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あなたと永遠の時を  作者: 九条 樹
第一章 高校時代
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第12話 【文化祭】決心

 桜の家の前で大きく深呼吸をする。平日は毎日のように押すチャイム、普段は意識する事のないボタン。今はそのボタンを押そうとする指が震える。

 今度は先ほどよりゆっくり深く息を吸い込む。そして胸いっぱいに吸い込んだ空気をゆっくり吐き出し息を整える。


 意を決して押したチャイムからはいつもと変わらない音が出る。

 少しして妹の愛花ちゃんの声がする。

「愛花ちゃん、こんにちは」

「優希先輩。今日はどうしたんですか?お姉ちゃん?」

「桜に会いたいんだけどお願いできる」

「それが、今ちょっとお母さんと買い物に出かけてるんです。もう少ししたら帰ってくると思うのであがって待ってますか?」

「居ないのならいいよ。私が来たことだけ伝えておいて」

 心配だなんて偉そうなことを言いながら、心の中では桜が居なくてほっとしている。

 桜になんて言えばいいのかまだ考えがまとまっていないのもある。けど…言わなくてはならない事実を今は回避できた事にほっとしてる自分がいるのが分かる。

 相変わらず嫌な女だ。

「わかりました、ちゃんと伝えておきますね」

「お願いね。それと明日、明後日は土日で学校が休みだから月曜日の朝にまた来るので一緒に学校に行こうって言っておいてね」

「はい」

「それじゃあお願いね」

 そう言って桜の家をあとにする。

 一日でも早く桜に彰弘のことは嘘だよって言ってあげないといけないのに。

 素直に全てを話せばいいのに、色々考えてる私って最低だ。

 自己嫌悪に陥りながら暗い気持ちで家に向かって自転車を走らせる。

 本当に何も言わなくていいの?月曜日まで?そんなに長い時間桜を苦しめていいの?

 もう全てが分かっているのに黙ったまま?それでも友達?自問自答を繰り返す。

 やっぱりダメ。

 私は慌てて桜の家に戻ってもう一度チャイムを押す。

「優希先輩、どうしたんですか?」

「言い忘れていたんだけど、もう1つ伝えて欲しいことがあったの」

「なんですか?」

「彰弘が言ったことは全て嘘だから、桜は何も気にしなくていいから。詳しくは明日もう一度来るからその時に全て話すと伝えておいて欲しいの」

「ごめんなさい。明日からおばあちゃんの家にお泊りに行くので皆いないんです」

「そうなんだ」

 私はどうすればいいのか少し考える。

「じゃあとりあえず彰弘が言った事は全て嘘だったって事だけ伝えておいて。詳しい話は月曜日の朝むかえに来るからその時に話すって言っておいて」

「わかりました。ちゃんと伝えておきます」

「くれぐれもお願いね」

「任せておいてください」

 相変わらず愛花ちゃんは軽い。その軽さがやや心配だ。

「愛花ちゃん頼りにしてるよ」

 満面の笑みでブイサインをする愛花ちゃんに一抹の不安を抱えながら桜の家をあとにする。


 桜を待って全てを話すという選択肢もあった。

 あったというよりもそうするべきだったとは思う。だけど今はこれで精一杯だ。

 でも月曜日には絶対全て話そう。桜とはずっと親友でいたいから。

 

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