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性悪女たちとリセマラ男  作者: 釧路太郎


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第二十八話 密室会議

 まー君は自他共に認める世界最強の生物なのだが、より高みを目指すという意味でも前田の持っている特別な能力“別の世界へ移動してやり直す”を手に入れようとしているのだ。

 その理由としては、この世界で最強となったとしても他の世界でも最強のままでいられるとは限らないし、思いもよらない力によってやられてしまうという可能性もあるからだ。それらを防ぐためにも前田の能力を手に入れることは絶対に譲れないのである。


「まー君ほどの力を持っていても相性が悪かったら何も出来ずにやられちゃう可能性もあるんだね。それはちょっと怖い話だけど、このお肉美味しいよ」

「私たちも油断してたらやられちゃうことあるかもしれないんだよね。油断なんてしないからやられることなんて無いんだけど、まー君は結構油断しちゃうところあるからわかんないよね。ほら、お肉ばっかりじゃなくてちゃんと野菜も食べなきゃだめだよ」

「俺に勝てる奴なんて実際にいるのかはわからないけど、あいつが生み出した勇者には勝てないかもしれないな。何回もしつこく挑んできそうだし、そのうち一回くらいは負けちゃうような気がするんだよ。ってか、俺の肉ばっかり食わないでよ。それは俺が育てたやつなんだけど」

「まー君は焼きすぎなんだよ。そんなに焼いたら固くなっちゃうでしょ。もっと柔らかいうちに食べた方がいいって。でも、前田君があそこまで世界から嫌われるってのも相当なことだよね。普通の神経だったらあそこまで嫌われる前に能力使うの止めちゃうよ」

「さすがにイザーちゃんでも嫌われるのは耐えられないよね。あたしも自分から進んで嫌われたいなんて思わないし。もしかしたら、前田君って変態なのかもしれないね。ねえまー君、うどんは網で焼いちゃダメだよ。その鉄板を使って焼けばいいんじゃないかな」

「料理は良くわからんからこういう自分で調理する系は苦手かも。やっぱりプロに任せるのが一番だな」


 焼肉のプロっているのかなと思ったうまなとイザーであった。

 一方その頃、別室で焼き肉を堪能している前田はフードファイターかと思ってしまうような量を食べていたのだが、それについては誰も気にしていなかった。


「これからも二人にはうまい料理を期待しているよ。ここの料理も悪くはないのだが、うまなちゃんとイザーちゃんが作る料理の方が何倍も美味しいからな」

「そう褒めてくれるのは嬉しいんだけど、私たちはしばらく料理出来ないわよ」

「そうだよね。あたしたちは前田君の助けにならなくちゃいけないし。前田君の身に何かがあってあの能力を使われたら大変でしょ?」

「それはそうなんだけど、たまにはこっちに帰ってきてもいいんじゃないかな。ほら、あっちの世界から連れてきた二人をどうにか鍛えて時々でいいんでうまなちゃんカイザーちゃんと入れ替えるとか出来そうでしょ?」

「悪くない提案だけど、あの二人がそこまで強くなれるのかな?」

「可能性はあると思うよ。基本的にはあたしたちと変わらないんだし、ちゃんと訓練を積めば強くなるんじゃないかな。それに、前田君に対してあそこまできつく当たっていたのにこっちに来てからは少し丸くなったんだよ。それって、この世界に来て変わったってことなんだから向こうの世界ではなかった力に目覚める可能性だってあるはずだからね」

「じゃあ、あの二人は俺が直々に鍛えて強くしてあげよう。俺が自信をもって送り出せるくらいに強くなってくれればうまなちゃんもイザーちゃんも安心して任せられるでしょ?」


 まー君の提案は決して悪いものではなかった。

 正直に言えば、前田を毎日守り続けないといけないというのはストレスが溜まってしまいそうだと感じていた。年中無休で働き続けるというのは不可能な話であるし、それが可能だったとしても自ら進んでやりたいとは思わない。少なくとも、うまなもイザーも週に二回くらいは休みが欲しいと考えていた。

 だが、麻奈とイザベラがどこまで強くなるのかは未知数な話であるし、あの二人がまー君のしごきに耐えられるのかも疑問であった。

 世界最強の魔王だからと言って、戦闘技術を教えることにも長けているとは限らない。むしろ、最強であるがゆえに弱者の苦悩をわからずに教えることが苦手だという可能性の方が高いように思えた。

 何かいい方法はないかと軽く話し合ってみたところ、戦闘技術の基礎訓練から行っていってみることになった。習熟具合によって次の段階に進み、最後にはまー君が試験を行ってからうまなかイザーと交代で入れ替わるということに決まった。

 もちろん、麻奈とイザベラはそのことを知らないのだが、決まってしまったことなので二人が拒否したとしてもこればかりは覆ることはない。


 そんな重要なことが決まったことなどは知らず、麻奈とイザベラは食後のデザートを堪能していた。

 スッキリしたシャーベットではなく、濃厚なチョコソースがかかっているパフェを美味しそうに食べている。

 それを見ていた前田はまだお肉が食べたいなと考えつつも、一緒にデザートを頼んだ方が仲良くなれるのではないかと見当違いなことを考えていたのだった。

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