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アイズエーアイズ  作者: 鈿寺 皐平
#3 現実を目の当たりにして

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第28話 彼女の力

『介様がご老人を助けようと自ら走り出した時、私も介様同様に体を動かしたのですが……』


 あぁ、あの時の……。


『その時、想定していた以上に介様の体が前に進んでいったんです』


「あー、うん。そうだよね? 僕も思ったそれ」


『気付いておられたんですか』


「あの……コマンド能力のレベルツー? をリードさんが言ったというか使ってから、前に進む速度が、今まで感じたことないくらい上がったし……」


 静かにふむふむと首肯した後、リードさんは再び口を開く。


『私は数値で身体能力を測ることがあるのですけど、その時は私が想定していたフィジカルブースト レベル ツー・ゼロの数値の倍も上回っていました』


「……へー……」


 実際飛び出したその距離はかなり短かったし、何かの勘違いかもと思って気には止めていなかったけど、やっぱりあの時の違和感は合ってたんだ。


『明日以降、できれば早朝トレーニングの時に試してみたいことがあるので、この話はまた明日にしましょう』


「え、早朝!? 夜じゃダメなの?」


『朝とか昼の方がいいですね。疲労が溜まった後の体では、ベストパフォーマンスでのトレーニングは難しいと思いますので』


「……そっか」


 あまり筋トレに関して詳しくないけど、リードさんがそう言うなら頑張ってみよう。まあ朝食を作るために朝早く起きたりすることもあるし、大丈夫か。


「今日はもう終わり?」


『本当はもっとしたいのですが、今の介様の体ではこれくらいが限界かと』


「それ、筋肉痛がーとかの意味?」


『いえ、そういう意味ではないです』


 どういう意味かと首を捻ると、リードさんは僕が聞き出さずとも応えてくれた。


『介様の体、あまり免疫系が強くないですよね。それに無理もできない体ですし』


「……まあ、そういう時期もあったよ」


 中学二年の冬頃まで僕の体は弱かった。医者からはずっと免疫系が弱いと診断されていた。


 よく病気にはかかってたから、小さい時から休みがちだったし、登校しても体育の授業とか休み時間に外で暴れまわったりすることもできなかった。


 そんな僕の支えが、家族だった。


 両親はベッドで寝てる僕に笑って話しかけてくれるし、楓もよく体のことを気にかけてくれた。今でもその癖なのか、僕の身の回りを案じてくれる。


 もちろん、時々迷惑をかけることもあった。


 せっかく旅行の日程を組んでくれたのに前日になって病気を患ってしまい、家族の楽しみを奪ってしまったことは未だに忘れられない、苦い思い出。


「でも、今はもう大丈夫なんだ。ちょっと遅い成長期に入って、高校生になってからはんだり胸焼けしたりしなくなったし。今は普通に持久走とかも走れてる」


 ある程度丈夫な体になって、自分でできることは人並みにやれるようになったし、迷惑をかけた分はすぐにでも返したいと思ってる。


「ていうか、思ったんだけど……その情報はどこから手に入れたの?」


『介様の体の中を動き回ってですね』


「……え?」


 僕は今、リードさんが何を言ったのか全く分からなかった。いや、言葉自体は聞き取ることができている。


 今、リードさん……体の中、って言ったよね? 


「リードさん、って……ずっと僕の脳に留まってるんじゃないの?」


『ほとんどはそうです。しかし、どうやら神経細胞があるところならどこにでも移動できるみたいなので、昨夜介様が気絶された後、体の中に巡らされた神経系を伝って移動し、介様の体の状態を把握しておいたのです。今朝も気絶された後、体の状態を確認するために体の中を診ていました』


「……あぁ……………………そうなんだ」


 なんだろう……プライバシーというか、なんというか……。


 おそらくこの言語化しづらい……いや、安易に口には出せない気持ち、リードさんに対しては絶対思ってはいけないことを僕は思ってしまった。


 ……気持ちが悪い、と。


『それと、言い忘れていたのですが……』


 ふと、リードさんは何か思い出した様子で切り出す。


『私は基本、〈透視の力〉を常に発動してます。介様が呼吸をしてるのと同様に。そして私は、介様の思考をこの力で読むことができます』


「あー……そうなんだ」


 本当なら、僕はその話を聞いてものすごく恥ずかしい気持ちになるのだと思う。自分が口にしてないことを他人に知られるのは普通に嫌だし。


 だけどさっきの話のインパクトが僕的に凄すぎて、リアクションどころかリードさんの話が頭に入ってこなかった。


 でも、いやまあ……僕の頭の中にいるって言ってたし……リードさんの力ならおかしくはないか……とは、思った。


「てことは……僕が考えてることとか、全部もう分かってるってこと?」


『……まあ、そういうことですね』


 今、答えるまでのちょっとした間がすごい気になったんだけど……。


「じゃあ常に僕の頭の中、覗いてるってこと?」


『いえ、そういうわけではありません。時たますれ違う人の思考を読んだりもしてるので』


「え、なんで?」


『相手の分体が隠れている場合があるからです』


「あー……」


 常に自分の周りを警戒してもらえてるというのは正直ありがたいことだ。


「というか……分体って、本体と一緒にいるんじゃないの? メイドというか執事みたいな」


『……だと、良いんですけどね』


 こういうはっきり事を口にしないのは、情報量が多いからという配慮なのだろうか。


 まあ捉え方はいろいろできる。リードさん自身が把握してない場合もあったりするだろう。


 それこそ、さっき話した僕とリードさんが同時に体を動かした時のこととか、リードさんも知らなかったみたいだったし。彼女でも断言できない事はあるわけだ。


「でも分体の髪色ってさ、相手本体の目と同じ……だよね」


 昨夜も今回も、おそらく分体が入っているであろう人達は皆、髪が灰緑色に染まってることには気付いていた。


 本体と分体の唯一の違いは瞳の色が灰緑色か否かで、あとこれはまだ確信を持てないけど……会話ができるか否か。


『まあ、そうですね。だとしても、髪を染めていたり帽子を被ってたりしていれば、見分けが付かないので。念には念をということです』


「そっか」


 確かに、この公園内を走ってる人の中にも時々帽子を被ってる方がいるのを見掛ける。


 髪を染めてるかどうかはあまり分からないが、年配の人達が多いのを見ると、白髪染めしてたり、時には派手な色にしてる人も見る。


 それに、思い返せば相手は、どこからともなくやってきた。特に昨夜の戦闘はそうだ。気付けば相手の足が目前にあった。


 でも、あの閑静な住宅街の道であそこまで近付かれて足音が聞こえないなんてこと……いや、よく思ったらあの時の僕、楓がいきなり倒れてパニックになってたか……。


『とりあえず、ここで何度も人とすれ違って、脳内を透かして見ましたが、相手の影はありませんでした。今日は安心できると思います』


「……なら、いいけど……」


 今日と言わず、できれば明日も明後日も、ずっと普通に暮らしていきたいよ。


『それじゃあ、帰りは走って帰りましょう』


「え、まだ走るの!?」


『あと、帰ってからはタンパク質を取ってください。筋肉をつけるためにも』


「えぇ……こんな筋肉痛の状態で、料理も?」


『もちろん、食事の仕方もある程度見直していきます。とりあえず、四十五分以内にタンパク質を取ってくださいね。サラダチキンがオススメです』


「え、今からってこと!?」


『はい、そうです。さあ、走ってください。時間がないですよ』


「せ、せわしない!」

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