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性悪女たちとリセマラ男  作者: 釧路太郎


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第三十九話 嫌われても守ってもらえるらしい

「何もできなかったとしても落ち込まなくてもいいからね。だって、それが君の実力なんだから」


 そう言い残して二人は去っていったのだが、ゴミ箱を見た後の二人から向けられた視線は慈愛に満ちたものから憐れみを感じさせるものへと変化していた。


 だって、仕方ないじゃあないか。


 何事もなかったかのように振舞う俺と接し方が変わらないうまなちゃんとイザーちゃん。麻奈ちゃんとイザベラちゃんは何の疑問も持たずに朝食をとっているのだが、相変わらず席は俺と離れた場所をとっていた。近くにいても話すことなどないのだからいいのだけど、せっかく一緒の世界にやってきたのだから同じテーブルで食事をとりたいと思ってしまうのは俺が寂しがり屋だということなのだろうか?


「今から君たちにはこの世界で生きていくために必要な技術を身につけてもらいます。と言っても、特別なことは何もなく今まで君たちが暮らしていた世界にちょっとだけオプションを付けた感じになるのかな。麻奈ちゃんとイザベラちゃんは午前中に座学をちょろっとやったら実践にうつれると思う。前田君は、この世界の歴史とか経済を学んで見識を広めてくれたらいいと思うよ。君は勉強だけは得意なんだもんね」

「もちろん、満点を目指さなくてもいいからね」


 いつもどんな時も満点を取っていた俺に対して満点を取らなくてもいいというのはうまなちゃんとイザーちゃんの優しさだろう。満点を取れと言われたら能力を使って何度でもやり直すだけの話なのだが、満点を取らなくてもいいと言われると能力を使わずに自分の今の本当の実力を試せということなんだろう。

 でも、いつも満点しかとっていない俺を見ていた麻奈ちゃんとイザベラちゃんはどう思うんだろうか?

 勘のいい二人の事だから、うまなちゃんとイザーちゃんのちょっとした言葉でも何かに気付くのかもしれない。


「前田君に満点を取らなくてもいいっていうのは小学校でも中学校でも聞いたセリフだよね。あの時の先生たちと違ってうまなちゃんとイザーちゃんは優しい感じがするよね」

「うん、あの時の先生たちってこの人が常に満点を取っていることを怖がっているように見えたからね。正直に言うと、あたしたちも毎回満点しかとらないのを気持ち悪いって思ってたもん」

「ちょっと変だなとは思ったよね。噂では、カンニングが出来ないように監視された部屋で一人だけ特別な問題を出されたのにもかかわらず、満点を取ったって話だもんね」

「でも、卑怯な能力を使ってたってことだから気持ち悪いよね」

「確かに、ちょっと良くないかなって思ったかも」


 ん?

 この感じだと、麻奈ちゃんとイザベラちゃんも俺の能力のことを知っているということではないだろうか。この世界に来てから能力を使わないと決めた今となっては知られても問題はないのだが、俺に対する二人の距離が今までよりも少し遠くなっているような気がする。

 別に抗議をするつもりはないのだけど、俺はじっとうまなちゃんとイザーちゃんの事を見ていた。

 二人は俺と目を合わせようとはしなかったのだが、俺と目を合わせてくれる女子なんていないと思っているので特に何も思わなかった。

 それでも、今のタイミングで言わなくてもいいのではないかと心の中では思っていた。


「そんなに怖い顔をしないでくれたまえ。この二人には君のことをちゃんと伝えておく必要があったんだよ」

「そういうことなんだよ。守るべき対象がどんな人物なのか知ることは重要なことだからね。でも、君がこの世界ではその能力を使わないって約束をしたことも伝えているから大丈夫だよ」

「君が能力を使って別の世界に行ったとしても私たちに影響がないことも伝えてはいるんだけど、麻奈ちゃんとイザベラちゃんに限っては今回のように一緒の世界に移動するとは限らないってことも教えているからね」

「君が過去に能力を使って移動した世界には麻奈ちゃんもイザベラちゃんも変わらずにいたと思うんだけど、それって君と一緒に麻奈ちゃんとイザベラちゃんが移動していないってことだよね?」


 うまなちゃんとイザーちゃんが何を言いたいのか俺なりに考えてみた。

 俺が今まで過去に戻っていたと思っていたのは俺が直前にやったことを誰も覚えていなかったからだ。

 いつもなら俺が告白したことを無かったことにして次のチャンスを待つことが出来るはずだったのに、この世界にやってきた麻奈ちゃんは俺が告白したことを忘れていない。思い出したくもないといった感じで俺に冷たくしているようにも思えるのだが、間違いなく俺が告白したことを覚えている。

 ということは、俺が能力を使って別の世界に移動したときに一緒に移動してきたということなんだろう。

 気のせいかもしれないけれど、イザベラちゃんも以前より少しだけ俺と距離をとっているように思えるんだよな。


「別にこいつがどんな能力を使っていたとか今更どうでもいいんだけど。こいつに能力を使わせないようにこいつを守るって役目を甘んじて受けるけど、いっそのことこいつを殺しちゃった方が良いんじゃないの?」

「ダメだよ。殺すなんて物騒なこと言っちゃダメ。前田君が死にそうになったらソレを避けるために能力が勝手に発動する可能性もあるって言ってたでしょ。麻奈ちゃんらしくないよ」

「そうだよね。勝手に能力を使っちゃうって可能性が高いみたいだもんね」

「だから、能力を使えないギリギリの状態まで追い込んで余計なことをしないようにしちゃえばいいだけだよ。そのためにも、いろいろな魔法を学ばないとね」


 笑顔を向けられることは嬉しい事のはずなのだが、俺は怖いと思ってしまった。

 今まで見た誰の笑顔よりも、恐怖を感じてしまっていた。

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