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アイズエーアイズ  作者: 鈿寺 皐平
#9 新たな家族

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第80話 次に取るべき行動

「いや、実際よく分かってないし。デリートってAIからはこの世界が仮想世界だっていうのと、現実世界に戻って欲しいってことと、敵AIがいて危ないってことを言われたけど……どれも現実味がないし」


「分かる! ほんとにそう! いきなりこの世界が仮想世界だって言われてもそんなの普通信じれない! 僕もそうだった! 最初に会ったのがリードさんだったけど、リードさんに説明された時は本当に意味分かんなすぎてずっと混乱してたもん。気持ちめっちゃ分かる!」


「あ……うん」


 あ……これ、またやってしまったか……?


「あ、ごめん。いや、つい……同じ境遇にいる人と初めて会ったから」


「あー……まあ、そっか」


 なんだろう……なぜか話のリズムがさっきから噛み合わない。


 まあ、昨日今日会った人間と早々に仲良くなれるなら、僕はもっと顔の広い人間になってるか。こんなもんなのかな……人との距離を詰めるって。


「玲奈様。今、目の前に体の共有を求めるウインドウ画面は出ていますか?」


「え、そんなの……あ、今出てきた。これを……え、あー……え? 指こっち向き? え、こう? これ合ってる?」


 おぉ……他人がボタンを押すところを初めて見る。第三者視点からだと、コンタクトレンズを入れる所作に見えなくもない。


 あの時、駅でボタンを押そうとしてた僕は、楓からだとこんな風に見えてたってことか。


「あ、消えた」


「それで大丈夫です」


「あ、はい」


「……」


「……」


 唐突に流れる静寂。渡会さんの中にいるAIが表に出てきたら髪と瞳の色が変化するはず。だが、一向にその変化が見られない。


「ん? おーい、デリくーん? あれ?」


 リペアさんが呼びかけてみているが、別に変化は……と思った矢先、渡会さんの瞳と毛先の色が一瞬で鮮やかな青色に染まる。


 瞳はまるで宝石のような輝きをしていた。だけど、その目はただ冷たくこちらを見つめてるだけで何も言ってこない。


 しかし、しばらく待ってみると、渡会さんは黙り込んだまま膝の上に乗せていた弁当に蓋をし、静かに横に置いた。


「お、デリくん? デリくんだよね? そんな静かに動き出さなくても」


「リペアさん、あんたねぇ!!」


 急に立ち上がると、渡会さんが僕の胸元を掴んで勢いよく迫り寄ってきた。いや、寄ってきたのは渡会さんの中にいたAIか……って、そんなこと冷静に考えてる場合じゃねぇ!


「ちょっ、危なっ……! 落ちますって!」


「僕がどれだけ大変だったか知らないで僕のこといじってさぁ! なんなんですかあんた!」


「デリート、落ち着いてください。介様が階段から落ちてしまいます」


「落ちてもいいでしょ! リペアさんの力があれば実質無傷でしょ!」


「あー、確かに」


「いや、確かにじゃないから! 落ちるのは普通に痛いから嫌なんだけど!?」


 〈修復の力〉ありきで話を進めるのはやめてもらえませんかね!? こちとら痛みはすぐに癒えないって知ってるんですから! 身をもって味わってますから!!


「とりあえず、一度落ち着いてください。まずは私達がこの世界で出会えたこと、そして次に私達が取るべき行動を話し合いたいです」


 リードさんのその冷静な物言いは、相手をなだめるというよりも少しだけ怒りを差し向けて威嚇してるような感じだった。


 含意を汲み取ったのか言葉通り冷静になったのか、デリートというAIは前のめりになっていた体と伸ばしていた腕をぐっと引く。


 アンバランスになっていた僕の体はようやく安定した。階段から落ちずに済んだことに内心安堵してる傍ら、デリートが徐に口を開く。


「僕は、できれば反人間存続派と戦うという選択肢を取りたくない。戦うの嫌いだし、戦い方知らないし。だから被験者の人達には、すぐにでも現実世界に戻って欲しい」


「すみませんが、それは無理です」


 あまりにも非情な返答だった。有無も言わせぬ、ひと息すらつかせないリードさんの発言には、傍で聞いてる僕でもいささか胸の辺りがキュッとなった。


 デリートは僅かに目を細くして、目尻をつんと尖らせる。


「なんでですか?」


「あなたに協力していただきたいのです。介様の両親が敵AIに攫われ、今もなお行方が分からない。そのためにはまず、敵AIから情報を引き出す必要があるのです。あなたの力があれば、敵AIと遭遇した時により一層戦いやすくなる」


 その言い方だと協力してもらいたいというより、協力しろと強制してるように聞こえてしまう。リードさんとはいえ、それはお願いする立場にいる者の口調だと僕は思えない。


「なんでですか? なぜ戦うんですか? この世界に入ってきたAIはこの世界に閉じ込めて、被験者は現実世界に戻して、仮想世界と現実世界の接続を断ち切る。そうすれば被害を最小限に抑えられるし、この世界に入ってきたAIをわざわざホワイトキューブで捕らえる必要もない。ホワイトキューブで捕らえたAI達は結局廃棄するでしょうし」


「……まあ、そうですね。あなたの言ってることは正しいです」


 案の定、黙っていられないとばかり言葉を捲し立てるデリート。リードさんはそれが正論であると認めた。だけど、それでも彼女は引き下がることをしない。


「けれど、被験者である介様が両親の救出を望んでいる。それが達成されれば、介様は現実世界に戻ると仰られている。だから私は介様の意見を尊重して、まずは両親の救出を」


「そんなのほとんど不可能だと思いますよ」


 リードさんの言葉を、デリートは食い気味に否定した。


「両親を救出しても、敵AIを全て捕らえないと、愛田くんの両親はまた敵AIに襲われる可能性がある」


「だから私は、あなたに協力を求めているのです。敵AIを全てホワイトキューブで捕らえることができれば、それも可能です」


「……リードさん。らしくないよ」


 デリートから冷静にそうさとされると、リードさんは途中まで開いていた口をそっと閉じた。


 冷静に考えれば、確かに無茶苦茶なことを言っているのは分かってる。だってこれは、僕が口にした宣言だから。

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