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アイズエーアイズ  作者: 鈿寺 皐平
#8 事情聴取 その2

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第72話 帰り道

「なんか、ごめん。色々」


「え、なんで?」


「いや、すっごい迷惑かけてるなって。今日も、本当だったら仕事行ってただろうし。せっかく買ってくれた制服も……ボロボロになっちゃったし。だから、そういう色々なこと含めて……ごめん、だし……ありがとう」


 僕がもっと強かったら。この一週間余り、何度そう思ったことか。


「今回のことって、介くんが発端なの?」


「いや、そういうわけじゃないけど……」


「なら、謝ることないよ。聞いたよ。介くんは暴走してる楓ちゃんを止めようとしてたって」


「刑事さんから?」


「そうそう。何も悪いことしてないなら、別に謝る必要ないよ」


「……まあ、そうかもだけど」


 孝子さんが言ってることは正しいんだと思う。それでも、僕の中にある罪悪感が消えることはない。


 振り返れば、もっと冷静に対処していれば防げたことがあったと、そう後悔してるくらいだ。


「でも……少なくとも、面倒かけたかもしれないなって」


「あー、確かにそうかも。よくよく思ったら、すっごい面倒だよねー」


「あ……はい。ごめんなさい」


 まあストレートに言われてしまったら、それはそれで謝罪をせざるを得ないわけだが。


「でも、なんだろなー……これが一緒に暮らすってことなのかなーって」


「いや絶対違うよ。こんな警察沙汰な生活、普通じゃないって」


「そうかもね」


 言うと、孝子さんはふっと小さく吹き出す。軽く一笑終えると、満足げに小さくひと息吐いてから、孝子さんはまた話し出した。


「でも、二人が来る前よりは楽しいって思ってるよ。もちろん、こんな形で二人と暮らしていくのは望んだことじゃないけど。でも誰かと暮らすってこういうことかなって。だって帰ってきたら、いつも家の中が明るいし」


 こんな状況でも、孝子さんは微笑んでいる。そう言われることが思いの外嬉しくて、僕もつられて微かに頬が緩んだ。


 でも、こんな顔を見られるのが恥ずかしくて、つい窓の外に視線をやる。


「あ、あと今日、一緒に暮らす人がひとり増えるから」


「あ、そう」


 僕と楓が孝子さんの元に来る前、孝子さんがどう暮らしてたかは知らない。


 けど、孝子さんの元で暮らすことになってから最初の一か月は、確かに今ほど笑ったり暴れたりしてなかった。どちらかと言えば静かな方で……


「え、待ってごめん! 今、孝子さん……なんて言った?」


「え? いつも家の中が明るいなーって」


「いや、その後! 一緒に暮らす人が増える、とか言った?」


「あ、うん。その子、私の親友の所で暮らしてた子なんだけど、数ヶ月前にその子引き取ることになったの」


「数ヶ月……そんな前から!? いや、じゃなくて! なんでそんな……今ここで!?」


 急な話じゃないっていうのは分かったけど、その数か月の間に話せなかったのかって思ったよ……。話し出すのがあまりに急すぎる!


「私と同じ職場の人で一人、行方不明になってる人がいるの。その人、言ったら私の親友なんだけどね。去年の春頃からずっと職場に顔を出してないの。携帯に連絡しても反応ないし。家に電話しても出るのは親友じゃなくて、その子なの。帰ってきてるかどうか訊いても、帰ってきてないみたいだし」


「それって、今も?」


「うん。今日も職場に寄ったけど、いなかったし。もちろん、連絡も何もないって他の人も言ってた」


 コピーが生んだ二次被害はまだ収束していない。今日出会った敵も、なぜか僕たちが既に捕らえたコピーを探していた。それに、分体が入ってた人たちもまだ目覚めてないと聞く。


 敵が言っていた主導権の譲渡……コピーの〈模倣の力〉には、まだ何かある。


「孝子さん、その親友の人に電話かけたの?」


「え、うん。かけたよ」


「……そっ、か。それって、電話番号で?」


「ううん、AINE。あ、そういえば行方不明になる前、携帯変えるとかなんとか言ってた気がする。出ないってことは……もしかしたらAINEアカウント引き継いでないのかもしんない」


 楓はお母さんの電話に出て、コピーの分体に体を乗っ取られてしまった。


 孝子さんも、もしかしたら分体に乗っ取られていた未来があったかもしれない。そう思うと、背筋に薄っすらと寒気が走った。


「あー、なら電話番号じゃないとかけても出ないっ……」


 孝子さんの身に何もなかったことを安堵して、しかし、ふと自分が余計なことを口にしてまっていることに気付き、咄嗟に口を噤む。


「そうだよねー。でも電話番号は知らないんだよね。聞いとけば良かったなぁ……。まあ今日、その子に聞いちゃうか」


 不意に言葉を飲み込んだが、杞憂に終わってよかったと、喉につっかえていたものを吐き出す。だけど心臓のバクバクはまだ収まらない。


「あ、いや! でも、行方は分かんないんだよね? なら今は警察に任せた方がいいよ! その方が確実だろうし」


「うーん……でも心配だしなー」


「だ、大丈夫だよ! あ、そういえばさっき、西東さん達と話した時、行方不明の人についても同時に調査してるって言ってたよ! なんか最近、行方不明になってた人達が見つかったって言ってたし……。だから、近々もしかしたら……ね!」


「あー、そうなんだ。じゃあ、まあ……警察に任せてみようかな」


 よしよし、これでひとまず安心か。いや、念のため話題も逸らしておくべきか。


「で、その子はどういう子なの?」


「えっとねー、介くんと同じ学校の女の子だよ。三年生の」


「……え?」

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