鏡の虚像
聴き慣れた音で意識が戻った。周りを見渡せば見慣れた自分の部屋だった。まだ鳴り続ける目覚まし時計を止め身体を起こしリビングへ向かう。
1章 目覚め
寝ぼけ眼をこすりながら大学に向かう電車に乗り込む。見慣れた光景、毎日同じ電車に乗り大学に向かう。そんな日々を淡々と過ごしていた。そのときはこのあとのことなんて心配すらしていなかった。
今日は1限はなく2限から授業のため1限の間は図書館でレポートでも書いて時間を潰そうと思いながら電車を降り大学に向かって歩いていた。そのとき後ろから息を切らしたような急いで来たことが伺える声が聞こえた。
「唯華〜置いてかないでよ〜」
彼女は高校時代からの友人の美月だ。彼女とは学部も違うため中々会う機会もなくここ数週間話していなかった。だが彼女は私に対して心配するような目線を向けてきた。私はそれを不思議に思い彼女に問いかけた。
「私なんかした?」
「知らないの!?唯華全然大学来てなくて単位あげれないって教授達が噂したよ。」
「嘘でしょ?」
「うんにゃ、本当だよ。唯華真面目だったのにね」
もともと単位を取れる程度には課題をこなし毎授業出ていたので心底驚いた。そして彼女は嘘をつくような人ではないし、そんな嘘をつく理由が思いつかなかった。
2章 嘘と真実
私は大学に着くとすぐに教授の研究室に急いでいた。その教授のやってる授業は受けてる人が少なかったし、私は何度も話したことがあったため覚えているだろうと思ったのだ。しかし実際の返答は想像しないものだった。まるで私のことなどそんなに知らないただの授業を極稀に受けにくる生徒だと思っていたのだ。私とよく話していた記憶もなく単位をもらいに来たのかね?と冷たくあしらわれてしまった。冷水を頭から被った衝撃があった。そのまま私はほかの教授にも話を聞こうと研究室を回ったりしたが返答は似たようなものだった。その日はとりあえず受ける授業を受けて家に帰ることにした。
3章 虚像と実像
家に着くと服を着替えずにそのままベッドにダイブした。普段ならあり得ないことだが混乱してる頭ではそんなことはどうでもよかった。そのくらい疲れていたし、何より混乱していた。確かに私は一回くらいは休んだことがある授業もある。しかしそれ以外は毎授業出ていた記憶もある。だが教授は誰1人として覚えていない。
私の記憶が違うのかなんなのか分からないが普通なら腑に落ちないはずなのにどこか理解できてる自分がいた。だが未だにどうすればいいのか分からないままベッドで横になっていた。どうすればいいのか。
そんなことを悶々と考えていた。
4章 No name
だが夏だからだろう。帰る途中にかいた汗が冷えて寒くなってきた。さすがにこのままではまずいと思い、洗面所へと向かった。とりあえず服を脱ぎ洗濯機の中へと放り込んだ。外をみれば日も落ちすっかり暗くなっていた。そんな中シャワーを浴びようと風呂場へと向かう。だが足取りは普段の何倍も重い。風呂場の途中にある鏡をふと見るとまるで別人のようだった。普段から自分のことをジロジロ見てる訳ではないが明らかに何が違った。言葉で表せる訳ではなかったが何か異質なものを感じたが特に気にも留めなかった。そのままシャワーを浴び身体を拭いて出てきた。冷房がきいてるだけあって洗面所でも寒かったため着替えを着て化粧水を塗ろうと鏡の前に立った。しかし今度こそしっかり感じた。鏡に映る自分が自分ではないことに。確かに自分ではある。だが決定的に目が違う。まるで軽蔑するような、私なのに私じゃない目。私は無意識的に怖くなり目をそらした。だが鏡の中のそれも知っていたのだ。私が気づいてしまったことを。鏡から手が伸びてきて私を押した。そのとき私は妙な浮遊感に襲われた。確かに私は家にいた。しかし今は崖の淵から落ちているのだ。下をみれば暗闇が広がる。ただ恐怖と浮遊感に包まれながら暗闇に吸い込まれた。
5章 目醒め
ハッと目が覚めた。だが意識が徐々にハッキリすると聴き慣れた目覚ましの音が聞こえる。周りをみれば自分の部屋だった。また今日もなんてことない日常が始まる。先程のは夢だったのだ。そうじゃなきゃ私は落ちたのだから。思いながら電車に乗り込んだ。窓に映った自分の陰が笑ったような気がした。
友人の夢の中のエピソードをアレンジして小説化したものです!楽しんでくれたら幸いです。




