体育―外。
三題噺もどき―きゅうひゃくさんじゅうろく。
じわじわと、何かの虫の声が聞こえる。
じりじりと、日差しが照り付けてくる。
じくじくと、むき出しの肌は刺されている。
「……」
帽子を被ったところで、守られるのは頭だけ。
それ以外のところは暑くて痛くて……さらされ続けている。
そもそも、被っている帽子のせいで暑さが増している感がなくもない。
逃げられるはずの熱がこもっている感じがして……暑い。
「……」
もう、気づけば9月も半ばに差し掛かろうとしている。
それなのに、暑さは変わらずあり続け、むしろ暑さが増しているような、勘違いさえ起こしている。そんなわけないだろうに。
「……」
春にひらひらと舞っていたはずの蝶々はいつの間にかいなくなり。
気付けば、ジワジワと喧しくなく蝉が騒ぎ続け。
夜になれば涼しげな虫の音が聞こえることもあるが、それすら騒がしいと思ってしまう。
暑さというのは、人を攻撃的にする何かがあると思う。
「……」
その暑い中で、何をしているのかという感じだが。
普通に、体育の授業を受けている。
今は私は休憩中である。簡単な試合形式で進めているのだけど、私はやる気はないしそもそも運動が嫌いなので早々に退出させていただいた。……みんな楽しそうで何より。
「……」
この暑い中外でするなんて正気じゃないと思うが、そもそも教師が正気ではないので仕方がない。昭和思考の塊みたいな、今世間では叩かれるだろうなという教師だ。若く見えるけれど、まぁ、本人が、そういう風に育てられて教えられたらこうなるんだろう。
「……」
しかしこの教師が、生徒には案外好かれているんだから全く分からない。
私はこういう熱血根性みたいな教師は嫌いだし、大抵みんな嫌いだろうと思っていたんだけど。そうでもないらしいと言うのが、去年の修学旅行で発覚した。
「……」
ホントのところ、どうなのかは知らないのだが。
いくつかの女子のグループから、夜にトランプでもしないかとかウノでもしないかとか、男子にも同じような誘いを受けていたとか、いなかったとか。そもそも、そういうカードゲームの類は持ち込んではいけなかったはずなんだけど。
まじか……とドン引きしたのは記憶に新しい。
「……」
誘うようなグループは大方想像がつくのだけど。
何だろう……問題児とまではいかないが、それなりに手のかかるような、そんなグループがどこにでもあるわけで。
……まぁそうか。好かれていると言うよりは、そのグループが目立って見えるからそう見えるだけで、実際はそうでもないのか。
「……」
あの子も、あの教師は嫌いだと言っていた。
その周りに居た子達も、苦手だ嫌いだと言っていた。
授業を見ていても、皆反抗することはないが、どこか渋々としている所もある。
あの辺がうるさいだけだったようだ。納得納得。
「……」
今も、あの教師がいるのは、そのグループであろう女子がいるところだ。
体育は基本的に男女別なのでここに男子はいない。今日は体育館でバスケをしているらしい。そっちの方がよかった。
「……」
こちらに視線が向かないことはありがたいのだが、まぁ、冷静に見れば贔屓がすごいなぁと思わなくもない。
だからと言って、こちらに何かをしてほしいなんてものは一切ない。むしろそのまま、お気に入りだけ大切にしていてあげてくださいという感じだ。
「……」
そろそろ、こちらの試合もひと段落つきそうだ。
もうみんな私の事は忘れてその人数で何とか回してくれないだろうか。
というか、あと何分だこの授業……。
「……、」
遠くにあるけど、はっきりと見える学校の巨大な時計を見る。
なんだ、もう少しで終わりじゃないか。
もうこのままギリギリまで粘っておきたいところだ。
動きたくもないし、走りたくもないし、立ち上がりたくもない。
「――ちゃん」
「……」
呼ばれたので、行かなくては。
もう終わりで良いという話で合いであってくれ。
お題:蝶々・トランプ・帽子




