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あなたと永遠の時を  作者: 九条 樹
第一章 高校時代
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第40話 【文化祭】目が合う?

 20分程して3人で戻ってくると病室のドアが開いていた、どうやら終わったようだけど一応声をかけてみる。

「お母さん、もう入ってもいいですか?」

「どうぞ」

 そう言われて私達3人は病室に入る。

 委員長はまだゆきちゃんの様子を殆ど見ていなかったのでまっすぐベッドに向かう。

 私は恥ずかしさのあまり鮎川くんと少し距離をとったままお母さんの座るソファーに行く。

 鮎川くんも照れているのか委員長と一緒にベッドに向かう。

 私達は付き合うこととなり、こうして一緒にいるだけでドキドキした気持ちになっているけど、ゆきちゃんの状態はなんら変化がない。

「あっ、真下さんのお母さん。来ていたんですね。」

 看護師さんは病室に入ってきたところで、お母さんが来ているのを知って声をかける。

「ちょうどよかった。先生を呼んできますので待っていてください。今日の検査の結果をお伝えするとのことでしたので」

 みんなの顔に緊張がはしる、検査の結果が気になるのだ。

 看護師さんは先生を呼びに行った。その間みんな一様に無言で先生が来るのを待つ。

 しばらくして看護師さんが戻ってきた。

「先生が応接室で待っていますので、そちらまで来て頂けますか」

「分かりましたすぐに行きます」

「ではご案内します」

 お母さんと看護師が出ていき病室には私達3人とゆきちゃんが残された。


「検査の結果どうだったんだろう、気になるな」

 重苦しい雰囲気のなか鮎川君が話し、委員長が答える。

「そうね。今お母さんが先生と話をしているでしょうから、その話が終わったら聞かせてほしいわね」

「そうだな、今ここであれこれ言ってもはじまらないしな」

 私はソファーに座ったまま隣で話す二人の会話を聞きならがゆきちゃんのベッドを見る。

 もう何度このソファーから祈るような気持ちでゆきちゃんを見ただろう。

 早く意識が戻ることを祈りながら。

 そして今も…… ん?何か変な感じがする。なんだろう?ゆきちゃんのベッドを見ていてなにか違和感を感じる。

 一度鮎川くんと委員長に目線を移す。今、二人はベッドから離れて窓際に移動している。

 『今話し合っても仕方ない』と言いながらも相変わらず検査の事を話し合っている。

 そしてもう一度ベッドの方に目線を戻す。

 なんだろう?何かがいつもと違う感じがする。

 それが何なのか分からない。でも何か違和感がある。

 しばらくベッドを見つめたまま考える。

 あぁ分かった、掛け布団が少しずれてゆきちゃんの左腕が少し見えているんだ。

 違和感はそれだったんだ。

 私は布団を掛け直そうと立ち上がりベッドに向かう。

 でも布団がずれるなんて、委員長か鮎川くんが触ったのかしら?

 二人は相変わらず話し合っている。

 私はベッドまでいき、布団を掴もうとした時、ゆきちゃんお手がかすかに動いた。

 私はびっくりしてゆきちゃんの顔を見る。と、ゆきちゃんと目が合う。

 目が合う?ゆきちゃん、私を見てる。よね?

 ってことは?え?

 目が覚めた?

「ゆきちゃん!?」

 私の声に驚いたのだろう二人が会話をやめ駆け寄ってくる。

「ゆきちゃん目が覚めたの?私、桜だよ分かる?」

 ゆきちゃんが何か言いたそうにしている様に見えるが、唇がかすかに動くだけで何を言っているのか聞き取れない。

「ゆきちゃん、気がついてくれたんだね?意識が戻ったんだね」

「真下さん」

「真下!大丈夫か」

 隣で鮎川くんや委員長も口々にゆきちゃんの名前を呼ぶ。

 ゆきちゃんの目はしっかりと私を見てる。

 私もゆきちゃんの目を見る。だけど涙でゆきちゃんの顔がはっきりと見えなくなってくる。

 ゆきちゃんは目を明けているけど反応が鈍く、また今にも目を瞑ってしまいそうだ。

 私は慌ててナースコールを押す。

すぐに「どうされました?」と天井のスピーカーから看護師さんの声がする。

 私達は口々にゆきちゃんの意識が戻ったことを言う。

 私達の言葉がどう伝わったのか分からないが、深刻な事態だということは伝わったのだろう。

 数秒で看護師さんが駆けつけてくれた。

「どうしました、何かありましたか?」

 看護師が駆け込むように病室に入ってきた。

「ゆきちゃんが目を覚ましたんです」

 私は興奮して叫ぶように答える。

「ちょっと待っててください、すぐに先生を呼んできます」

 そう言い残し看護師さんも慌てて病室を出て行った。

 先生が来るのを待ちながらゆきちゃんに話しかける。

 だがまたゆきちゃんが目を瞑った。

「ゆきちゃん?どうしたの?起きて!」

 その声にまた目をあける。しかし黙ったままだ。

 そして寝かせてと言わんばかりの表情でまた目を瞑る。

 私はどうしたら言いのか分からずにただ名前を呼ぶ。

 先生早く来て。そう願いながら名前を呼び続ける。

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