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性悪女たちとリセマラ男  作者: 釧路太郎


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第四十二話 魔法の才能

 孤独な昼食の後に待っていたのも孤独な時間だった。

 俺は教室に一人残って午前中に聞いていた話をもう一度聞くことになったのだが、先生たちが話をしてくれるのではなく録画されていた映像を見ているだけだった。

 支給されたタブレット端末に映し出される映像を見ながらこんな話をしていたなと思い出しながら見ていたのだが、俺が今まで何度も同じことを繰り返してきた罰だと思えば何の苦でもなかった。そもそも、俺は同じことを何度繰り返しても苦痛に感じないタイプだから罰にはならないのかもしれない。

 ただ、時々聞こえる爆発音やいきなり発生する閃光は俺の集中力を著しく削いでいた。きっと麻奈ちゃんとイザベラちゃんがとんでもない魔法を使っているのだと思うのだ。俺が頭の中で思い描いていた魔法を使っているんだろうなと考えると、その光景をこの目で確認したい。そんな欲求が俺の中でふつふつと湧き上がっているのだ。

 その時、俺はあることに気が付いた。

 俺が手に持っているのはタブレット端末。

 こいつはどこにでも簡単に持ち運びできるのじゃないか。

 ということは、これを持って二人の近くに行って見学をすることも可能なんじゃないか。

 そう思い立った俺は教室を出てもタブレットにエラーが出ないかの確認をしながらゆっくりと激しい音がしている方へと向かっていった。


 激しい音と光に誘われるように俺は足を進めたのだが、衝撃を体で感じるようになると途端に足が重く感じ前に進めなくなった。角を超えれば二人はいるはずなのだが、どうしてもその角を曲がることが出来ない。今まで感じたことのないくらい恐ろしいものがいるような想像をしてしまい、俺の足も手も顔もこの場から前に進もうとはしていなかった。

 頭の中では前に進んで確かめようと思っているのにもかかわらず、俺の体はそれをかたくなに否定していた。這ってでも前に進むつもりでいたのだが、腰も膝も曲げることが出来なかった。俺の体に衝撃が走るたびに少しずつ体が後退しようとしているのを必死にこらえていたのだが、どんなに頑張っても俺の体は俺の気持ちにこたえてはくれなかった。

 タブレット端末からは相変わらず聞いたことのある授業が繰り返し流れているのだが、俺の耳はそれを聞き流していた。同じことを二度聞けば大体理解できるようになっているのとは関係なく、俺の耳は別の音に集中していた。

 何かが燃える音と重なるように絶叫に近い悲鳴が聞こえていた。その悲鳴の主は一人二人ではなく何十人も何百人もいるように多種多様なのだ。悲鳴にもこんなに種類があるのだと見当違いなことを考えていたのだが、悲鳴のほとんどは途中で途切れているように感じていた。なぜだかわからないが、悲鳴を上げているものが恐怖や苦痛を感じきる前に絶命しているのではないかと思えてしまったのだ。


 自分よりも怯えている人がいると思うと不思議と体は動くもので、さっきまで動かなかった足も体も嘘のように軽快に進んでいた。ただ、角の向こうで何が起きているのかわからない以上はいきなり飛び出すわけにもいかずに慎重にならざるを得ない。自分の身に災いが降りかかってこないとは言い切れないから仕方ないのだ。

 慎重にゆっくりと顔を出して何が起きているのか見てみると、俺が想像していたものとかなり違った光景が目に飛び込んできた。

 麻奈ちゃんとイザベラちゃんが魔法を使っているのは間違いないのだが、俺が想像していたのは二人が杖か魔導書を使って魔法を行使している姿だったのに実際は両手の指一本一本から火の玉を放っているのだ。

 魔法を放つ指によって火の色が違うのだが、着弾した相手は一瞬で全身が燃えているので火の魔法に間違いはなさそうだ。

 地面に書かれている魔法陣から何かが現れているのだが、何が出てきているのか俺が確認する前に麻奈ちゃんとイザベラちゃんが燃やしてしまっているので何なのか確認することが出来ない。灰すらも残らないほどの高温に一瞬で焼かれているみたいで影も残っていない。先ほどまで聞こえていた悲鳴も聞こえなくなっているのだが、二人が魔法に慣れてきて出力が一気に上がって叫ぶような隙さえ与えていないということなのかもしれない。


 俺が思い描いていた魔法使いの想像を完全にぶち破る力を見せられた俺は先生たちがあんなに興奮していた理由を思い知らされた。こんなにすごい魔法を軽々と使っている麻奈ちゃんとイザベラちゃんの力を見抜いた先生たちを改めて尊敬する。

 そんな風に俺は思っていたのだけれど、先生たちもさっきまでの俺と同じようにあっけにとらわれているように見える。五人中三人がアホみたいに口を開けて麻奈ちゃんとイザベラちゃんを見ているし、残る二人は自分の胸の前に祈るように手を組んで涙を流していた。

 もしかしたら、麻奈ちゃんとイザベラちゃんは先生たちが想像していた以上の才能を有していたのかもしれない。

 そして、その才能を一瞬で開花させてしまった。ということかもしれない。


 この場にいても俺には何の参考にもならないと思い、俺はここに来た時よりも軽い足取りで教室に戻っていく。

 自分の席に座ってもう一度授業を最初から見返すことにした。


 あいつがこの世界に来たらどんなに凄いことになるんだろう。

 そんな想像をしてみたけれど、きっとあいつなら俺の想像を軽く超えていくんだろうなという考えしか浮かばなかった。

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