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性悪女たちとリセマラ男  作者: 釧路太郎


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第五十四話 都合の良い偶然

 伝説のサキュバスを探せと言われたのだけど、普通のサキュバスですらであったことがない俺にどうやって探せというのだろう。今まで何度も無茶なことをやってきたという自負はあるのだが、こんなに荒唐無稽なことを達成しろというのは不可能じゃないかと思う。

 いや、絶対に無理な話だ。


 だが、あの女が嘘をついているとは思えないし、何か手掛かりになるものがあるはずだ。

 そう信じた俺は一縷の望みを託して昔からやっている本屋さんに行って情報がないか確認することにした。


 俺が生まれる何十年も前からこの町の文化を守ってきた本屋も郊外に出来た大きな書店の影響で客足は鈍くなっているようだ。

 それでも、近所の小中学生を中心に文房具を買いに来るものは多い。

 また、店主が持っている謎ネットワークを活用することでネットショップでは見つからないようなレアな本も探してもらうことが出来る。小さい時になぜか無性に気になった動物の足だけを集めた写真集を見つけてもらって親に買ってもらったこともあった。

 俺はだめもとで店主に伝説のサキュバスに出会うための本がないか聞いてみることにした。


「伝説のサキュバスに会うための本かい?」

「小説とか漫画じゃなくて実際に会うための本なんですけど、そんなの無いですよね?」

「あるよ。ちょうどさっき入荷したところだよ。でも、こんな本を発注した覚えはないだけどね。どうしてこんな本がうちに来たのかわからないけど、これを君が探してたってことを誰かが知っていたのかもしれないね」

「え、本当にあるんだ」


 サキュバスに会うための本が実際にあることも驚きなのだが、その本が今日入荷したということに俺は驚いた。

 多分、この本が入荷した日にピンポイントでそれを買いに来た客がいたことに店の主人も驚いていたことだろう。

 この本が本当の事を書いているのか出鱈目な事を書いているのか確かめるまではわからないが、何の手掛かりもない状態の俺にとっては何かのヒントにはなると思う。

 だからこそ、この本がいくらしようとも手に入れないといけないのだ。


「すいません。その本を売ってほしいんですけど、おいくらですか?」

「ちょっと待ってね、この本の販売価格はいくらかな」


 店主は裏表紙にあるバーコードを読み取ったのだが、もう一度確かめるように裏表紙を確認していた。


「この本なんだがね、税込み三十円ってなってるんだよ。ちょっと確認してくるから待っててもらってもいいかな?」

「あ、はい。ここで待ってても大丈夫ですか?」

「もちろん。そうそう、よかったらこの椅子に座って待っててくれてもいいからね。仕入伝票をちょっと確認してくるからさ。ごめんね」


 店主は本を何度も確認しながら店の奥へと消えていった。

 そのまま立って待っていてもよかったのだけれど、こちらまで椅子を持ってきてくれたのだから座らないと失礼に当たるのではないかと思い座って待つことにした。

 その間に大きな窓から外の様子を眺めていたのだが、外を歩いている人はそれほど多くはなく店主が戻ってくるまでに見かけたのはほんの数人であった。それなのに、この商店街はそれなりの数の店が営業しているのでピークタイムとアイドルタイムの差が激しいのかなと思っていた。


「お待たせしたね。この本は税込み三十円で間違いないみたいだよ。ただ、売るための条件があるみたいでそれだけ確認させてもらってもいいかな?」

「俺がその条件に当てはまるとイイんですけど、どんな条件なんですか?」

「私もこの条件の意味がわからないんだけど、それに当てはまる人以外には売ってはいけないということらしいんだ。この本のことを訪ねてきてくれた君がこの条件に当てはまっていればいいんだけど、もしも当てはまっていなければ売ることは出来ないんだ。その時は諦めてもらえるとありがたいんだが」


 どんな条件で本を売ってもらえるのかわからないが、俺にはこのチャンスを逃すわけにはいかない。

 もしも、俺がその条件に当てはまっていないのだとしたら、クラスの人たちにその条件に当てはまっている人がいないか探してもらうことも考えなくてはいけないな。他人に頼りたくはないけれど、前田に会うために必要なことだから割り切っておくのも必要なことかもしれない。

 なぜかひどく緊張している俺を見守るように店主は持ってきたメモと俺を交互に見ながら確かめるように本の背表紙をもう一度確認していた。


「君は今学生証を持っているのかな?」

「学生証は携帯するようにって言われているので持ってます。もしかして、年齢制限があるからダメとかですか?」

「いや、この本は年齢制限はなく年齢的な縛りはないものだね。ただ、どういうことなのかわからないけど、この本のバーコードの数字の一部と学生番号が一致するものにしか販売してはいけないって書いてあるんだよ。もしも、それを破ってしまうとこの国で流通している本を入荷することが出来なくなってしまうみたいなんだ。そうなってしまうとこの店はやっていけなくなっちゃうからね。悪いんだけど、学生証を見せてもらってもいいかな?」


 そんな条件に当てはまるはずがない。

 こんなに都合よく本を見つけることが出来るとは思っていなかったのだが、そこまで俺にとっていい方向に物事が進むはずがなかったのだ。

 一度喜ばせてから落とす。

 実際に経験すると心にダメージが残るもんだなと感じていた。


「はい、確認させていただきました。じゃあ、ちょっと本と一緒に学生証の写真だけ取らせてもらうからね。ブックカバーはつけるかな?」

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