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性悪女たちとリセマラ男  作者: 釧路太郎


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第六十八話 絶対防御

 四人の美少女たちを止めるものは誰もいなかった。

 まー君のもとへと進んでいるのを黙って見ているだけで、誰もまー君のために壁になろうと思うものはいなかった。壁になったところで何の抵抗も出来ずに終わってしまうという事を誰もが理解しているからだ。


 礼儀としてまー君のいる部屋の扉をノックしてみたのだが、返事は一切なかった。中にいることは確実なのだが、返事をしてもいいことがないという事をわかっているからなのかまー君は完全に無視を決め込んでいた。

 それでもあきらめずにノックを続ける四人の力は少しずつ強くなっていき、建物自体が揺れてしまうのではないかと思うくらいの強度になっていった。

 そこまでの力を込めても扉が開くことはなく、四人のストレスは少しずつ溜まっていったのだ。


「ねえ、この扉って頑丈過ぎない?」

「これだけ叩いてもびくともしないっておかしいよね」

「もしかしたら、特別な魔法でもかかっているのかな?」

「そんな魔法があるってことは習ってたけど、本当に効果があるんだね」

「じゃあ、どこまでこの扉が耐えられるか実験してみようよ」

「それは良い考えだね。みんなで同時に魔法を使ってみるのはどうかな?」

「同時にって大丈夫なのかな?」

「別の魔法を同時に使うと良くないことが起きるって聞いてるんだけど」

「良くないことって言っても爆発するくらいじゃないかな。爆発したとしてもそのエネルギーがこっち側に来ないようにするから大丈夫だよ」

「そっか、それなら安心だね」


 そうは言ってみたものの、本当に爆発をしてしまって大きな力が発生してしまっては少し面倒くさいなと思ったうまなちゃんとイザーちゃんは麻奈ちゃんとイザベラちゃんの魔法に干渉しないように少しだけタイミングをずらして魔法を使っていた。麻奈ちゃんとイザベラちゃんは当然そのことに気づいてはいたのだけれど、それに気付かなかったふりをしてタイミングを合わせることはなく微妙にずれた波長で魔法を使い続けていた。

 しばらくの間四人が魔法を使い続けていたのにもかかわらず扉には一切の変化はなかった。どれだけ頑丈な扉なのか、それともそれだけ強力な魔法が施されているという事なのだろうか。

 どちらにしても、四人の魔力はまだまだ尽きることはなかったのでもう少し魔法を使い続けることにしたのだ。


 延々と繰り返される魔法も一点集中というわけにはいかず、少しずつ扉から外れて入っていた。それが功を奏したのか、扉ではなく壁に魔法が当たった時に信じられないような出来事が起こった。

 あれだけ魔法に耐えていた扉とは違い、壁は何の変哲もない普通の壁だったらしくあっという間に壊れてしまった。氷の塊に熱湯をかけた時のようにあっさりと崩れ落ちている壁を見た四人は何とも言えない表情を浮かべており、誰一人として言葉を発するものはいなかった。


 何はともあれまー君のいる部屋へと入ることが出来た四人は誰が話しかけるのか牽制しあっていた。

 関係性で言えばうまなちゃんかイザーちゃんが話しかけるべきなのだろうが、二人としては微妙な空気になっているので話しかけにくいという事もあり麻奈ちゃんかイザベラちゃんに話しかけてもらいたかった。

 一方の麻奈ちゃんとイザベラちゃんはまー君と言ってもよく知らない人なので話しかけたくはなかった。本物のまー君のことを思い出すたびにこいつは偽物なんだという思いがわいてくるので落ち着いていられなかったのだ。

 そんな中でまー君は椅子に座ったまま眠っていたのである。


「おい、いつまで寝てんだよ。起きろ!!」


 あれだけの魔法を使っていても気にせずに寝ている姿を見て思わず手が出てしまったのはイザベラちゃんであった。偽物のまー君が悠長に寝ていたという事もあったので手が出てしまったのだが、それなりに付き合いの長い麻奈ちゃんもイザベラちゃんのこんな姿を見たのは初めてであった。


「痛いなぁ、いきなりどうしたの?」

「どうしたじゃないわ、なんで寝てんねん!!」

「なんでって言われても、今は食後のお昼寝の時間だから」

「お昼寝なんてしてる場合ちゃうやろ。空気読めや!!」

「いきなりそんなこと言われても意味わかんないんだけど。って、なんでイザベラちゃんが怒ってるの?」

「別にええやろ。詳しいことはうまなちゃんとイザーちゃんが話すから黙って聞いとき」


 普段と全く異なる言葉遣いのイザベラちゃんに気圧されたのかうまなちゃんとイザーちゃんは言われたとおりに説明をしていた。

 どうして自分たちがこんな風に話をしているのだろうという疑問はあったけれど、時々入るイザベラちゃんの相槌が気になってしまって疑問を口に出すことは出来なかった。

 麻奈ちゃんは何が何だかわからない様子であったが、静かに見守るだけであった。


「なるほど。そう言うことになっちゃったか。確かに俺が前田を引き留めてる限り君たちのまー君と合流することは出来ないな。でも、俺にだってまー君としてのプライドはあるんだぜ」

「プライドがあるってのは結構なことだと思うけど、私たち四人を相手にどうにか出来ると思ってるのかな?」

「そんなことは思ってないさ。ただ」

「ただ?」


「カッコつけたかっただけさ」


 四人の説得によってまー君は前田がほかの世界に移動する許可を出した。


 あとになって思ったことだが、別にこの世界のまー君に許可を取る必要はなかったのではないかと五人の中で疑問が生まれていた。

 ただ、それを口に出すものは誰もいなかった。

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