表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
性悪女たちとリセマラ男  作者: 釧路太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/59

第二十一話 まー君。

 まー君と言えば俺の知っているあいつのはずなのだが、俺の目の前に現れたまー君は俺の知っているあいつとは似ても似つかなかった。

 麻奈ちゃんと似ているうまなちゃん。

 イザベラちゃんとよく似ているイザーちゃん。

 あいつとは全く似ても似つかないまー君。

 俺は何を言えばいいのかわからず固まってしまっていた。

 それはいつもの事なのだが、どうしてもまー君から視線を外すことが出来ずに黙っていた。お互いに近付くこともなく黙った状態のまま何時間もたっているように感じていたけれど、実際のところはほんの数秒しか経っていなかった。


 ゆっくりと俺に近付いてくるまー君から目を離すことが出来ず、俺はなるべく気付かれないように最小限の動きでまー君を見ていた。

 何かの拍子で機嫌を損ねてしまうと大変なことになってしまう。本能でそう感じた俺がとることの出来た手段はなるべく動かず余計なことをしないということだ。それ以外にこの場を乗り切る方法はないと本気で思っていた。


「お前がここに来た理由はわかるか?」


 あいつとは似ていない声で話しかけてくるまー君。その質問の内容はわかったのだが、その質問に答えることはできなかった。

 うまなちゃんとイザーちゃんに連れてこられただけの俺は理由もわかっていない。何となく感じているのは、俺が持っている特別な能力が役に立つからということなのだが、今の俺は自由に過去に戻ることは出来ない。自分の意志で能力を使えない俺は何の役にも立たないだろう。それなのだから、ここに来た理由なんてわかるはずがないのだ。


「あの二人から何も聞いてないんだな。そうなると俺がお前に説明しないといけなくなるんだが、本当に何も聞かされていないのか?」


 俺が何かを聞き逃している可能性は低いと思うのだが、もしもあの二人から何か理由を聞かされていたとしたら俺の身に何か良くないことが起こるような気がしていた。

 それでも、俺は何も聞いていないと思うし何を説明されるのかもわかっていない。

 仮に説明されていたのだとしても、俺は何も理解していないのだから聞いていないのと同じことだろう。

 もちろん、そんなことは口が裂けても言えないので俺は黙っていることしかできなかった。


「面倒だけどいいか。お前がここに来た理由を説明してやろう。お前にはこれからいくつかの頼み事を聞いてもらおうと思う。頼みごとを聞いたからと言って、全て解決してくれなくてもいい。何だったら、一つも解決できずに失敗に終わったっていいんだ。大事なのは、お前が俺の頼みごとを聞いてくれたという事実なのだから。でもな、失敗しても問題ないからと言って最初から諦めるような真似はしないでほしい。その時は残念ながらうまなちゃんとイザーちゃんの手によってお前の命はあっけなく奪われてしまうだろう。お前は死んだとしても別の世界でやり直すと思うんだが、うまなちゃんとイザーちゃんはお前を迎えに行ってこの世界に連れてくることになる。お前がいなくなったところで向こうの世界には何の影響もないだろう。この世界にだって影響は一切ない。と言いたいところだが、俺にはお前のその特別な能力が必要なんだ。お前さえよければ、その能力を俺のために使ってはくれないだろうか?」


 もしも、俺がまー君の頼みを断ってしまったとしたらどうなるのだろうか?

 何事もなく解放されるとは思うのだが、そのあとはどうなってしまうのだろう。

 ここに来るまでの間に見た景色は瓦礫が積まれ不快な臭いが漂っている荒廃した世界だった。

 そんな場所で自由を手に入れたとしても、俺は無事にやっていける自信がない。誰にも頼らずに生活していけるなんて思えないのだ。

 自由に過去へ戻ることの出来ない今、自分が何をするべきなのか考えなければいけない。今出来ること。今やらないといけないこと。今やってはいけないこと。真剣に考えなければいけない。


 まー君が言っていた言葉を信じるのであれば、俺が死にそうになった時は能力が使えるということなのだろう。今はどんなに時計を見ても時間を戻すことが出来ていないし、死にそうになったという場面にも遭遇していない。もしも、本当に俺が死にそうになったのなら、死なずに済むような時間に戻れるのだろうか?

 今この場でそれを確かめるつもりはないが、俺が死にそうになった時は時間が戻るような気はしていた。


 いや、待てよ。

 まー君は何と言っていた?

 俺が死んだとしても別の世界でやり直すって言ってなかっただろうか?

 俺の能力は過去に戻るモノだと思っていたが、実際は違うということだろうか?

 今まで過去に戻った時に何かが微妙に変化していたと感じたことは何度もあった。それは俺が過去に戻ったことで何らかの影響を与えてしまったからだと思っていたのだが、別の世界に行っていたのだとしたらどうだろうか?

 全く同じ場所の同じ時間に戻っていたのではなく、別の世界の同じ時間に戻っていたとしたら。今まで感じていた小さな変化も納得出来るのではないか。


 過去の別の世界に行く能力。


 それが何の役に立つのかわからないが、俺にとって都合のいい世界を見つけることが出来たとしたら。

 これから先は何の苦労もなくやっていけるのではないか。


 まー君の言葉から推測しただけの話ではあるが、その可能性は高いような気がしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ