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性悪女たちとリセマラ男  作者: 釧路太郎


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第二十話 可愛らしい二人

 嫌なことから逃げ出したい。

 誰もがそう思ったことはあるだろう。

 だが、そんなに簡単に逃げ出すことなんて出来ないし、嫌なことがあっても頑張って耐えるのが普通なんだろう。

 でも、俺は嫌なことから逃げ出してやり直すことが出来る。

 そんな特別な力を持っていた。

 今まではある程度自分の意志で自由にやり直すことが出来たのだが、世界が大きく変わってしまったことが影響しているのか、俺は自分の意志で時間を戻すことが出来なくなっていた。


「聞いていたよりもずっと素直なんだな。もう少し抵抗するかと思ってたのに、ちょっと張り合いがないかも」

「今まで自分のタイミングで移動してたのにそれが出来なくなったら誰だって混乱するでしょ。イザーちゃんだって自分の能力が急に封印されたら困っちゃうんじゃない?」

「少しくらいは困るかもしれないけど、私は自分の特別な能力だけに頼ってるわけじゃないからこいつみたいに絶望はしないかな。うまなちゃんだって能力が封じられても何とかなるんじゃない?」

「どうだろう。私の場合は能力を封じられるにしてもどれを封じられたかによって全然違うからね。まー君との繋がりを封じられたら死んじゃうかも」

「それは私も死んじゃうかもしれないわ」


 俺が知ってる二人とは似ているのに全くの別人である二人の話していることが何となくでしか理解出来ていない。この二人は俺の特別な能力のことを知っているようなのだが、なぜ知っているのかということがどうしても理解出来ない。

 俺の能力のことを知ったとしても、俺が過去に戻ってしまえば俺の能力のことを知らない状態になっているはずなのだ。何度かあいつに俺の能力のことを詳しく説明したことがあったのだが、俺が過去に戻ったことで俺が能力のことを話していないあいつに戻っていた。何となくむしゃくしゃしてあいつのゲームを壊して絶交に近い状態になったこともあったのだが、過去に戻った時には当然ゲームも壊していないので今と同じような良好な関係を築けていた。

 どうやっても俺の能力のことを知っているはずがないのに、この二人は完全に俺の能力のことを理解している。

 その上、俺が今現在能力を自由に使うことが出来ないという俺も知らなかった状況を完全に把握しているのだ。

 もしかしたら、この二人は俺の知らないことも全て知っているのではないか?


 そんなはずはない。


 偶然だろう。そう思っていた時、ふと目が合った麻奈ちゃんに似ている茶髪の少女が俺の腕を力強く掴んできた。


「なんか面倒くさくなってきた。私たちがこうして説明するよりもまー君に直接説明してもらった方が早いでしょ。私だってイザーちゃんだって話を聞いただけで実際にどういうことなのか理解してないんだから。ね、イザーちゃんもその方がいいでしょ?」

「私はどっちでもいいかな。ここでこいつが納得してくれて協力してくれるんだったらそれでいいし、まー君の時間をこいつのために割くってのはちょっともったいないような気もするんだよね。こいつのためにまー君の時間を使うんだったら、私のためにその時間を使ってほしいなって思ってるもん」

「それは私も一緒なんだけど。まー君と楽しく狩りとかしたいし。イザーちゃんはそうじゃないの?」

「それは私も一緒だけど、まー君がこいつに説明した後にこいつに能力を使わせればいいでしょ。まー君だったらこいつが能力を発揮する条件も簡単にクリアすることが出来ると思うし。そうすれば私たちの時間を奪うこともなくなってこいつも状況を理解できるんだから一石二鳥でしょ」

「やっぱりイザーちゃんって頭がいいんだね。可愛いだけじゃなくて頭もいいなんて尊敬しちゃうよ」

「そう言ううまなちゃんだって可愛いよ。私もうまなちゃんの可愛らしいとこに心奪われちゃってるもん」


 うまなちゃんとイザーちゃん。麻奈ちゃんとイザベラちゃんに似ているだけの二人はやっぱり別人なんだと思わされた。

 多分、麻奈ちゃんもイザベラちゃんもあいつのことは好きなんだろうなと思う。直接そのことを聞かなくても普段の行動を見ていれば誰だって気付くだろう。

 麻奈ちゃんはいつもあいつのことを目で追っているし、俺が視界に入ると途端に不機嫌になることが多い。俺のことが嫌いなのか、あいつを見ているのに俺みたいなのが視界に入るのがただ不快なだけなのかどっちなのかわからないが、俺に対して良い感情は抱いていないのは確かだろう。

 一方のイザベラちゃんは他の女子と違って俺とも普通に話してくれるし俺を見ても嫌な顔をすることはない。もしかしたら、俺のことを好きなのかもしれないと勘違いしていた時期もあったが、すぐにそれは勘違いだったと思い知らされた。イザベラちゃんが誰かに優しくした後は必ずあいつのことを確認しているのだ。俺にも優しくしてくれるのは良い人アピールなのかもしれないけれど、俺にとってはとても特別な体験になっていた。

 ただ、二人はこんな風にあいつに対して積極的に気持ちを見せるようなことはしなかった。少なくとも、他の人に遠慮してあいつの時間を独占しようとはしなかった。

 やはり、この二人は麻奈ちゃんとイザベラちゃんとよく似てはいるが、全くの別人だということになるのだろう。


 でも、この二人も凄く可愛いのは間違いない。



「ねえ、こいつなんか気持ち悪いからさっさと連れて行こうよ。このまま私たちで説明するの無理だと思うし」

「やっぱりそうかもね。なんか、ニヤニヤして気持ち悪いかも。やっぱりまー君のところに行った方がいいかも」

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