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性悪女たちとリセマラ男  作者: 釧路太郎


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第三十七話 メスとオスのニオイ

 自分が魔法を使えるということを想像したことはある。人に言えないようなことも妄想していたし、自分がヒーローになるような想像もたくさんしてきた。

 でも、現実にそんなことが起こるはずもなく平凡な日常を過ごしていた。と言っても、俺は時間を巻き戻すことが出来ていたのでそれも魔法の一種ではないかと考えれば、俺は魔法の才能がある人間なのかもしれないな。


「私の見立てだと、麻奈ちゃんは魔法よりも道具を使った攻撃とか間接的な攻撃の方が得意なんじゃないかなって思うな」

「イザベラちゃんは魔法が得意そうな感じに思えるんだけど、私たちとは違うタイプの魔法なんじゃないかなって思うよ。私ともうまなちゃんとも違う感じのオーラを感じてるからね」

「前田君は……まあ、何とか死なないように立ち回ってくれたらいいんじゃないかな。私たちの指示に従ってくれれば危険な目に遭うこともないと思うし、それだけ守ってくれたらいいよ」


 うまなちゃんとイザーちゃんの話から考えると、俺は戦わない方が良いように聞こえる。それって、俺には戦う才能がないっていうことなのだろうか?

 いや、そうではないはずだ。

 まー君は俺に戦うなと言っていたわけだし、俺が能力を使ってしまうような危険な状況に陥らないようにする配慮なんだと思う。世界を移動する能力を使える俺に魔法の才能がないなんてことはありえないだろう。

 別の世界に行くほどの能力を持っているんだから、俺はきっと魔法使いとしての性能が物凄いあるはずだ。


 勉強でアドバンテージをとることが出来なそうなこの世界において、俺が誰かに勝てそうなポイントなんてそれくらいしかなさそうだ。そう信じていたのだけれど、どうやらそんな感じには思えなかった。


「そんなに悲しそうな眼をしないでくれよ。あなたが悪いわけじゃないからね。他の世界から連れてこられた人には何らかの恩恵が与えられることなんてよくある話だし、麻奈ちゃんもイザベラちゃんも元の世界でそれなりに優れていた人材なんだよね?」

「運動も勉強も平均よりは出来ていたと思うよ。麻奈ちゃんは見た目も可愛いし俺に辺りは強かったけどソレを差し引いても性格もいいと思うし、イザベラちゃんは見た目はもちろん中身もいい人だと思うよ。俺にも優しく接してくれてたし」

「私たちもあなたに優しく接しておいた方が良いかもね。あなたに嫌われるようなことはしない方が良いと思うし。それはどうでもいいとして、そんな優秀な二人が自分の意思とは関係なくこの世界に連れてこられたってことは大変な事なんだよ。あなたがどんなに願ったって普通は誰かを一緒に連れてくることなんて出来ないんだからね」


 俺が麻奈ちゃんとイザベラちゃんをこの世界に一緒に連れてきたという自覚はないのだけれど、二人の話を聞いているとやはり俺が連れてきてしまったということなのだろう。

 その代償として二人には特別な力が授けられているみたいなのだが、それでは俺にはどんな力が授けられているというのだろうか?


「麻奈ちゃんとイザベラちゃんに何らかのチートが付与されてるとして、俺はいったいどんなチートを手に入れてるんだろう。ここの世界に来た時にもそんなのは聞いてないし、これから特別な儀式とか始まるのかな?」

「そんなものはないよ」

「そもそも、あなたは自分の意志でこの世界に来たわけでしょ」

「勝手にやってきた人にまで何かを与えるなんてことはしないよ」

「それが許されるんだったら私たちも貰えることになるし」

「そうなったとしたら、私かイザーちゃんのどっちかがあなたの能力を盗むと思うよ」

「でも、俺だって好きでこの世界に来たわけじゃないし」


 俺は自分の特別な能力は過去に戻ってやり直せるものだと思っていた。

 実際には別の世界でやり直しているだけだということなのだが、今まではちょっと変わってるなくらいの小さな変化だったので全く気付かなかった。

 この世界みたいに建物が壊され得体のしれない生物が存在し、当たり前のように魔王が世界を支配しようとしていると自分の能力が過去に戻るだけじゃないと気付いたかもしれない。

 言い訳みたいに聞こえるかもしれないが、そこまで大きな変化がなぜ急に起こったのかわからないし、うまなちゃんとイザーちゃんがその事を知っている理由もわからない。


「確かにあなたは自分から選んでこの世界に来たわけではないけれど、それでもこの世界に呼ばれたわけじゃないからね。行ってみれば、あなたはこの世界に不法侵入しているといってもおかしくない状況なんだよ」

「でも、この世界の多くの人があなたが来ることを拒んだりはしていないの。今まであなたが訪れたどの世界もあなたを拒んだりなんてしなかったでしょ?」

「あなたの持っているその特別な力を必要とする人がたくさんいるから、あなたのことは歓迎しているのよ」

「だからと言って、その世界の住人全てに受け入れられているというわけではないからね。その点は誤解しないでね」


 褒められているようでそうではないような不思議な話だった。

 確かに俺はこの世界に来ることを自分で選んではいない。

 でも、他の世界に移動したのは俺の能力を使ったのも事実である。

 そうなると、俺には何の特別な力も与えられないということになってしまうのか。


 少しだけ、せつないな。



「ねえ、そんな事よりも、最初からずっと思ってたんだけど」

「私も思ってた。なんかこの部屋って」


「「強烈なオスの臭いとメスの匂いがしてない?」」

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