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あなたと永遠の時を  作者: 九条 樹
第一章 高校時代
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第24話 【文化祭】副医院長先生

「何をしてるんだ。レントゲン室に行くんじゃないのか。患者は一刻を争うんだ早くしないか」

 先生に怒られ、看護師は何か書類のようなものを持って、大急ぎでレントゲン室のあるであろう別館へと走って行った。

「看護師が何か失礼をしたようで申し訳ありません」

 大きな体に少し出たお腹。それと白髪交じりではあるが綺麗にセットしていて清潔感のある先生がいきなり深く頭を下げた。

 私にとって病院の先生とは、威厳があって尊敬すべき存在。その先生がいきなり頭を下げてきたので私はびっくりして言葉をかえす。

「そんなことありません。私が騒いでしまったので注意されただけです」

「いえ、話は聞こえていました。彼の言われるとおりです。あの看護師には後でしっかりと指導しておきます」

 先生の名札を見ると名前の上に『副医院長』と書いてある。

 副医院長ともなると人格も出来た人じゃないとダメなんだろうな。

 さっきの看護師は後でこの副医院長に怒られるのかな?そう思うと少し申し訳ない気持になる。

「ここでしばらく待っていてください」

 副医院長は、おもむろにそう言ってあの厳重な扉の中へ入って行った。

 私達には重い扉でも先生達にとってはただの扉なんだなぁ。と心の中でなんとなくそんなことを考えながら待っていると先生はすぐに戻ってきた。

「担当の医師に聞いてきました。お友達は、意識がまだ戻っておらず予断は許しませんが、とりあえず命に別状はないとのことです」

 心配している私達を気遣ってゆきちゃんの状態を聞いてきてくれたようだ。

 だけど先生の言葉をどう解釈していいのか分からない。

 命に別状がないと言って安心していいのだろうか?

 それとも意識が戻らないというのは相当ひどい怪我をしているのだろうか?

 命は助かってもなにか後遺症のようなものが残るのだろうか?

「詳しくは、学校の先生が来られてから説明するそうですので、一緒に話を伺われるとよろしいでしょう」

「一緒に聞いても大丈夫なんですか?」

 鮎川くんが先生に聞いてくれる。

「大丈夫ですよ。私から担当の先生に話しておきましたから。それからお友達もきっと大丈夫です。ですからお嬢さんも元気をだしてください」

 私の方を見て微笑みかけてくれる。なんて優しい先生なんだろう。

 これほど私達の事を気遣ってくれるなんて、先ほどの看護師とは全然対応が違う。

 感謝の気持ちがそのまま態度に出た感じで、私は深々と頭を下げながら何度もお礼を言う。


 副医院長がどこかへ行ったので私達はまた長椅子に座ってゆきちゃんが検査から戻ってくるのを待つ。

 副医院長のお陰で、命に別状はないと分かって少しほっとした気持ちになる。

 やっと涙が止まった気がする。

 今日はどれだけ泣いただろう?いや今日だけじゃない、この前からずっと泣いてばかり。

 いったいどれくらいの涙を流したんだろう。

 涙っていくら流しても枯れることはないのね……


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