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あなたと永遠の時を  作者: 九条 樹
第一章 高校時代
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第30話 【文化祭】ゆきちゃんの過去2

 「どうして私がゆきちゃんを助けたことになるんですか?私の方が野良犬から助けてもらったんです」

 そう言うと、お母さんは瞼を閉じ俯きかげんでゆっくりと首を振り、そして私の目をしっかり見つめ直す。

「あの頃、まだお父さんのことを引きずったままの優希だったけど、あの日桜ちゃんに出会ってから変わったのよ」

 どういうことだろう?

「後で優希から聞いた話だけど……」

 そう言ってその頃の話をしてくれる。


「あの日ね、優希は道端に一羽の小鳥を見つけるの。その小鳥はよく見ると文鳥で死んでいるようだった。きっとどこかで飼われていたんだろうけど、逃げ出してしまったみたいね」

「道端で死んだまま放置されてるのはかわいそうと思ったみたい。でも当時まだ心がすさんだままの優希は、その小さな文鳥に対してまで素直になりきれず通り過ぎてしまったの」

「だけどどうしても文鳥が気になる優希は振り返るの、するとそこに泣きながらその文鳥を抱きかかえる女の子を見つけるの」

「優希は飼い主が見つけたと思い胸をなでおろすの」

「そして、その子を目で追うと、前の公園に入っていき辺りをキョロキョロ見回し、何かを探しているようだったらしいわ」

「不審に思い後をつけてみると、その子はある場所で穴を掘り出したの、どうやら文鳥のお墓を作るみたいと思ったその時、文鳥を足元において穴を掘っているその子の前に2匹の野良犬が現れるの」

「その子は文鳥を抱えあげて守ろうとしたらしいわ。だけど犬に吼えられ今にも泣き出しそうになり、足元は震えていたみたい。でも文鳥を守るためしっかりと抱き抱えたまま放そうとはしなかった」

「それを見ていた優希は犬目掛けて思いっきり石を投げるの、するとたまたま上手く石が一匹の犬に当たったらしく犬は鳴き声をあげて逃げて行ったの。一匹が逃げたことでもう一匹も釣られるように逃げて行ったらしいわ」

「その時の犬に襲われそうになってた女の子が桜ちゃんよ」

 そうだ、確かにお母さんの言う通りだった。だけど、それがどうしてゆきちゃんを助けることになるの?

 今聞いても私が助けられただけの話にしか聞こえない……

「その後、犬を追い払った二人は一緒に穴を掘るよね?道具も何もなくその辺りにある石や素手で一生懸命掘ったよね」

 そう。ゆきちゃんも手伝ってくれて一緒に穴を掘った。

「その時二人で話した事を憶えている?大事な話をしたのよ。それまでずっとすさみ切っていた優希の心を救うようなとっても大事な話を……」

 何を話したんだろう?覚えてない。文鳥の話をしたような気はするけど、何か重大な会話をしたような記憶はない。

「何を話したんですか?私、はっきりと憶えてなくって。ごめんなさい」

「いいのよ、桜ちゃんにすれば普通の会話だったのだから憶えてなくても無理はないわ、その時の二人の会話はね……」





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