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アイズエーアイズ  作者: 鈿寺 皐平
#11 被験者、全員集合

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第97話 〈AIの力〉とコマンド

「おそらく玲奈様と瓢太様はまだこの世界に滞在すると考えてます。その場合、敵AIとの遭遇時にどうするかを話し合っておきたいのです」


 二人は僕に協力しない。そうだとしても、二人が敵AIに襲われる場合はまた別の話になる。


 その時の対応をどうするかは僕たち三人の中にいるAIと認識を合わせておきたいと、リードさんが先週末に話していた。


「僕は迎え撃とうと思ってるけどね。軽く大砲でも創造して」


「それでは大事になってしまうので、できれば気絶させることができるくらいの創造物に留めてもらいたいですね」


「あー、なら腕とか脚に装甲とかつけてぶつけるくらいしかできないね。まあでも対抗するよ。瓢太がここにいる限りね」


「え、それってクリエが俺の体を使って敵と戦うってこと?」


「そうだよ?」


「え、戦えるの?」


「戦えるよ! この世界に来る前に戦ってるからね! 僕!」


「あ、そうなんだ」


 信用してないのか想像できないのか、瓢太は釈然としてない様子だ。


 かくいう僕も現実世界がどれだけ悲惨なのか分からないから、リードさん達がどんな死線をくぐってこの世界に来たのかいまいちピンと来てない。


「もし対抗するのであれば」


「ホワイトキューブでの格納、だよね? 大丈夫だよ! あと、遭遇した時は念のため連絡する! 瓢太が着信相手なら躊躇わず電話に出れるだろうし!」


「分かりました。それでお願いします。応援が必要そうであれば向かいます」


「ほいほい!」


 つまりこれで真夜中寝ていても僕が行く事になることが確定ってことですかね? 僕の意向は特に聞かない感じ……


「デリートはどうなされますか」


 あ、聞かない感じですね。


「僕は戦い方あんまり分からないから、連絡しながら逃げてると思う。もしくはリードの近くに付いてるとか。同居してるし」


「デリくんは、コマンド使って逃げるんじゃなくて電話だけしてその場で待機しておけばいいんじゃないの?」


「ちょっと待て! ちょっと待って!?」


 瓢太が急に慌てた様子でデリートさんとリペアさんの会話に割って入ってきた。


「待て待て! ツッコミどころがあったぞ! 今! ちょっ、同居ってどういうことだ介!?」


 あー……その話、まだ瓢太にはしてなかったっけ?


「あれ? 言ってなかったっけ?」


「いや聞いてないって! え、介と……玲奈さん? が、同居!?」


「れ……」


 いや、ここは下の名前で呼んだら余計にややこしくなるか……。


「渡会さんとは、テストの一週間前くらいに同居することになったんだ」


「なったんだ、じゃねぇよ! さっき介、まったくの他人って言ってたやんけ! あれ嘘か!?」


「いや、まあ……他人ではあるんだよ。ただ、訳あって同居することになったってだけでさ」


「いやそれ言えよ! 何が他人だよ! 同居人が他人なわけあるか! なんか……俺だけ仲間外れ感あるやんけ!」


 仲間外れ感……あるかな? 特段言う必要もない事だと思ってたんだけど。


「てか、同居ってなんでだよ! なんでそうなった!?」


「それはごめん。家庭の事情でとしか言えない。渡会さんも、同居したくてしてるわけじゃないから」


「あ、あー……そ、そうか。そうなんだ。なんか……わりぃ」


 謝意を述べる瓢太に、僕は軽く首を横に振ってみせる。伝えていなかった僕にも少なからず非はある。瓢太だけが悪いなんてことはない。


「渡会さんとは同居してるから、だから登校する時に一緒になるかもしれ……あ、そっか。朝は被験者みんなでバス登校することになるのか」


 なんて出来すぎた偶然。だけど……なんか嬉しい! 心強いというか、なんというか……うん、嬉しい!


「てか、ごめん。さっきの話聞いてて気になったことがまだあるんだけど……コマンドってなに?」


「クリエイト。瓢太様に言っていなかったのですか?」


「そうだ、まだ言ってなかったわ。でもまだ僕のコマンドないから見せる機会とか言う機会とかなくてさ」


 となると、コマンド能力を備えてるのはクリエイトさん以外のAIということだろうか。


 リードさんは二つあって、デリートさんもさっきの話からしてあるっぽい。


 そういえばリペアさんにはコマンド能力があるのか?


「まあ、良い機会でしょう。瓢太様と玲奈様はまだご存じではないと思いますし、介様にもざっくりとしか説明してません。改めてここで私から説明します」


 そういえばリードさんから前に『コマンドは携帯にインストールされてるアプリ』的なことを言われた気がする。その時は情報過多にならないよう詳細を省いてくれていた。


 リードさんが使うコマンドはもう分かってるから、コマンドそのものについても知った気になってたけど……まあ、一応聞いておこう。


「まず瓢太様、玲奈様にお聞きしたいのですが、〈AIの力〉は分かりますか?」


「クリエがポンって出してくるあれでしょ?」


「前に話してた〈末梢の力〉ってやつのこと?」


「そうです。お二人が指してるそれが〈AIの力〉。しかし、コマンドはその力とは違います。〈AIの力〉はAI一体に必ず一つだけ備わっている力。しかしコマンドは特定のAIに補助的な意味合いで備わっている力です。全てのAIが備えているとは限りません」


 前にコマンドは敵AIに対抗するためと聞いてた気がするが、本当は補助的な力という位置づけなのか。でも言われてみれば、そっちの意味合いのほうがしっくりくる。


 それにリードさん達は人間のために動くAIだからあんな殺人的な力がデフォルトで備わってるとは考えづらいし。


「補助的な?」


 玲奈が首を傾げて頭上に疑問符を浮かべると、リードさんは矢継ぎ早に応える。


「私で言えば、フィジカルブーストという身体強化を行うコマンドがあります。私は〈透視の力〉を持っていますが、この力の応用的な使い方で相手の動きを予測することができる。その予測への対応力をコマンド:フィジカルブーストを使用することで高める。分かっていても反応できないという事象をできる限り減らす。補助的というのはそういうことです」


 つまり〈AIの力〉を十分に発揮できるようにするためのアシストというわけか。


 前にリードさんが例えとして挙げてたもので表すなら、携帯に付いてるカメラの性能をアプリで向上させるといった感じか。


「じゃあ、クリエとかにもそういう補助的な力が別であるってことか?」


「あ、ごめん瓢太。僕にはないんだ。それ以外のみんなはあるけどね」


「え? なんでクリエだけないの?」


「今は鋭意創造中だからです!」


 そう言って、クリエイトさんは片目をパチっと瞑ってペロッと舌を出す。


 その仕草をしても瓢太には見えないのだが、視線が僕のほうを向いてるから僕に向けてやってるんじゃないかと勘違いしてしまう。


 瓢太のある程度整った相貌でも、さすがにその仕草を目の当たりにするのは正直きつい。


「というか、そもそもコマンドはAIの中でただ一体、リードしか備えていなかったものだからね」

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