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あなたと永遠の時を  作者: 九条 樹
第一章 高校時代
19/68

第19話 【文化祭】どこにいるの?

 担任の許可をもらい早退をし、学校を出てまずは駅周辺へ移動する。

 駅前には新築のアミューズメントビルやホテル、百貨店など大きなビルが立ち並び、一歩裏に入ると古い雑居ビルやら小さな飲食店などが軒を連ねる。昨今寂れている所が多いと言われている商店街だがここは未だに週末ともなれば多くの若者が行き来する場所になっている。

 よってこの辺り一帯には喫茶店やゲームセンター、洋服屋からアクセサリーショップ、映画館までなんでもある。まさに繁華街だ。

 朝に家を出てから夕方まで時間をつぶすならこの辺りにいる一番可能性が高いだろうと話し合いこの辺りで捜すことにする。

 二人一緒に捜しても効率が悪いので二手に別れる。

 大輔にはアミューズメントビルの方を頼み、私は百貨店を捜す。


 百貨店の正面玄関から入り1階の宝石店から早足に見てまわる。百貨店は10時オープン、今はまだオープンして間もないため人がまばらだ。

 その分捜しやすいが店員が制服姿の私を見ては怪訝そうな顔をしている。確かにこんな時間に制服を着た女の子が一人で宝石を見てまわるのはおかしい。

 そう考えると桜がこんなところにいるはずないと思い2階にあがる。2階は化粧品売り場だ。ここにも桜はいそうにない。

 私はエスカレーター横の各階の案内を見る。3階にバックや財布などの売り場が並び、4階に婦人服とアクセサリー売り場。5階は高級婦人服、6階は紳士服と続き9階のレストラン街まである。

 どこに居そうか思案し、とりあえず4階のアクセサリー売り場まで行ってみることにした。だがこの階にもいない。どこに居るのかさっぱり分からない。そもそもこんな時間の百貨店に立ち寄ったりするだろうか?よくよく考えるとここには居ないのではないかと思い始める。

 やはりアミューズメントビルの方が可能性が高いのではないだろうかと思い、4階のエスカレーター横の硝子越しにそちらの方向を見る。

 百貨店の正面玄関前には大きな交差点がある。交差点の車道は東西のみで片側3車線あり、南北は百貨店と商店街をつなぐ形で歩行者だけが渡れるようになっている。

 商店街の入り口の西側にはシティーホテルが建っている。一階が旅行代理店になっているこのホテルのロビーは確か6階にあった記憶がある。

 これは以前桜の誕生日会に桜のご両親に是非にとお誘いを受け、このホテルでフランス料理をよばれたことがあり、その時にロビーが6階にあるのを不思議に思ったから覚えている。

 そして商店街の東側には大きなアミューズメントビルが3棟並んでいる。このビルは駅前第一ビル~第三ビルという分かりやすい名前が付いている。大輔はそのビルのどれかを捜しているに違いない。

 私はここを出て商店街の方へ行こうと思いもう一度その交差点に目線を落とす。

 するとそこに捜し求めていた桜がいた。

「桜!」

 思わず叫んでしまい、はっとして周りを見ると遠巻きに店員が変なものを見るような顔でこちらを伺っている。

 でも今はそんなことを気にしている場合じゃない。もう一度交差点の方を見る。

 どうやら桜は信号待ちをしているようだ、南側にある百貨店前から北に向かって信号を渡ろうとしているのだろう。

 早く追いかけないと。

 気が急くがあえて冷静に信号を確かめる。今桜から目を離してしまうと見失う可能性があるので信号を渡った後どちらの方向に歩きだすか確かめてから追いかけた方がいいと考えてのことだ。

 この交差点、西向きには殆ど車が走っていないが東向きは車が多い、よく見るとその車が一斉に動き出したところだ、ということはまだ歩行者側が赤になって間もないはずだ。

 ここで桜の行く方向を確かめるより直ぐに追いかけた方が良いと判断した私は大急ぎでエスカレーターを駆け下りる。

 心の中で桜に『待ってて』と願いながら。

 運動神経はそれほど悪くないつもりだが桜を見つけて鼓動が早くなっているせいか直ぐに息が上がってきた。しかし気持ちで走り続ける。足がもつれそうになるが何とか踏ん張って最後まで駆け下りた。そしてそのままわき目もふらず正面玄関へ直行する。

 百貨店の正面玄関を出るとすぐ目の前が交差点だ。

『いた!』私の鼓動は更に早くなる。

 降りてくる間に信号が変わったのだろう、桜は既に交差点を渡りきっている。

 その渡りきったところで何かの勧誘にでも声をかけられたのか立ち止まって話を聞いている。

 ここからだと桜の横顔しか見えないが明らかに困っているのが分かる。普段ならうっとうしい存在の勧誘だが今は桜を引き止めてくれていることに感謝さえしてしまう。

 そして桜に向かって走り出そうとした時、桜が手と首を振りながら勧誘者から逃げ出すように歩きだした。

 「待って!」





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