第27話 【文化祭】病室内の様子
しばらく黙ったまま座っていると、鮎川くんが話しかけてきた。
「真下はどうなるんだろうな。意識がもどらないっていうのは心配だ」
「うん、早く気がついてほしい」
それだけで会話が止まる。
また重苦しい時間が流れる。私自身何を話していいか分からない。
「喫茶店」
鮎川くんがつぶやく。
「え?なに?」
「明日の文化祭で俺達のクラスは喫茶店をするだろ、明日の午前中は俺達4人で店に出る予定だったけど、どうなるんだろ」
「ゆきちゃんがこんな状態なのにそれどころじゃないよ。私はずっとここにいる、どこにも行かない」
当然だ。
ゆきちゃんが事故に遭ったのは私のせいなんだから、ゆきちゃんの意識が戻るまでここを離れるわけにはいかない。
「ダメだ。明日はちゃんと学校に行くんだ」
いつの間に入ってきたんだろう、そこに担任の先生がいた。
「嫌です、私のせいでこんなことになったんですから、ずっとここにいます」
「ダメだ、お前達二人はもう帰って明日の文化祭にちゃんと出ろ」
「嫌です」
「桜ちゃん、優希は大丈夫だからちゃんと学校に行って、優希もその方が喜ぶと思うわ」
ゆきちゃんのお母さんが医師と共に病室に入ってきた。
お母さんを見たとたんまた涙が出てきた。
「お母さん、ごめんなさい、私のせいでゆきちゃんが、ゆきちゃんがこんなことになっちゃって」
私は泣きながら謝ることしかできなかった。
「私が約束を破ったから、だからゆきちゃんが心配して捜しにきてくれて」
涙が込み上げてきて言葉が続かない。
「ごめんなさい」
「桜ちゃん泣かないで、優希は大丈夫だから、だから今日はちゃんと家に帰って。そして明日文化祭に行ってね」
私は泣きながらうなずく。
「それじゃ私は今からお医者さんと話があるから、少しおもてで待っててくれるかしら」
「はい」
「よし、じゃあ鮎川も出るぞ」
先生が私と鮎川くんを伴って病室を出る。
私達3人は病室から少し離れた待合室のような場所で、ゆきちゃんのお母さんと医師の話が終わるまで待つことにした。
しばらくしてトイレに行くため席を立つ。
トイレから出た私は、まっすぐとは待合室に戻らずゆきちゃんの病室の前まで行く。
するとドアの前で看護師さんが何か作業をしている。キャスター付きのステンレスの台には色々な器材が乗っている。何をしているのかよく分からないけど、その作業のためドアが開いている。
カーテンがひいてあるので中の様子は見えないが、話し声は聞こえてくる。作業をしている看護師さんの横に立ち、話が終わるのを待ってる風を装い、それとなく二人の話に耳を傾ける。