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アイズエーアイズ  作者: 鈿寺 皐平
#10 最後の中間試験を終えて

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第86話 冷たい彼女との帰り道

「び、びっくりした。お、お疲れ……」


「お疲れ。テスト、どうだったの? 全然できなかった感じ?」


「あ、いや! 渡会さんのおかげで、すらすら解けたよ! ありがとう! いろいろ教えてくれて」


「……なんだ。すごい考え込んでるみたいだったから苦戦したのかと思った」


 え、そんな顔に出ちゃってた?


「いや、ちょっと考え事してただけ。別にテストのことじゃ……まあ、不安はないわけじゃないけど。渡会さんはどうだった?」


「多分、ある程度解けたと思う。ちょっと気になるところはあるけど」


 言いながら、渡会さんは手に握りしめている数学の問題用紙を睨みつけている。テスト直後でも復習をするその姿勢は見習いたい。


「すごいね、テストの後も復習なんて」


「復習というか、気になるところあるからもっかい頭の中で解いてるだけ。なんか納得いかないから」


「おぉ……」


 テスト期間中は勉強を教えてもらっていたけど、渡会さんの教え方は分かりやすかった。


 僕が躓きそうな箇所を先回りするように気を付けてと注意してくれたり、解き方については問題集の解答を要約して教えてくれたこともあった。


 それだけ彼女が勉強にいそしんでいたんだなっていうのが伝わってきた。


「渡会さんって、意外と負けず嫌い? 完璧主義?」


「まあ、そうかもね。あたしを捨てた親に後悔させたいとかは思ったことあるし」


「……ごめん。それどう反応したらいいか分かんないや」


「普通に、そうなんだ……でいいよ。特に気を使われるようなこと期待してなかったし」


「あ、はい。そうなんだ」


 このなんとも言い表しづらいやりづらさ。勉強について聞く時はちゃんと話ができてたんだけど……。


「てか、考え事ってなに? 楓ちゃんのテストとか?」


 仁徳大仙にんとくだいせん高校前というバス停の前でちょうど立ち止まった時、渡会さんがふとそう訊いてきた。


「あー、まあそれもないことはないんだけど……今後、敵と渡り合うのにどれくらいトレーニングしないといけないのかを考えてた」


「……そうなんだ」


 めっちゃどうでもいいな感を出されてる……。僕としては渡会さんに興味を持ってもらいたいことなんだけど。


「楓ちゃんのことは、学校には隠してるんだっけ?」


「うん。一応バレてはないみたいだし」


「だとしても、十一月まで休んだら流石にバレそうな気がするけどね」


「まあ……そうかもね。でも、その時はその時だし」


 なんて言ってみてはいるけど、いざ楓のことがバレて退学にでもなれば、楓の将来は一気に危うくなる。


 どれだけいい子だったとしても、逮捕歴があるというだけで社会的地位に及ぼす影響は大きい。


 だけど、まだそうはなってない。僕はまだ希望は捨ててない。西東さんと山田さんには、そう勇気づけられたから。


「テストは受けさせてもらえるの?」


「この前、楓のクラスの先生が追試について掛け合ってみるって言ってくれたから、楓が登校できるようになったらテストは受けさせてもらえる……んじゃないかな」


「そう。まあ悲惨だね。同情するよ」


 渡会さんには先週、楓が敵AIに襲われたことを話した。同じ被験者ということもあって、やはり西東さんや山田さんよりも理解が早い。


 彼女のおかげで、理解者がすぐ傍にいるありがたさが身に染みている。


「楓が出てきたら、その時に紹介するよ。普通にいい妹だからさ。多分、話しやすいと思うし」


「まあ、嫌でも共同生活はすることになるからね」


「嫌でもって……」


 いや、間違ったことは言ってないけど……言い方よ。


「あれ? 今使ってる部屋、元々楓が使ってた部屋だって説明したっけ?」


「孝子さんから聞いてる。部屋にある勉強机は楓ちゃんのやつだからとか色々言われた」


「あー、そっか。まあそれくらいは聞いてるか。でも楓が帰ってきたら、いずれ一緒に寝る部屋になると思うよ」


「じゃあ、あの部屋で三人で寝るってこと? 狭くない? 愛田は?」


「え? そりゃあ自室で一人……」


「いや、愛田はリビングで寝て、あたしか孝子さんがその部屋で寝るよ」


「なんで!? なんで急にそうなるの!?」


「別に部屋なくても大丈夫でしょ」


「いや、いるよ! ちゃんと使ってるし!」


「なに、女の子は狭いところでぎゅうぎゅうに寝てろってこと? 最低だね」


「どういうこと!?」


 何がどうしてそうなったの!? 話の流れが分からん!


「なら被験者同士、介くんの部屋で一緒に寝たらいいんじゃない?」


 唐突にそう言い出したのは、リペアさんだった。教室でも思ったけど、こうして体が僕の意志に反して動く感覚も何気に久しぶりだ。


「は? ふざけんな。ありえないから」


「えー、被験者同士仲良くしようよ」


「被験者どうこう以前の話だし」


「あー、まあ確かに。男女の関係は複雑だなぁ……」


 まあ渡会さんが警戒するのは分かってたけど、こうも激しく否定されると心に来るものがある。


 これ以上この話をされるとメンタル弱々の僕に響くので、話を変えさせていただこう。


「話してるとこあれだけど、僕は帰り、スーパーに寄るから。渡会さんは来る? それとも先帰る?」


「……お菓子無くなったから行く」


 そう答える渡会さんは、なぜか僕をじっと睨めつけていた。その視線に対してなんと答えればいいか迷ってたら、ちょうど帰りのバスが到着した。

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