさい、どうして私が泣かないといけないのよ」

「それだけ強がりを言えるなら大丈夫ね。また明日来るわね。お休み」

 そう言ってお母さんも帰って行った。


 病室には私一人が残された。

 しばらく目が覚めてからの事を考えていると、消灯時間を告げる院内放送が入る。

 時計を見ると9時だ。

 病院って9時になると消灯なんだ、あまりの早さに驚きながら病室を出て待合室に行く。

 そこはまだ電灯が点いていて数人が本を読んだり雑談をしたりしている。

 私は公衆電話の前に立ち電話をしようかどうしようかしばらく考える。

 8時に病院を出ているから約1時間経っていることになる、さすがにもう家に帰っているだろう、ちょうど晩御飯を食べている頃かな?

 さっきの私の態度からして桜はきっと気にしてるだろう。

 せっかく私の意識が戻ったのに晩御飯も美味しくないだろうな。

 私がそっぽを向いたから、もしかしたら私の大輔への想いを疑ってしまったかもしれないし、意識のない間に付き合ってしまった事を気にしてるかもしれない。

 どちらにしても桜が気にやんでることは間違いないだろな。悪いことしちゃったな。

 お母さんに言われたってわけじゃないけど電話でもして桜の心配を取り除いてやらないと。


 電話をかけると桜がでた。

「桜?さっきはごめんね」

「どうしたの?急に」

「さっきは起きたばかりで疲れてたから私態度おかしかったと思うの」

「そうなの?」

 桜が安堵したような声を出す。

「実はあの時凄く疲れてて、それで眠かったし横になりたかったんだけど、皆が話をしてたから寝ないように我慢しながら話を聞いていたの。だからあまり話もちゃんとできなくて……」

「そうだったの?私はてっきり」

 桜はそう言って語尾を濁した。やっぱり気にしてたんだな。

「だからさっきはちゃんと言ってあげられなかったけど、大好きな大輔と付き合うことになったんだね。良かったね、おめでとう。ずっと仲良くするんだよ」

「うん、ゆきちゃんありがとう」

 桜は相変わらず泣き虫だな、もう泣いてる。

「何を泣いてるの?嬉しいことがあったんだから泣くなんておかしいよ」

「今日はゆきちゃんの意識は戻るし、鮎川君とは付き合うことになるし、その鮎川君とのこともゆきちゃんがいろいろ協力してくれたみたいだし。ホントに今日は私にとって凄い日になったよ。それもこれも全部ゆきちゃんのお陰だよ。ありがとう」

「何を言ってるんだよ、私は何もしてないよ。事故も私が悪いんだし、大輔とのことはお互いが好き同士だったからうまくいっただけ。私は関係ないよ」

「ううん。ゆきちゃんにはいつも助けられてる、本当にありがとう」

 桜がまっすぐに私を信頼し、感謝の言葉を続けるから私まで涙が出そうになってきた。

「私こそ今までどれほど桜に助けてもらったかわかんないよ。私の方こそありがとうだよ。そしてこれからもずっと友達でいてね」

 こらえ切れなくなって私も泣きながら話してしまう。

「もちろんだよ、私達はずっと友達だよ」

「うん」


 それから1時間ほどいろんな話をして電話を切った。

 電話をしてよかった。心からそう思った。

 これで今夜は私も桜もゆっくり眠れるだろう。


 明日は文化祭最終日。


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