第10話 【文化祭】彰弘の嘘
始業のHRが始まる前に大輔に話しかける。
「大輔、昨日彰弘つかまった?」
「いや、探したけど見つからなかった。咲原はどうだった?」
「昨日桜の家に行ったけど会えなかった。妹の話しではなんだか凄く落ち込んでるみたい」
「そうか。そういえば今日は咲原と一緒に来なかったのか?」
「今朝もいつもどおり桜の家によったんだけど、妹が出てきて今日は体調が悪いから学校を休むって言ってた」
「なるほど、学校を休むくらいだから何かあったに違いないな」
「私もすごく心配。桜は家にいるみたいだけど会ってくれないから事情が聞けないの、あとは彰弘に聞くしかないね」
そう言って私は教室内を見回し章弘を捜す。
「彰弘もまだ来てないみたいだね、もしかして休みかな?」
「彰弘まで休んだら咲原の事が全くわからないな」
そうこうしているうちに先生がやってきた。
HRが始まる。私達は話を打ち切って席に着く。
放課後・・・
結局彰弘も来なかったので委員長に許しをもらい、買い物係を免除してもらい大輔と一緒に彰弘の家に行くことにした。
委員長もただならぬ雰囲気を感じたのかあっさりと許してくれた。代わりは委員長自らがしてくれるそうだ。
早速自転車で彰弘の家まで行く。
大輔がチャイムを鳴らす。しばらくして彰弘が出てきた。
彰弘は大輔だけだが来たのだと思っていたらしく私の顔を見てビックリしていた。
私は大輔を押しのけて桜のことを聞く。
「彰弘、昨日桜と何があったの?」
彰弘が険しい顔をしながら何か言おうとするが言い切れないように口をつぐむ、すると大輔が、
「どうしたんだ?咲原と何かあったんだろ?はっきり言えよ」
いつもは人に物を言うときは気を使うタイプの大輔がキツイ言い方をしたので少しびっくりした。そして続いて私も口をはさむ。
「桜が今日学校を休んだんだよ。桜が学校を休むなんてよぽどのことがあったに違いない。彰弘なら何があったか知ってるでしょ?」
彰弘はうつむいたまま今にも泣きだしそうな顔をしている
「どうしたんだよ、黙ってたら分からないだろう」
また大輔が彰弘を問い詰める。やっぱり桜の事が心配なんだろうな…やや感傷的になってしまうが今はそんなことより彰弘から事情を聞くのが先決だ。
「彰弘、何とか言えよ」
彰弘が意を決したように何か言おうとしてる
「二人とも、ごめん」
「何がごめんだ?」
ほぼ同時に私と大輔が問う。しかしそれだけ言うとまた口をつぐんだ。
「桜に何かしたの?桜が私に何も相談してくれないなんて今までになかったことよ。何があったの?もしかして何か酷いことをしたの?」
彰弘が慌てたように
「何もしてない、何かをしたんじゃない、少し話をしただけ・・・」
語尾が消え入りそうで最後は何を言っているのか聞き取れないほどだ。
「咲原と何を話たんだ?」
「ごめん、俺、嘘を言ってしまって・・・」
「何を言ったんだ?はっきり言えよ」
珍しく大輔が感情をあらわに彰弘に詰め寄る。それに圧倒され、萎縮してしまって余計に話せないようだ。私は少し大輔を落ち着かせて改めて彰弘に聞きなおす
「要するに昨日私達が居ない間に桜と何か話しをしたんだね?そしてその時桜が傷つくような嘘をついたってことだね?」
意識的に優しく、そしてゆっくり話しかけると彰弘は頷いた。
「何を話たの?どんな嘘を?怒らないから言ってみて、桜が心配だから」
あくまでも優しく問いかける、そうするとやっと重い口をひらきだした。
「昨日お前達が居なくなったのを見計らって桜花ちゃんを連れ出して二人で話しをしたんだ」
「うん。それで何を話したの?」
「大輔と優希が好き同士だって言った。だから大輔は諦めて俺と付き合って欲しいって言った」
全身の血液が温度を増しながら一気に頭に向かって流れるのがはっきりと感じられる。
「バ カー!!!」
私は思わず怒鳴っていた。怒らないと約束していたけど、そんなことは一瞬で頭から吹っ飛んでいた。