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性悪女たちとリセマラ男  作者: 釧路太郎


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第四十四話 幼女のような魔法使い

 麻奈ちゃんとイザベラちゃんの魔法を見てドン引きした俺はひたすら座学に取り組んで知識だけは二人よりも優れている状態になっていた。

 いくら知識があっても魔法を使えない俺には無用の長物だとわかってはいるのだけれど、完全に負けっぱなしのままだと心の平穏を保てなくなりそうなので努力だけはしていた。その頑張りを見て先生たちも少しだけ俺に優しくしてくれるようにはなったのだけれど、新しいことは何一つ教えてくれなかった。


 そんな日々が十日ほど続いたある日、俺はまー君に呼び出されて会議に参加することとなった。


「今のペースでいくと考えて、半年後にはこの世界を完全に征服することが出来ると思うのだが、その前にやっておかなければいけないことがある。君たちはそれが何かわかるかな?」


 まー君の発言を受けた魔法使いたちはいったい何をするべきなのか考えているようだ。

 他の勢力がどれほどの力を持っているのかわからない俺は適当に想像してみたのだが、麻奈ちゃんとイザベラちゃんの魔法が凄すぎて他の魔法使いがどんな感じなのか全くイメージがわかずに昼食のことをぼんやりと考えてしまった。

 最近は前みたいに一人で食べることもなくなり、誰か一人か二人一緒に食べてくれるようになって嬉しかった。黙食が推奨されていることもあって黙って食べるので一人で食べているのと変わらないのじゃないかと思われそうだが、近くに誰かがいるということは俺もこの世界から隔離されていないという証明になるようで嬉しかった。

 そんな事よりも、世界を征服するために必要な事とはいったい何なのだろうか。俺以外の人たちは真剣に考えているのでその答えが非常に気になった。


「まー君が何をしてほしいのか想像もつかないのですが、それって我々でも可能なことですか?」

「可能だな。むしろ、君たちじゃないと難しいことだと思う」

「麻奈ちゃんとイザベラちゃんでは出来ないということ、ですか?」

「うむ、あの二人では不可能なことだ。もちろん、うまなちゃんとイザーちゃんにもできないことだな」

「その四人でもできないことですか。全く想像もつかないのですが、どんな事でしょう?」

「君たちには俺の気持ちを理解してもらいたいんだが、ちょっと難しすぎたかな。でも、君たちには期待しているよ」


 おそらく、まー君が言っている君たちの中に俺は含まれていないだろう。俺に期待するとは思えないし、期待されたとしても俺はそれにこたえることなんて出来ない。魔法が使えない俺に出来ることなんて何もない。と、俺は考えている。

 俺以外の魔法使いもまー君の真意がわからないのか頭を抱え込むものや何人かで集まって話し合いをしているものがいた。なぜか俺に聞いてくるものもいたのだけれど、当然俺にはまー君の考えていることなんてわからないので答えようがなかった。


 ただ、俺の知っているあいつだったらどうしているのだろうか?

 とんでもなく強い味方がいたとしたら、あいつはそれに頼らずに最低限の戦力で戦いを楽しむような気がする。誰に対しても優しいと思われているあいつだったが、ただ特別な特定の誰かを作るのが嫌でクラスメイトに対して完全に平等に接していたんだよな。

 まー君とあいつに共通点なんてほとんどないと思うんだけど、そういった面があったりするのかなと思ってみたりなかったり。

 言ったところで何とも思われないだろう。逆に、バカにしていると取られて俺が非難される恐れもあるのだ。

 めったなことを口に出すべきではないと思い、俺はそっと口をつぐんでいた。


「不気味な顔をしている異世界からの使者よ。何か思い当たることがありそうな顔をしているが、どんな事でもいいので皆の前でその考えを申してみよ。もしも、その考えが間違っていたとしても貴様を非難することはない。今はどんな意見でも必要であり、間違いを一つずつ消していくことも重要なことなのだ。だから、貴様の意見が間違いだったとしても誰も貴様を責めたりなどせぬので何なりと申してみよ」


 幼女にしか見えない魔法使いが俺を威圧してきた。心なしかほかの魔法使いたちも俺に近付いてきているように感じるのだが、幸いなことに害意を感じることはなかった。口調こそ少し荒いものの、その表情も声色も恐ろしいとは感じなかった。

 ただ、本当に俺の考えをみんなに伝えてもいいのだろうか。何か気に障るようなことを言ってしまってこの場の空気を壊してしまうなんてことにならないだろうか。

 そう考えると、俺はイマイチ言葉にする勇気が出てこなかった。


 それでも、俺を見守る魔法使いたちは優しく温かく俺の言葉を待っていてくれた。


 俺に歩み寄ってくれているのに、俺が歩み寄らなくてどうするんだ。

 そう思うと、俺は自分の考えを述べてもいいような気がしてきた。


「最初に言っておくけど、たぶん俺の考えは正しくないと思う。それでも、俺の意見を聞きたいというみんなの意思を尊重して言わせてもらう」


 魔法使いたちの視線が一気に俺に集中する。

 もちろん、その中にはまー君の視線もあった。


「俺がいた世界にもまー君はいた。と言っても、今この世界にいるまー君とは全然別人ではあるんだけど。で、そいつはとても優しいやつで誰に対しても平等に接することで誰か一人の特別な相手を作ることはなかった。この世界のまー君と俺がいた世界のまー君に共通点なんてほとんどないのかもしれないけれど、俺が関わっているまー君は他にいないので見えない部分で共通点があるのかもしれないと思った。何が言いたいのかというと、この世界のまー君もみんなに対して平等にチャンスを与えようと思っているのではないかと考えたんだ。うまなちゃんやイザーちゃん、麻奈ちゃんやイザベラちゃん。そんな強力な戦力に頼るだけではなく、みんなにも活躍の場を与えたいって考えているんじゃないかな」


 俺の話を聞いた魔法使いたちはいっせいにまー君の方を向いた。


 まー君は不敵な笑みを浮かべて俺のことを見つめていた。

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