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性悪女たちとリセマラ男  作者: 釧路太郎


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第四十七話 本当に気持ち悪い

 目を覚ました俺は普通に起き上がろうと思ったのに体を動かすことが出来なかった。窓の向こうに草原が広がっているので陸地にいるのは確かなのだが、俺の体は嵐の中を進んでいる小舟に乗っているかのように大きく揺れているように感じていた。

 前後左右も上下もわかっているし目の前に広がっている景色も俺が寝ているベッドも揺れてはいないのにも関わらず、俺の体は大きな波の上を進んでいるかのように揺れていた。

 今までどんな乗り物に乗ってもよったことがなかったし、もちろんお酒を飲んで酔っ払ったこともないので体験だったが、体の中にあるものをすべて吐き出してスッキリしたいという思いが俺の中で強くなっていた。

 こんなにつらい思いをするのはなぜだかわからないし、いま一度あの時に戻ってやり直そうかと思ったのだが、そう思った瞬間に俺は顔を小さな手で掴まれていた。


「変なこと考えない方が良いって言ったよね?」

「余計なことをしようとするんだったら、痛みだけ感じて何も考えられない体にしてあげるよ?」


 俺の左右の耳それぞれに囁くようにうまなちゃんとイザーちゃんが呟いてくれたのだが、どうせ耳元で呟いてくれるのだったらもっと嬉しい言葉にしてほしいと思った。

 それを伝えても断られることはわかっていたので、俺は必死になって揺れていることに耐えるしかなかった。


 天井を見ても窓の外を見ても壁を見ても体が揺れている感覚は収まらず、いっそのこと逆立ちでもしてみようかと思ってベッドから抜け出そうとしたのだけれど、上手く体に力を入れることが出来ずに俺は無様に床に落ちてしまった。

 打ち所が良かったのかそういうリセット方法があったのか定かではないが、頭を打った痛みが引いてからは体に揺れを感じなくなっていた。いったいどういう理屈なのかわからないが、痛みを感じたことで体が勝手に揺れを止めたのかもしれない。


「お、元気になったみたいだね。お腹空いているなら何か食べる?」

「って言っても、ここにあるのはカップラーメンくらいだけど」

「体が揺れている感覚はなくなったけど、ご飯を食べるのはもう少し様子を見てからにしようかな。こんな経験初めてだったからまたいつ揺れるかわからないし」


「へえ、魔法に耐性がない人が長距離移動すると体が拒否反応を示すっていうのは本当だったんだね。ただの都市伝説かと思ってた」

「魔法に耐性がない人ってレアだもんね。私たちがあった中でも君が二人目だから」

「二人目って、もう一人はどんな人だったの?」

「お前の知り合いの方のまー君だよ。この世界のまー君とは違って魔法は全然使えないみたい」

「お前の影響を強く受けてるからなんだろうけど、宇宙空間でも生きていけそうなくらい生命力が強いのに魔法には一切耐性がないってのも面白い話だよね」

「麻奈ちゃんとイザベラちゃんと一緒にこの世界に来れば面白かったのにね」

「こっちのまー君とあっちのまー君ならどっちが強いのか興味あるから。魔法に耐性がなくても何だかんだあって向こうのまー君の方が勝っちゃいそうなんだよね」

「それはわかるかも。こいつとは別の意味であの子は死なない感じなんだよね。殺しても殺せなかったって言う意味不明な状況になりそうでこっちが混乱しそうだもん」

「そうなんだよね。こいつが世界を移動した後に何回か殺してみようとしたことがあったけど、全部失敗しちゃったからね」


 俺が過去に戻ったと思っていたのは錯覚で、過去に戻ったのではなく別の世界戦にあるよく似た場所の少し前の時間に移動していたというのは聞いていた。それを聞いてもいまだにしっくりとこないのだけれど、実際そうらしいということはこの世界に俺がいるということで納得は出来た。理解は出来ないままではあるが、納得は出来ていた。

 でも、俺が移動した後の世界で俺はいったいどういう扱いになっているのだろうか?

 それが少し気になってきた。


「あの、一つ聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「変な事じゃないならいいけど、答えるかどうかは質問次第よ」

「そうね。サキュバスに関することだったら答えないけど、それでもいいの?」

「大丈夫大丈夫。そういうことじゃないから」


 これから向かう先が伝説のサキュバス島だということをすっかり忘れていた俺は普通に答えることが出来た。頭の片隅にサキュバスのことが少しでも浮かんでいたら変な間があったのかもしれないが、俺が即答したことでうまなちゃんとイザーちゃんは少しだけ警戒を解いてくれたように思える。

 俺の気のせいかもしれないが、そう感じていた。


「うまなちゃんとイザーちゃんは俺が移動した後の世界にいたみたいなんだけど、俺がいなくなった後ってあいつはどんな反応だったのかな?」

「その質問に答えることは簡単だけど、それを聞いても後悔しないって誓えるかな?」

「誓ったところで後悔すると思うけど、それでも聞きたいって思うのかな?」


「……うん、聞きたい」


 先ほどと違って俺は少しだけ考えてしまった。

 俺がいなくなったところで何の影響もないんだろうとは思っていたのだけれど、二人の反応を見る限りあまり良くないことがあったように思える。

 あの二人がそう思う程の事なので心配な気持ちもあるのだけれど、自分から聞いた以上はちゃんと確認した方が良いんだろうな。


 聞いて後悔する方が良いのか。

 聞かなかったことを後悔する方が良いのか。


 俺は、聞いてから考えようと思った。

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