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あなたと永遠の時を  作者: 九条 樹
第一章 高校時代
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第34話 【文化祭】まだ…

 そう思った瞬間勢いよくドアを開け病室に飛びこむ。

「ゆきちゃん!」

 私の声に看護師さんが驚いたように私を見る。

 私は看護師さんの視線を無視し、ゆきちゃんの傍までいきのぞき込む、ゆきちゃんはまるで眠っているような穏やかな顔をして目を閉じたままだ。意識は戻ってないのだろうか?

 チラリと看護師さんの顔をうかがう。

「あの、点滴を変えにきたのですがまだ意識が戻らないようなので少し声をかけていたのです」

 私が、声が聞こえたけど?と言いたげに看護師さんを見たのが分かったのか、看護師さんが自分の行動を説明する。

 申し訳なさそうな声なのは、きっと私が睨みつけるように見たに違いない。

 一瞬ゆきちゃんの意識が戻ったんじゃないかと期待して裏切られたから。

 だけど看護師さんに何の罪も無いのに睨みつけてしまうなんて。

「ごめんなさい、看護師さん話しかけてくれていたんですね」

「早く意識が戻るといいですね。みんなそう願っています」

「ありがとうございます」

 点滴を付け替えた看護師さんが病室を出ていき病室には私とゆきちゃんだけだ。

「ゆきちゃん、私よ、分かる?お願い返事をして。私が悪かったから、約束を破った私が悪かったから、私が悪かったのはもう十分わかったから、だからお願い。返事をして。早くまたあの優しい笑顔を見せて、でないと私もう…」

二人きりになったことで誰に遠慮することも無く私はまた声を出して泣きだしてしまった。


「咲原」

 名前を呼ばれ涙を拭きながら振り向くと、そこには鮎川くんがの姿があった。

「鮎川くん、ごめん。約束してたのに焦っていたいから、学校を飛び出してここまできちゃった」

「いいよ、その気持ち分かるから。それより真下の意識はまだ戻っていないようだな。辛いのは分かるけどあまり自分を責めるなよ」

 私はうつむいたまま返事ができない。

 自分を責めるな、と言う言葉に頷いてしまうと罪から逃れてしまうような気がして。

 でもそんな責任を感じてしまっている私を、少しでも楽にしてくれようと言ってくれた、鮎川くんの思いやりのある優しい言葉が嬉しかった。

頷くことはできないけど、私は泣き顔のまま精一杯の笑みを鮎川くんに返す。

「もう泣くなよ」

「うん」

 鮎川くんの優しさが辛い。とっても嬉しいのに何故か胸が痛む。




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