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性悪女たちとリセマラ男  作者: 釧路太郎


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第十六話 知らない言葉

「お前がおかしいのはいつも通りなんだけど、今日のお前はいつもと違うおかしさだな。なんか、別人になったみたいな気がする。いつものお前と全く同じ魔力のはずなのに、全く別人に感じるのはどうしてだ?」


 麻奈ちゃんが俺に話しかけてくれるチャンスはもう今世紀中には訪れないんじゃないかと思ってはいるのだけど、うまいことを返事を返すことが出来ない。魔力とか日常的に使うような言葉ではないのにそれを当たり前のように使われるとこっちが緊張してしまう。麻奈ちゃんは普通の女の子でオタク趣味があるとは思えないのだが、もしかしたらそっちの方面にも詳しいということなのだろうか。

 それだとしても、俺は素直に答えることが出来なかった。麻奈ちゃんから魔力なんて言葉が出てきた現実を受け止めることが出来ないまま固まってしまっていた。


「別にお前がどうだろうとどうでもいいんだけどさ、まー君はいつになったら戻ってくるわけ?」

「いつって言われても、あいつの用事が終わるのがいつなのかによるんじゃないかな。俺はあいつが何をしているのか聞いてないし」

「聞いてないって、そんなわけないでしょ。まー君はお前の尻拭いで魔王と交渉してるっていうのに、どこまでもお前は他人事なんだな。自分が何をやらかしたのか忘れたとは言わせないよ」


 俺はいったい何をしでかしたというのだろうか。魔力に続いて魔王という現実世界では聞きなれない単語が出てきたのだが、どうやら麻奈ちゃんは冗談を言っているのではなく本気で言っているようだ。

 全く理解できない話になっているのだけど、どういうことなのだろうか?


「お前が魔王を挑発したのを覚えてないとでもいうの?」

「ごめん、魔王とかよくわからないんだよ。俺がいったい何をしたのかも思い出せないんだけど」


 思い出すも何も、俺は魔王に対して何かをやったという記憶はない。そもそも、俺の記憶の中に魔王というものは存在していない。ゲームや漫画の話であれば魔王という言葉でイメージする姿はあるのだけれど、現実世界における魔王という存在は全く想像もつかない存在でしかなかった。

 それでも、俺はこの世界で何かとんでもないことをしでかしたということみたいだし、それの尻拭いをあいつがしてくれているというのも嘘ではないみたいだ。


 どこまで行ってもあいつはとんでもない男なんだな。



「話は聞かせてもらったよ!!」


 勢いよく扉を開けて登場したイザベラちゃんに驚いてしまったが、声の大きさに驚いたのか扉を思いっきり開けた時になった大きい音に驚いたのか自分でもわからなかった。


「あれ、イザベラちゃんはまー君と一緒じゃなかったの?」

「途中までは一緒だったんだけど、前田君の様子がちょっとおかしいんじゃないかってまー君が言いだしてこっちの様子を見に来たってわけ。まー君が一人でも大丈夫って言ってくれたからこっちに来たんだけど、そこにいるのって前田君であってるんだよね?」

「イザベラちゃんもこいつがなんかいつもと違うってのは感じてるの?」

「うん、何かいつもと違うように感じるんだよね。姿かたちはもちろんのこと、魔力だっていつもの前田君のままなはずなのに、どこか別人のように思えて仕方ないんだよね。何が違うのか具体的に言えないんだけど、いつもの前田君と何かが違うような気はするんだよ」


 二人の美少女にこうして見つめられるのは照れてしまう。目を逸らそうとしてもどちらかと必ず視線が合ってしまうし、急に後ろを向いたとしても二人とも俺の目の前に移動しているのだ。

 一度目をつけられたら二度と逃れることのできない恐ろしい存在のように感じる二人ではあったが、見た目も声もいつもの二人と何ら変わることはなかった。俺には感じることはできないのだけれど、きっと二人の魔力もいつもと何も変わらないんだろう。


「いくら疑問に思ったって私たちじゃ答えなんて導き出せないさ。まー君が戻ってきたらすぐにわかることだし、今はそんなことを気にしている場合じゃないでしょ。まー君の交渉がうまくいくかどうかを占う大切な時間なんだよ。麻奈ちゃんも前田君もまー君がちゃんと予定通りに動くか祈って祈って」

「まあ、こんな奴の力でも無いよりマシだからね。悔しいけど、こいつの思う力ってあたしたちよりもまー君に与える影響が強いんだもんね。本当にむかつくけど、まー君がそう言ってるんだから信じないといけないよね」


 麻奈ちゃんとイザベラちゃんは今までアニメや漫画でよく見た祈りのポーズをとっていた。先ほどまで制服姿だったと思っていたのに、いつの間にか巫女装束に着替えていたのでその姿は美しさと同時に日常の光景のようにも見えていた。

 こんな日常は今まで見たことはなかったけれど、二人の行動や姿があまりにも自然に行われているように俺の目には映っていた。


 ただ、魔王やら魔力やら俺の日常になじみのない言葉の説明をもう少ししてほしいとは思ってしまった。

 そんなことを聞ける雰囲気ではないので俺も二人にならって祈りを捧げているのだが、いったい何を祈ればいいのだろうか。


 あいつが無事でいて、この世界を救ってくれますように。


 とりあえず、そんなところかな。

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