第六話 嘘でも大丈夫か?
俺が自分のタイミングで麻奈ちゃんに告白していたとしても成功することがなかったんだと改めて思い知らされたのだが、どこからやり直すことができれば告白がうまくいったのだろうか?
うまくいかなかったとしても、今みたいに完全に否定されることもなく普通に会話ができるくらいの仲になれる可能性はあるのだろうか?
おそらく、俺一人の力では今みたいに一方的に嫌われている関係を打破することはできないだろう。あいつの力を借りたとしてもうまくいくとは思えない。理由はわからないが、あそこまで嫌われてしまっているのはどうしてなのだろうか?
「前田君とまー君が仲良くしてるのって麻奈ちゃん的にはどう思うの?」
「どう思うって言われても、まー君は誰とでも仲良くできて偉いなとしか思わないけど。それ以外に何か思うなんてことはないんじゃないかな。逆に聞くんだけど、イザベラちゃんはどう思う?」
「私は二人が仲良くしているのを見るのは好きだよ。ほら、まー君ってみんなにも優しいけど前田君に対する優しさって他の人よりも一線を画す感じがするじゃない。恋人とか家族とも違う特別な関係って感じがしてて見てるのは好きだよ」
「嘘か本当かわからない話だけど、あの人がまー君の命を何回も救ってるって話だもんね。命が危ないって状況になったら誰よりも真っ先に逃げ出しそうな感じなのに、まー君がピンチになった時に限って正義のヒーローみたいなことをしてたらしいよ。まー君がいろんな人にそんな話をしているから嘘じゃないと思うんだけど、あたしはどうもそれを信じることができないんだよね。イザベラちゃんはそんな話を聞いたことがある?」
「直接聞いたわけじゃないけど、まー君が別次元からやってきた凶暴な生物に殺されそうになった時も前田君がその身を盾にして守ったとか、まー君が精神世界に取り残されそうになった時にも自分の心が壊れてしまいそうになりながらも必死に助けてくれたみたいだね」
イザベラちゃんが言っていることは間違いではないのだけれど、そのどれもが現実の話ではなく一緒にやっていたゲームの話なのだ。あいつはゲームよりも体を動かすことの方が好きなのでゲームが得意ではないので自然と追いつめられることが多いのだが、ゲームをやり慣れている俺が颯爽と助けることは何度もあった。
ゲームの話を現実で起こったことのように話すあいつもあいつだと思うのだが、その話を本気で信じているような態度を見せるみんなもどうかと思う。どう考えたっておかしな話なのに信じてしまうとは、あいつの人気ぶりが恐ろしく感じてしまう。もしも、あいつが宗教でも始めたらとんでもない信奉者を集めてしまうのではないだろうか。いや、今の状況でもそれに近いものが始まっているといってもいいのかもしれない。
他にも、異星人がやってきたとか魔界から悪魔がやってきたとか世界を滅ぼすドラゴンの封印が説かれたとか巨大な隕石が地球に向かっているとか奇妙奇天烈な話を信じているみんなは大丈夫なのだろうかと心配になってしまう。あいつが言ったことだと本当にあったのだと信じるのに、俺が言っても誰も信じないんだろうな。それは俺とあいつが得ている信用の差なんてものでは説明することができず、生まれ持った特別な力によってあいつが特別な存在なんだという話なだけのような気がする。あいつのそんなところはうらやましいと思うけれど、俺はあいつと変わりたいと思ったことはなかった。
仮に、俺が麻奈ちゃんとイザベラちゃんに対してあいつに関するどうでもいいような嘘をついたとしても何とも思われないだろう。いや、どうでもいいようなうそをついてしまったことで今以上に嫌われてしまうという可能性もあるかもしれない。
可能性が高いという言葉でごまかすことはせずに、完全に嫌われてしまうと言い切ってもいいのかもしれない。
でも、ここ完全に嫌われたとしてもやり直すことなんてできないんだから別にいいのかもしれないな。むしろ、俺が見たこともないような反応を見せてくれるかもしれないのでありかもしれない。
玉砕するのだとしたら、麻奈ちゃんに告白して玉砕するよりもあいつに関係した作り話をして何か膠着状態を解消するようなヒントになるようなものを探したほうがいいんだろうな。問題は、どういった話をすると俺と麻奈ちゃんの距離が縮むかということなのだ。
「あいつが幽霊に憑りつかれそうになった時の話なんだけどさ」
今までずっと黙っていたのに急に声を出したものだから変な感じに声が裏返ってしまった。とても恥ずかしい気持ちになってしまったのだが、俺の予想していたものとは違う反応を二人は見せてくれた。
俺は麻奈ちゃんと出会ったあの日以来初めて目が合った。
「幽霊に憑りつかれそうになったって、何か良くないことでもしたの?」
「でも、まー君は幽霊にもモテそうだから何もしてないって可能性もあるんじゃないかな?」
あいつが出てくる話であれば俺が作ったような話でも信じてもらえる。
ちょっと複雑な心境ではあるが、二人が俺の話を聞いてくれるというのは嬉しかった。




