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あなたと永遠の時を  作者: 九条 樹
第一章 高校時代
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第14話 【文化祭】訪問者

 部屋のドアを少し開けて玄関の方に聞き耳を立ててみる。間もなく愛花が勢いよく階段を駆け上る音が聞こえてくる。

 ゆきちゃんが来たのかな?

「お姉ちゃん葵さんって人が来てるよ、どうしてもお姉ちゃんに会いたいんだって」

 葵くん?葵くんがきたの?どうしたんだろう?もうゆきちゃんと会う決心もついたし、葵くんも来たのなら会ってみよう、そう考えて階段を下りる。

「お姉ちゃんなんだか元気が出たみたいね」

 愛花の言葉に笑みで応え玄関へ向かう。

「桜花ちゃんこんばんは」

 葵くんはどことなく思いつめたような表情で挨拶をしてきた。

 ある程度の決意を持って会ってみたものの、そのこわばった顔を見た瞬間に緊張してしまった。

「どうしたの?突然」

「優希から聞いたと思うけど、俺がこの前桜花ちゃんに言ったことは嘘だったんだ」

 ゆきちゃんの言った事は本当だったんだ。どうしてあんなひどい嘘を?

 私はなんとも言えない腹立たしさと同時に悲しい気持ちになった。

 葵くんがあんな嘘をつく人だったなんて…… だけど葵くんが何故そんな嘘をついたのかを知りたくて平静を装いながら話す。

「そうなんだ、ゆきちゃんが言ってたことは本当だったのね」

「ごめん、どうしても謝りたくて」

「どうしてあんな嘘をついたの?あんな嘘をついても何もいいことなんてないよ、私もあれからずっと辛い思いをしたし、ゆきちゃんや鮎川くんにも迷惑なことだよ」

 だんだんと感情的になってくる。

「わかってる、だけどどうしても桜花ちゃんのことが好きでその気持ちが抑えきれなくてあんな嘘をついてしまったんだ、でもすごく反省してるし皆には本当に悪かったと思ってる。もう二度と嘘なんてつかないよ。本当にごめん」

 葵くんの言っていることは分かる。だけどそれだけでそんな嘘をつくなんて酷い。

 葵くんの気持ちを考えると同情する部分もあるのは確かだ、私も鮎川くんがゆきちゃんを好きだと聞いた時はものすごく悲しかったから。

「もうあんな嘘をつかないでね」

「約束するよ」

 葵くんも反省しているみたいだし、私としてもあの話が嘘でホッとした気持ちもあるのでこれ以上咎める気もなかった。

 そもそも本当に反省して謝ってる人に対してきつく言うことが出来ない性格だってことは自分でよく分かっている。

「それで優希は他に何か言ってた?大輔のこととか、自分自身のこととか」

「何も聞いてないよ、あの日家に来てくれたのだけど私が出かけていたので会えなくて、妹に葵くんの話が嘘だったってことだけ伝言して帰ったみたい」

「そうなんだ、おかしいな」

「何がおかしいの?」

「俺の嘘で桜花ちゃんが落ち込んでると分かったとたん、心配だからと言って大慌てで桜花ちゃんの家に来たはずなのに、桜花ちゃんに会わずに伝言だけ頼んで帰るなんてなんとなくおかしい気がする」

「ゆきちゃんは明日全てを話すからと言う伝言も残していったよ」

「どうして明日なんだろ?電話でもいいし、もう一度会いに来てもいいから直ぐに伝えればいいのに」

 葵くんは何か言いたそうだけど物言いが遠まわしではっきりとしない。

 思い起こせば私自身ゆきちゃんが愛花に伝言を頼んで直ぐに帰ったことには少し疑問を感じたことを思い出す。

 いつもならもうすぐ帰ってくるのが分かっていたら待っててくれるのに。

 あの時点では私自身会うのが辛かったから、会わなくて済んでよかったと思ったのであまり深く考えなかったけど、葵くんの言い回しに何か不安を感じる。

「葵くん、何が言いたいの?」

「大輔が優希を好きだって言うのは嘘で本当は桜花ちゃんのことが好きなんだ」

「え?」

 私はゆきちゃんのことを色々と考えていた為に葵くんの話をちゃんと聞いてなかった。

 いや、聞いていたつもりだった。だけど今、信じられない事を言われたような気がしてきっと聞き間違いだと考えた。

 葵くんの言葉を思い返す。思い返すとやっぱり鮎川くんが私を好きだとか言ったような気がする。

 そう思うと突然心臓が圧迫され口から飛び出しそうになる。事実なら嬉しいことだけど突然の告白に胸が痛い。息も苦しくなってくる。

 でも聞き間違いだと恥ずかしいのでもう一度、今度は聞き逃さないように葵くんに問う。

「ごめん、今何て言ったの?はっきり聞いてなかった。もう一度言ってもらってもいいかな?」




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