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異世界転移超能力者  作者: つある


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11話 護衛任務 前編

旅立ちの朝、馬車の前にて。

「おはようございます。イチさん」


「おはようイチ」



「ああ二人ともおはよう」


「これどうぞ」ララは小さい袋を差し出してきた。


「これは?」


「私たちからです」


「ありがとう」


「馬車の中で開けてね」とイタズラな笑みを浮かべるダリア。


「じゃあそうしよう、ありがとう」


俺もプレゼントしないと。


「ララにはこれを」


「これは?」


「この街に来た時に買ったものだ、変わった形の綺麗な宝石だったから」


コウモリの形をした石をララに渡す。


「わぁコウモリの形をしていますね!私の杖と同じです、気に入りました!ありがとうございます」


「ダリアにはこれを」


四つ葉のクローバーの形をした宝石を渡した。


「何か変わった形の宝石だね。気にったよありがとうね」


二人と握手して別れる。


「では馬車にお乗りください」


「えっと他の護衛の人がまだ来てないみたいですけど?」


「イチさんあなた一人で充分だとギルドマスターが言ってましたよ」とエミルン様に言われる。


「えぇ~嘘でしょ、他の人にも声をかけているものかと…はじめての護衛任務なのに俺一人って」


「安心してくださいイチ様、わたくし多少の荒事は心得ておりますので」


「それじゃあイチさんのことよろしくお願いしますね」と冗談ぽくララが言う。


「おいおいまるで俺が護衛されるみたいじゃないか」


「はははははっ」ダリアとエミルン様が笑っていた。


「そういうことですので、馬車にお乗りください」と促され、別れの挨拶をしてから乗った。


「それじゃあね」


「お元気で」


「そっちもね、それと餞別ありがとう」


馬車の中は気まずかった、何を話せばいいかわからん。

そういえばと思い、ダリアにもらった袋を開けてみた。

中にはゲンキダ草の粉とカードとメモが入っている。


「このカードでゲームでもしながらコミュニケーションをとってね」と書いてある。


「なんだこれは」


「そのカードは」エミルン様が身を乗り出すように言った。


「知っているんですか?」


「はい、おじいさまとよくそのカードで遊びました」娘の目が懐かしそうに輝いた。


「イチさんはこのカードで遊んだことはありますか?」


「ないですね」


「ではルールを教えますので、遊びませんか?」


この気まずい空気を変えられるのであれば遊んだ方がいいよな。


「じゃあお願いします」


聞いてみたらほとんどトランプと一緒だった。

ただ何故か、絵柄は浮世絵が描かれていた……なんでだ?

何回やっても俺が勝った。


「お強いですね、では次は賭けをしませんか?」エミルン様がそう言ってきた。


「賭けですか?いいですよ」今まで勝てているのだから大丈夫だろう。


俺は軽い気持ちでそう言った。


「それで何を賭けるんです?」


「じゃあ負けた方が勝った方の言うことを聞く、というのはどうでしょう」


俺は少し考え込んだ後、「面白そうですね。やりましょう」と答えた。


エミルン様が笑ったように見えたのは気のせいだろうか。


カードを配り、ゲームが始まった。


あれっ? ぐぬぬ。


あっこれ今まで遊ばれてたな、と思った瞬間である。


あっという間にエミルン様が勝利を収めた。


今まで本気を出していなかったらしい。


「勝ちました!」エミルン様が嬉しそうに声を上げる。


「負けてしまった…手を抜いていたんですね…それで、どんなお願いをされますか?」


エミルン様はにっこりと笑って言った。


「これからは敬語をやめて、エミルンと呼んでください」


「えっそれでいいんですか?」


「敬語は禁止ですよ」


予想外の要求に驚いたが、約束は約束だ。


「わかったよ…エミルン…」


「ではイチ様わたくしもエマとお呼びください、それと敬語も不要です」


「えぇ…エマさんは関係ないんじゃあ…」


「いいえ、お嬢様よりも目下の者に敬語は不要です」


エミルンはクスッと笑いながら言った。


「そうね、エマ。あなたもイチさんと私の仲間だもの。イチさんもエマのことも呼び捨てにして」


俺は少し困惑した表情を浮かべながらも、ゆっくりと頷いた。


「わかった…エマ。でも、慣れるまで時間かかりそうだな」


馬車の中の空気が和んだ。これからの旅が少し楽しみになってきた。


襲撃さえなければ。


「イチ様出番です!」突如、エマの鋭い声が馬車内に響き渡った。


その緊迫した口調に、俺は瞬時に状況を察知した。


襲撃の危険が迫っているのだ。


平和な空気が一瞬にして緊張に満ちた雰囲気へと変わる。


俺は反射的に身構え、エミルンの方を見やる。


「では行ってくる」エミルンに一声掛けて、馬車の上にテレポートした。


「エマそのまま走って」エマに指示を送り、周りを確認する。


馬に乗りながらこちらに向けて弓を構えている連中が多数いる。



ギルマスの言葉を思い出していた。



「手心を加えると後悔することになる」か……。



連中の狙いはエマと馬だ、こちらと並走している奴の照準が合ったのか馬を目掛けて矢が飛んできた!


俺はその矢をサイコキネシスを使い空中で止める。


弓を放った奴が何が起こっているのか、理解できない様子で確かめるように近づいてきた。


距離が縮まった所でそいつの頭に矢を刺した。


馬から転げ落ちていく。


人を殺したというよりは、二人を守らなければという気持ちの方が強い。


今はそれしか考えられない。


他の奴らがこれを見て引いてくれれば良い、という期待を込めて辺りを見回すと誰一人退こうとしない。


それどころかこちらの馬目掛けて一斉射撃をしようと構えていた。



「こいつら!」



「構え」



もしかして俺が止められるのは1本だけだと思っているのか?



「撃てー!」



馬車の頭上に弓矢の雨が降り注ごうとしていた。



「させるかっ!お返しだ」



全てを止めて、奴らの頭上に矢の雨を降らせた。

弓を放った連中は矢が刺さり、次々と馬から転倒していった。



次は剣を持った連中がこちらに向かって走ってきた。

奴らは両手で馬の手綱を握っており、剣を抜く暇もない。

俺は、奴らの腰にある剣を鞘から一斉に引き抜くと、そのまま空中で反転させ、次々と首筋へと突き刺していった。



辺りが静かになった。


周りを確認したがもう賊はいないみたいだ。


「賊は倒したけどエマは大丈夫か?どこか怪我とかしてない?」


「わたくしは大丈夫です。イチ様お疲れ様でございました、ごゆっくりお休みください」


「どこかよさそうな場所があったら止めて、今夜はそこで野宿しよう」


「わかりました。お任せください」


テレポートで馬車の中に移る。

エミルンは急に現れた俺に少し驚いた様子だった。


「悪い、驚かせたかな?」


「いえ……それよりも大丈夫ですか?どこかお怪我とかしていませんか?」


「ああ無事に終わったよ」


「よかった」と胸をなでおろしている様子。


「ちょっと休んでもいいかな?」と聞くと、


「もちろんです」と快い返事をくれた。


「何かあればすぐに起こしてくれ」と頼み。


「わかりました。おやすみなさい」


さすがに疲れたのですぐに眠くなった。



気づいたのは辺りが暗くなってからだった。

馬車の中には誰もいないので外へと出る。

泉の近くで馬車を止めたみたいだ。



「あっ起こしちゃいましたか?」


「いや自然と目が覚めたんだ」


「イチ様お夜食の準備ができております」


「ありがとう」


用意してくれた、パンと干し肉を食べる。


「お茶でございます」


水筒みたいな魔道具から紅茶のようなものをカップに移し、差し出してくれた。

さすがエマ。


「ありがとう、俺もこんな気が利くメイドさんを雇いたいよ」


「エマはあげませんよ!」


「わかってるって、ははは」


「お嬢様……ありがとうございます」


「しかし昼間の賊の襲撃は怖かったですね」


「お嬢様とイチ様にお怪我がなくてなによりでした」


「エマもでしょ」


「お嬢様……ありがとうございます」


「弓矢が迫ってきた時はもうだめかと思いました。イチ様の能力はすごいですね、正直ギルドマスターの言うことを信じられなくて疑っていました」



「私たちが急にギルドに押しかけて、護衛を付けてほしいと無理を言ったものですからギルマスも悩んだんでしょうね。信頼できて、その上急な依頼も引き受けてくれて、その上強くなくては駄目という条件をクリアできる人なんてそうそう見つかるわけないですからね」


「それで選ばれたのが俺というわけだ」


「その通りでございます」


「これからもお願いしますねイチさん!頼りにしてます」



これからも襲撃が続くのかと思うと気が重い俺は、力なく笑った。


「さっき仮眠をとったから見張りは俺に任せて二人は休んでくれ」


「じゃあお言葉に甘えて先に休ませてもらいますね。エマ行きましょう」


「はいお嬢様、イチ様何かございましたら、すぐに起こしてくださって結構ですので。では、おやすみなさいませ」



エミルンとエマは馬車の中へと戻って行った。



何も起こりませんように……そう祈りながら周囲を警戒していた。

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