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性悪女たちとリセマラ男  作者: 釧路太郎


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第九話 金色の天使

 夕日を浴びていつも以上にキラキラと輝いているイザベラちゃんの美しい金色の髪は風も吹いていないのにサラサラとなびいていた。その美しさに心を奪われそうになりつつも、俺はそんな誘惑に負けたりしないと心を強く保つ努力をしていた。

 ただ、優しくほのかに香る甘い匂いは俺の思考を少しずつ鈍くしているのであった。


 麻奈ちゃんがこの教室からいなくなったのを確認したイザベラちゃんは俺の前の席へと移動してくるとそのまま俺の方を向いて机の上に置いた手の上に顔を乗せて上目遣いで俺のことを見てきた。今まで見たどの青い色よりも奇麗な青い瞳に吸い込まれるような感覚になり、俺はますます何を考えればいいのかわからなくなっていた。


「前田君とまー君って、すごく仲が良いけど、特別な関係になってたりするのかな?」

「特別な関係って、どういう意味?」


 特別な関係が俺の考えているものとは違う特別なのだとは思うが、そのことをはっきりと聞いた方がいいのか悩ましい。イザベラちゃんが思っている特別な関係というものが俺が想像する特別な関係だったとしたら、俺は真顔になって答えずにどうにかごまかすか麻奈ちゃんが返ってくるまで寝たふりをしてしまうだろう。

 俺の目の前にいるイザベラちゃんがそんなことを考えているとは思いたくないのだが、イザベラちゃんが腐女子だという話を聞いたことがあるので何とも言い難い。俺とあいつでそんなことを考えているとは思いたくないけれど、俺とこうして向き合って話をしてくれるということはそういうことを考えているという可能性もあるのかもしれない。

 イザベラちゃんが腐女子だったとしても俺はそのことを否定するつもりなどないけれど、俺のことをそんな目で見てほしくないという気持ちはあったりする。


「言葉にするのは難しいんだけど、前田君とまー君ってすごくすごい仲が良いと思うんだよね。ほら、どんな時でも一緒に帰ってるし、まー君が女の子と一緒に帰る時でも最後は前田君と二人だけになってるでしょ?」

「そうかもしれないけど、俺とあいつは家も隣同士で昔からの付き合いだからね。お互いに部活もやってないし一緒に帰るのは自然なことだと思うよ」

「そうなんだよね。ほら、そんな関係ってなかなか成立しないと思うんだよ。家が隣同士だったとしてもずっと仲が良いとは限らないし、高校は別のところになる可能性だってあったでしょ。何がきっかけかはわからないけど、今みたいに一緒に行動しなくなる可能性だったってあったはずなんだよ。喧嘩をしたらそうなる可能性は高いだろうし、どっちかに恋人が出来たら一緒に帰れなくなるかもしれないしね」


 あいつに彼女ができる可能性は十分にあるだろう。あいつがその気になればいつだって彼女はできると思うんだけど、俺にはその可能性は皆無だ。

 イザベラちゃんは俺に気を使ってどっちかに恋人が出来たらって言ってくれているけど、俺に彼女ができることなんて万が一にもありえないだろう。恋人どころか女友達だってできる未来が見当たらないのだ。俺とこうして話をしてくれる女子なんて、イザベラちゃんの他には誰もいないだろう。

 無意識のうちにため息をついていた俺はイザベラちゃんから視線を外していたのだが、俺の目の前にいるイザベラちゃんはゆっくりと目を閉じて顔を少しだけあげていた。その姿はまるでキスをせがんでいるような印象を受けたのだが、そんな勘違いをするほど俺は自分のことを認めていないのだ。

 イザベラちゃんの中でキスをすることはあいさつの一つという考えがあったとしてもこの国の文化ではないわけだし、そんな姿を誰かに見られてしまったら俺の人生は今以上に暗いものになってしまうだろう。もうすぐ麻奈ちゃんも帰ってくると思うし、あいつだっていつ戻ってくるのかわからない。そんな状況で俺は分の悪い賭けに出ることなんて出来るはずがないのだ。


「私はね、知ってるんだよ。色々と」

「色々って、何を?」


 パッと目を開けたイザベラちゃんはまたしても俺が予想もしていなかったことを言い出した。色々と知っていると言っているが、いったい何を知っているというのだろう。俺の秘密を知っているとでもいうのだろうか。


「前田君って、麻奈ちゃんのことが好きだよね?」

「!!!」

「図星って感じの顔だね。ちょっと面白いかも」


 ちょっと面白いというのが俺の顔が面白いということなのか、俺の反応が面白かったということなのか。どっちでもそんなに変わらないとは思うけど、どうしてバレているのかという気持ちでいっぱいだった。

 麻奈ちゃんに迷惑をかけないようにその気持ちは秘めていたはずだし、誰にも悟られないようにしていたはずだ。

 あいつだってそのことは知らないはずだし、あいつが知っていたとしたら他の女子とは帰らずに麻奈ちゃんだけを誘ってくれるはずなのだ。あいつは俺のためにいろいろとしてくれるし、俺が好きなものを俺の近くに寄せてくれるやつなのだ。


「でも、麻奈ちゃんの事は諦めた方がいいと思うな。意地悪で言ってるんじゃなくて、前田君と麻奈ちゃんは人生を何回やり直しても結ばれないって気がするんだよね。多分、そのことは前田君が一番よく知っているんじゃないかな?」

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