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性悪女たちとリセマラ男  作者: 釧路太郎


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第五十九話 前田とまー君の絆

 伝説のサキュバスと呼ばれたサキュバスがこの世界から消滅したのはつい最近の事らしいのだ。

 別の世界にいるまー君。つまり、あいつがこの世界のサキュバスにも影響を与えてしまうようなとんでもないことをしてしまったという理由らしいのだが、そんな荒唐無稽な話を素直に信じてもいいものか少しだけ悩んでいた。

 でも、何が起きても変じゃないようなこの世界で悩むのは時間の無駄かもしれない。ましてや、あいつが絡んでいるのだったら納得するしかないのだ。


「伝説のサキュバスに会いに来たのに残念だね。私らも伝説のサキュバスにもう一度会いたいと思ってはいるのだけど、別の世界にいる男の影響でそれも難しいんだよ。まー君から聞いてはいるんだけど、薄気味の悪いあんたに頼めば何とかなるんじゃないかってことらしいね。どうにかならないもんかね?」

「俺に頼まれたとしてもどうすればいいのかわからないよ。あいつがこの件に深く関わっているのはわかったけど、俺は魔法使いでもなんでもないんでどうすることも出来ないな。うまなちゃんとイザーちゃんならどうにかできるんじゃないかな?」

「私らが向こうに行って話をしてくることは可能なんだけど、話をしてくるだけじゃ意味がないんだよね。君が一緒にいればどうにでもなると思うんだけど、君をあっちに連れて行ったら何の意味もないんだよ。あっちのまー君がサキュバスに対して酷いことをしないように一生懸命祈ってくれないかな?」

「祈るくらいならできるけど、そんなことして何か意味でもあるの?」

「あるから言ってるんでしょ。まー君はあんたが思っているよりもあんたの思いが届くんだからね」

「あんたがあそこまで強力な力を与えたってことなんだから、その責任を取ってもらう必要があるってことだからね」


 何でもかんでも俺のせいにされるのは心外ではあるけれど、実際に俺が悪いというのは正しんだと思う。色々と話を聞いた結果、俺が過去に戻ったつもりで気軽に世界を変化させまくった結果があいつを完璧な男へと変化させたということなのだ。

 俺がずっと暮らしていた平和な世界では実感することが難しかったのだが、この世界みたいに荒廃して争いが日常的におきていて魔法とかよくわからない力が発達しているところではあいつみたいな男はとんでもない活躍をするものなのだろう。俺みたいに何もできない人間ではなく、あいつのように何でもできる完璧な男がこの世界に来ていたらどうなっていたのか興味はある。

 あいつがこの世界にやってきていたとしたら、争いのない平和な世界になっていたのかもしれないな。

 だからこそ、あいつ自身が争いの火種になるようなことをしないように一生懸命祈ることにしよう。俺の祈りがどれほどの効果があるのかわからないけど、あいつはこれ以上世界に迷惑をかけないように大人しくなってほしいと心の底から願うことにした。




 元の世界に取り残されたまー君は前田がどこかへ行ってしまったことを認識し、その手掛かりを得るために他の世界と繋がりがありそうなモノをひたすら尋問し続けていた。

 かろうじて会話をすることが出来るくらいまで痛めつけるのをスタートとし、それ以降は対象によってどう攻めるかを変えている。本当にギリギリのところを責めているので相手はなぜ自分がまだ生きているのかということに疑問を持っている状態になっており、まー君の質問になかなか上手に答えることは出来ない。

 まー君はそれをちゃんと理解したうえで相手からの返答を待っているのだ。自分の期待している答えを出されることがないというのもわかっているが、他に情報を得る手段が無い以上続けることしかできない。

 やりすぎだと言われても、彼にはソレを続けるという選択肢しか選べないのだ。


「これ以上私たちを傷つけるのは逆効果だと思うよ。あんたが探している前田ってやつは別の世界にいる私らの同胞と接触してるんだからね。今みたいなことを続けていると、あんたの探している前田との接点を完全に失うことになると思うんだけどね」

「そんなことはわかってるよ。俺が何をしたって前田に会いに行くことは出来ないってのはわかってるんだ。だから、お前らみたいなこの世界にいてはいけないような奴を片っ端からやっつけて前田が戻ってきやすいような状況を作ってるだけさ」

「それなら一思いに殺してくれたらいいじゃないか。中途半端に生かされる方の身にもなってほしいもんだよ」


 まー君の手によってバラバラに切り刻まれた女はゼリー状の球体の中を漂い、まー君のことを見つめる眼球と口以外は自分の意志で動かすことが出来ない。声帯もない状態にもかかわらず会話が出来ていることも不思議なのだが、ここまでバラバラにされた状態でも生命活動に問題がないというのも不思議な話なのだ。

 ただ、それでもただの人間に一方的にやられるのを良しとしない女は出来る限りの抵抗を試みていた。

 何も出来はしないのはわかっているけれど、今の自分に出来る精一杯の事はしてやろうと強い意志でまー君と向き合っていたのだ。


「どうやってそんな状態にしたのか俺もわかってないんだけど、きっと好奇心旺盛な前田は今のお前たちの姿を見たら喜んでくれるんじゃないかな。さすがに前田が好きな麻奈ちゃんをお前たちと同じような状態にするのはためらっちゃうよね」

「そうか、そういうことか。なるほどなるほど。それならお前がどうして取り残されたのかわかるぞ。その答えを教えてやろうか?」


 今の状況を打開する唯一の道筋が見えた女はこの機会を逃すまいと必死になってまー君の気を引こうとしていた。

 それがどれほどの効果があるのか、彼女には見えていなかった。

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