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性悪女たちとリセマラ男  作者: 釧路太郎


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第三十八話 カンニングなんてしていない

 この部屋には窓もなく換気扇もない。出入口だって一つしかない。

 そんな部屋から一瞬でゆきのちゃんと愛華ちゃんは消えてしまったのだが、うまなちゃんとイザーちゃんはそんなことを知らないはずだ。それなのに、あの二人がいたことをなんとなくではあるがこの二人は気付いているようだ。


「ねえ、この部屋に私たち以外の誰かいたよね?」

「どうやってこの部屋に誘ったのかわからないけど、何をしてたのかな?」


 何をしていたのかと聞かれてもお話をしていたとしか言いようがない。

 でも、俺が本当のことを言っても信じてもらえないような気がする。何かを疑っているような二人の視線は過去に俺の身に起きた悲しい事件を思い出させる。



 授業をろくに聞いていない俺がテストで毎回満点を取ることをクラスの人たちが俺のことを疑いだした。方法はわからないが俺はカンニングをして満点を取っているとクラスの誰かが言った。

 誰か一人くらいは俺の味方をしてくれてもいいと思うのだが、その当時の俺には誰一人として見方はいなかった。

 教師ですら、俺が毎回満点を取ることを不審に思っていたのだ。

 その後に行われたテストは全て俺の近くで副担任が監視をするようになったのだが、カンニングなんてしていないので証拠も何も見つからないので事態は収束するかと思った。だが、事態は俺にとって悪い方向へと進んでしまった。

 カンニングの証拠は何も見つからないのに俺は満点を取る。授業中に寝ていることの多い俺が満点を取れないように授業の内容とは関係ない雑談から出た問題があっても満点を取り続けた。高校生でも習わないような数学の問題を出されたこともあったのだが、それも難なく解いてしまったりもしたせいなのか、教師たちはますます俺が何かしているのではないかと疑うようになっていった。何か隠しているのではないかということで上半身裸でテストを受けさせられたりもした。

 だが、それでも俺は満点を取り続けた。

 カンニングなんてしていないので教師たちの努力は全くの無意味なのだが、俺は意地になって何度もテストをやり直して満点を取り続けた。

 もしも、俺が満点を取り続けずに人間らしいケアレスミスでもしていればそんな事態にはならなかったのかもしれない。

 常に満点ではなく、満点に近い点数を取り続けていれば気味悪がられる事もなく神童と呼ばれていたのかもしれない。

 それでも、俺はむきになって何度も何度も同じテストをやり直して満点をとれるように努力していた。努力と言っても、答えを丸々暗記していただけなのだが。

 今になって考えると、その時から俺は誰からも好かれなくなったのではないかと思う。いや、全員から嫌われたと言った方が正しいかもしれない。

 そんな時、あいつが急に勉強に力を入れだしたのだ。

 運動が得意なだけのあいつが勉強も頑張りだし、ほとんど満点に近いような点数を取るようになっていった。時々満点を取ることもあったのだが、常にどこかで小さなミスをしていたので学年一位にはなれなかった。そこが、あいつと俺のとても些細で大きな違いなのかもしれない。

 あいつが俺の次に優秀な成績を収めるようになると周りの生徒も教師たちも俺に対するあたりがほんの少しだけ緩くなったような気がする。勉強だけは出来る俺と勉強以外も出来るあいつという特異点が発生したことで俺にだけ向いていた興味がうまくそれたのかもしれない。


 うまなちゃんとイザーちゃんの目があの時の教師と重なって見えたのだ。カンニング疑惑で教師に張り付かれていた時と違って今回は能力なんて使っていないし、あの二人のことも名前と見た目以外は何も知らない。何か聞かれたところでゆきのちゃんと愛華ちゃんがいたということしか言えないのだ。あの二人が何者なのかわかってないし、また来ると言っていたことしかわからない。それがいつなのかも知らない。俺には名前以外答えることは出来ないのだ。


「この部屋で出入りすることが出来るのってあの扉だけだし、外は常に監視されているっていうのにおかしいな」

「あなたも能力を使おうとした形跡もないし、なんか変なんだよね」

「監視されてるって、どういうこと?」


「どういうことって、逃げ出さないように見張ってるだけだよ」

「もちろん、あなただけじゃなく麻奈ちゃんとイザベラちゃんも監視対象だけどね」

「でも、部屋の中までは監視してないから安心してね」

「思春期の男の子だもん、アレの我慢なんて出来ないよね」


 そう言われて初めて俺はオスの臭いという言葉の意味を理解してしまった。

 一瞬で顔だけではなく耳まで真っ赤になってしまったのがわかるくらい全身が熱くなっていた。漫画だったら湯気が出ているのではないかと思うくらいに熱くなり、血液が沸騰しているのではないかと思う錯覚に陥っていた。


 あの二人が下着姿だったということを思い出していた俺を責めることは出来ない。

 過去に戻ってやり直したとしても、この未来は変えられそうにない。

 我慢できる時とできない時があると思うのだが、あの二人のあの姿を前にして我慢しろというのは無理な話である。


 そんなことを考えている俺を見たうまなちゃんとイザーちゃんの目は鋭い感じからいつの間にかあいつと同じような慈愛に満ちたものに変化していた。

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