7話 ゴブリン筋愚
さて今日はどうするかな。
昼頃に起きて、宿屋の昼食を食べながら考えていた。
少しだけど金に余裕はあるし、毎日依頼を受けなくても問題はないんだよなぁ。
ありがとう魔石、そして魔石を教えてくれたテレーゼと思いながらパンを噛みちぎっていた。
硬っ!しかしこのパン硬いな、例えて言うならフランスパンをもう少し硬くしたような感じだ。
噛み応えがあるぜ!
とりあえずギルドに行って良さそうな依頼があったら受けよう、なかったらこの能力の訓練でもするかな。
そう決めた俺はスープを飲み干し「ごちそうさま」と言いつつギルドに向かうのであった。
ギルドの掲示板に行くとダリアとララがいて話しかけられた。
「こんにちは」
「おう こんにちは」
相変わらずダリアはビキニアーマーが美しい。
「今日の予定はもう決まっているの?」
「いやまだだが」
「じゃあうち達と一緒にこの依頼受けない?」
「どれどれ…ゴブリンの偵察と駆除、近隣の岩場にてゴブリンが目撃されたとの報告がありました。数が少なければそのまま駆除をお願い致します。数が多く巣などがある場合はギルドに引き返して報告してください。か…」
「どう?行かない?」
あまり魔物とは戦いたくなかったが避けてばかりもいられない。
いい機会かもしれない。
「ところでゴブリンて強いの?」
「いや強さ自体はたいしたことないよ。でも繁殖力がすごくて放っておくと、あっという間に数が増えてしまうんだ。だから数が少ないときにうちらが引き受けようかなって思ってさ」
「そうだな、3人で行けば大丈夫かな。行こうか」
「ありがとうございます。私たち2人だけではちょっと心細かったんですよ」
「なにララ、うちの腕だけじゃ不満なの?」
「いやそういうことじゃなくて、ゴブリンの数がわからないから不安なのよ」
「まぁ数が多かったらギルドに引き返そう」
「そうですね」
「うちも賛成」
話しがまとまりギルドに依頼を手続きして早速現場へと向かう。
この前行った森とは逆方向の岩場で目撃したとのことだった。
歩くこと30分くらいで現場に到着した。
大きい岩から小さい岩までゴロゴロしている。
「いた」ダリアがそうつぶやく。
確認できたのは10体くらいか。
「これくらいならうちらで充分。2人とも準備はいい?」
「おっ…おう」
「はいっ!」
「なに、イチは緊張しているの?大丈夫だよ。いざとなればうちが守るから」
「わっ…私もっ」
ふふっとダリアが笑う。
俺は武器屋で買った投げナイフを数本手に取り言った。
「よし!じゃあ行こうか」俺の合図で飛び出しゴブリンに奇襲を仕掛けた。
ダリアは戦士で、剣術に長けている。
身軽な体格と俊敏な動きで、敵の攻撃をかわしながら素早く敵を斬りつけている。
ララは魔法使いで、火炎魔法を得意としている。
「ちはやぶる 神代も聞きし火炎弾 からくれなゐに 敵くくるとは」
詠唱を終えたララの前に火炎弾が現れて、ゴブリン目掛けて突っ込んでいった。
「グギャー」
命中したゴブリンが燃えて苦しんでいる。
「お見事!それにしてもこちらの世界の詠唱は、まるで百人一首を読み上げるときのような発音だ」
「さて次は俺の番だな」
そして俺のサイコキネシスで投げナイフを操り、ゴブリンの首や頭を狙う。
「グギギッ」
こうして俺達は次々とゴブリンを殲滅していった。
「終わったかな?」
その時である。「ゴオオオオオッ」という怒声が聞こえた。
声の方を見ると丸太のような棍棒を装備していて、身の丈3メートルくらいあるガタイのいいゴブリンが来た。
「ゴブリン筋愚!なんでこんなところに!?」
「ゴブリン筋愚?」
「力に特化した愚か者のゴブリンですよ」
「筋愚ねぇ…強いのか?」
「はい、普通のゴブリンとは比べものになりません!」
「特大な火炎弾を撃ちます、でも魔力を貯めるのに時間がかかります」
「うちが時間を稼ぐよ」言うが早いかダリアはゴブリン筋愚の所に駆け寄り剣で切りつける。
それに負けじとゴブリン筋愚も丸太のような棍棒で応戦している。
ララは目をつぶり魔力を貯め始めた。
その時、岩場に隠れていたゴブリンがララの隙を伺って矢を放ってきた。
「あぶない!」ダリアはそれに気づき声を上げた。
魔力を貯めているララに向けて矢が飛んできた。
俺はサイコキネシスを使いその矢をララの目の前で止めて、岩の陰から放ってきた奴の頭にお返しした。
「グギャー」奇声を上げながら倒れた。
その断末魔が再開の合図となったのかダリアとゴブリン筋愚は戦闘を再開した。
ララは何事かと目を開けキョロキョロしている。
「そのまま魔力を貯め続けて」俺はララに促す。
「は…はい」
ダリアはヒラヒラと舞いながら、丸太を避けて時間を稼いでいる。
「準備ができました!」
「じゃあうちが隙を作るからそしたら撃って!」
2人の会話を聞いてて思ったのだが、隙を作るくらいなら俺にもできるのでは?
「俺も手伝う」
ダリアは期待する目でこちらを見ながら言った。
「お願い!」
そこら中に転がっているゴブリンの死体をサイコキネシスで操り、ゴブリン筋愚の背中にぶつける。
「ほれ」
「ゴフ?」
「ほれほれ」
「ゴフフ!」
「ほれほれほれほれほれほれ」
バチバチバチバチバチバチバチーンと勢いよく音を立て次から次へとぶつける。
その様子を見ていたダリアは笑っていたがララは引いていた。
「ゴギャーーーーーーーーー!」
そしてついに奴はぶちぎれた。
1度や2度なら気にしないが、さすがにずっとぶつけ続けてイラっとしたのか、戦いの手を止めて、死体がぶつかって来る背後を振り向いた。
「ララ今だ!」
「天つ火よ 熾烈の炎 天は燃え 仇焼き尽くす 業火よ舞いて」
ララは特大の火炎弾を放つ。
ゴブリン筋愚にヒットしたが、火だるまになり苦しみながらもなんとか耐えている。
魔力を使い果たしたのか、ララはその場にへたり込みながら「お願い倒れてっ!」と祈っている。
「火力が足りないのか…?」
火と聞いて頭に思い浮かんだのはパイロキネシスだが、まだ一度も使っていない能力なので不安だ。
それよりも確実なのはゴブリンの死体だ、ゴブリンが燃えることはララの火魔法で証明済み…ならば。
まだ燃えているゴブリン筋愚にサイコキネシスを使い次々と死体を投げ込んだ。
まるで暖炉に薪を焚べるように。
「ほれ」
ボワッと火があがる。
「ゴギャー!」
「ほれほれ」
ボワッボワッ。
「ゴギャーーーー!」
「ほれほれほれほれほれほれ」
ボワッボワッボワッ。
「ゴギャーゴギャギャ…ゴ…」
ゴブリン筋愚は苦しみ、もがきながら地面に倒れた。
すかさずダリアがゴブリン筋愚の首に剣を突き立てた。
無事に戦闘が終わり急にダリアが笑い出した。
「あはははは、うち、あんな戦い方はじめて見たよ。はははは…息がっ…はははできない…ははは」
「私も…は…はじめて見ました…」対してララは引きつっているもよう。
たぶんサイコパスだと思われていることだろう。
夕暮れの岩場に静けさが戻る中、俺たちは戦いの後始末に取り掛かった。
ごつごつとした岩の間に散らばるゴブリンとゴブリン筋愚の亡骸から、魔石を回収していく。
魔石の回収を終えると、私たちは警戒しながら周辺を偵察した。
岩の隙間や窪みにゴブリンがいないか確認する。
幸い、これ以上の脅威は見当たらなかった。
夕日に照らされた岩肌が赤く染まる中俺たちは帰路につく。
足場の悪い道のりに疲れは残るものの、無事に任務を遂行できた充実感で胸が満たされていく。
ギルドに依頼達成の報告をするときに、ゴブリン筋愚の事を言ったらびっくりしていた。




