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性悪女たちとリセマラ男  作者: 釧路太郎


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第二十二話 俺の能力の話

 俺も知らなかった俺の能力の話をまー君から聞いたのだが、それが嘘だとは思えなかった。

 普通では信じられないような話でも、不思議と信じてみたくなる何かがあった。言葉ではうまく伝えることは出来ないのだが、この人の言うことであればすべて信じてみてもいいのではないかという気持ちにさせる。そんな魅力を感じていた。


「一番大切なのは、お前がどうしたいかっていう気持ちだよ。周りの人はお前の能力のことをよく思っていないのは当然として、それに対してどう応えていくかってのが重要だろ。今までのお前はそれが出来ていなかったんだよ。だから、誰からも好かれずにひどい目にあってきたんだって事だからな」

「誰からも好かれないってのはちょっと言いすぎじゃないですかね。俺にだって味方はいたんですから」

「それって、お前の幼馴染のまー君だろ?」

「そうですよ。あいつはどんな時でも俺の味方になってくれましたから。信じられないかもしれないですけど、あいつは俺の能力でも悪影響を受けなかったんですよ」

「それはそうだろ。あいつはお前がズルをすればするほど優秀になっていくように作られた存在だからな。周りがお前を嫌えば嫌うほどあいつは好かれていくんだよ。お前が過去を学び経験を積んで勉強だけは出来ていたとしても、あいつは与えられた才能だけで全てをこなしていたんだよ。お前は人より多くの経験を積んでいたけれど、あいつはそれを凌駕するほどの才能を与えられたということさ」


 薄々感じていたことではあるが、俺が過去に戻れば戻るほどあいつは凄い人間になっていたと思う。最初はどこにでもいるような元気な男のだったと思うのだが、いつからかあいつはなんでも出来るスーパーマンになっていた。テストは俺の方が当然出来ていたのだが、それ以外においては俺が勝っている要素は何一つなかったと思う。

 いつの頃か俺はあいつに嫉妬してどうにかしてやろうと考えた時期もあったのだが、どうしてもそれを実行する気にはなれなかった。あいつがどんな時でも俺を一番に立ててくれているということもあったが、世界で唯一の俺の理解者があいつであるということを考えると俺の体は最後の一歩を踏み出すことが出来なくなっていた。

 どうせ過去に戻ってやり直せばいいだけなんだからとあいつを殺してみようかと考えたこともあったのだが、あいつの顔を見ているとそんな気はすぐに失せていた。たった一度でも過ちを犯してはいけないと思わせる何か不思議な力があいつには備わっていた。

 そう考えると、俺の知っているあいつと俺の目の前にいるまー君は似ているのかもしれない。


「お前のまー君のことを見せてもらったけどさ、あそこまで完璧な男になれるなんて凄いよな。普通はあそこまで凄くなる前に諦めちゃうと思うんだけどな」

「そうなんですよ。俺もどうしてあそこまで完璧な男がいるのだろうってずっと考えてましたもん。俺もあいつみたいに凄い人間になりたかったなって思うことはあったんですけど、どうしても上手くいかなかったんですよね。全てを記憶して過去に戻ることなんて出来なかったし、そんなことをする必要もないのかなって思い始めてましたから。でも、あいつみたいに完璧になるにはかなりの才能が与えられてたってことですもんね。何ともうらやましい限りですよ」

「違う違う。そういうことじゃなくて、あいつがそこまでの完璧な人間になるために与えられた才能って、それだけお前がズルいことをしていた証拠でもあるんだよ。お前がその能力を使った分だけあいつの才能も豊かになるってことだからな。そう考えると、お前のことが恐ろしくも感じてしまうよな」

「別に俺はズルいことなんてしてないと思うんですけど。一応、テストの問題を覚えるという努力はしてましたからね。受験の時もそうでしたけど、合格するまで何度でもやり直しましたから」


「それがズルいっていうんだよ。普通の人は何度もチャンスなんて無いんだからな。それなのに、お前は自分が合格するまで何度でもやり直すことが出来るんだよ。それがズルいと言わずに何と言うんだろうね」


 確かに。そう言われればズルいことをしているという風に感じてしまうな。

 俺だって自分の頭が良ければ何度もテストを受けなくて済むと思ってはいたんだ。思ってはいたけれど、どうせ何度でもやり直すことが出来るという思いから日頃の努力を起こったっていたと思う。

 それでも、人とは違う努力はずっと続けてきたという思いもあったりはする。

 例え、それがズルい事だったとしても、俺は努力をしていないとは思えないのだ。


「でも、そんなにズルいことでもないと思うんですけどね。それを言ったら、あいつの方が才能だけでなんでも出来てズルいって言ってもいいと思いますよ」

「あいつの場合は自ら進んでその道を選んだということでもないからな。お前がズルいことをした代償として才能を手に入れてるに過ぎないんだよ。あいつ自身は何もせずにお前の一番近くにいたってだけなんだよ」

「そうは言いますけど、俺ってそこまでズルいって思われてるんですかね?」

「当然そう思うだろ。お前の周りの人間たちもきっと同じことを考えていたと思うぞ」


 まー君の話をそれ以上きくのは怖かった。

 怖かったのは事実なのだが、まー君の話を聞かないわけにはいかない。

 そう思ってしまっていた。

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