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EPILOGUE

その後、マリトたちは到着した警備隊本隊によって保護され、魔法学園内の救護室へと搬送された。

思いのほか重傷で、本来であれば病院に逆戻りするところだったが、部外者の侵入が難しい学園内で治療を受ける方が安全だと判断された。

学園内の設備はソンリーチャの付属病院ほどは整っていないが、学園内の試合での事故や怪我は珍しくないため、必要な医療機材は一通り揃っている。

運び込まれてからの三日間、マリトたちは救護室で、身動きのできない寝たきりの状態が続いた。


ラミーシャの身体は、長期間の常時発動魔法によって、筋肉と骨格の強化がなされていたが、落下の衝撃はそれを上回るものだった。

腰椎圧迫骨折、椎間板損傷、股関節脱臼、大腿骨ひび、筋膜断裂――。

延々と続く医師からの診断結果に、マリトは激痛を必死にこらえながらも、笑いがこみ上げてきた。

「生きていること自体が奇跡」「立っていられた理由は医学的に説明不能」とまで言われた。


いくつかの幸運が重なったことは確かなようだ。

まず、意識を奪った薬物は、元々は一時的な筋力増強のためのドーピング目的で開発されたものだが、意識障害の副作用が出ることから使用中止になったものだ。

それを元に、副作用を主作用に転用したものが今回使われた薬であり、そのため逆に副作用として一時的に筋力が増強されたらしい。

ラミーシャが「ムキムキになった」と言っていたのはそのことだったようだ。


もうひとつは、侵入者たちが陣を貼っていた平原は、かつて浅い湖だったところに、森林土砂が流れ込んで形成された地形であったため、着地の際に衝撃吸収材のような役割を果たしたと考えられた。

しかし、「二度とこんな無茶をするな」――そう医師からも教師からも釘を刺された。


そう言われても他にどんな方法があったというのか、マリトには思いつかない。

あのまま炎上する飛行船に乗っていれば、山中に墜落していたのは確実だ。

今から思い返しても、ラミーシャのあの瞬間の判断は適切だったとしか思えない。

むしろ、あの高さから躊躇なく飛び降りたラミーシャの胆力に、マリトは敬意を抱く。


銃で腹部を撃たれたケイは、ソンリーチャの病院に搬送され、緊急手術の結果、一命をとりとめた。

ラミーシャの下に賢者が召喚されたことは、今回の事件に巻き込まれたアランやケイには知らされ、秘密を守るための協力が要請された。

警備隊と御者には誘拐事件についての箝口令が敷かれた。

学生を含めた一般人に対しては「空隙震による落石事故」という説明がされた。


炎上して山中に墜落した飛行船の残骸からは、乗組員と思われる遺体が発見された。

しかし、マリトたちを誘拐した二名の姿はその中にはなかった。



寝たきりのラミーシャの病室には、ひっきりなしに学生がお見舞いに訪れた。

負傷の回復は、驚くべき速さで進んだ。

常時発動の水属性魔法による治療補助効果があるからだという。

その後の七日間のリハビリの結果、松葉杖を使えばひとりで歩けるまでに回復した。

そして、ようやく自分の部屋に戻ることができた。


学園の学生寮で、シノハがルームメイトだ。

彼女はラミーシャの回復を心から喜び、マリトのボルディアへの来訪を歓迎してくれた。

翌日からは、朝礼で倒れて病院に運ばれて以来ずっと休んでいた学園への復帰が認められた。


異世界に来て十日。

この間のラミーシャの協力を得て、マリトは少しずつ身体を自分の意思で動かせるようになってきた。

まだ、会話はできないが、声を発することはできるようになっている。


マリトにとって、依然として多くの謎が残されたままだ。

元の世界とこの世界との関係は何か。

魔法と科学技術の類似点、日本語の存在、ビッグサイトに酷似した建造物。

おそらく、それらは理事長の中に召喚されていた初代賢者の関与によるものだろう。

しかし、笑う月、空隙震、森に住むエビなど、それだけでは説明付かない事象も多い。


何より、ここに来る前に起きた事件と現在の状況との関連はあるのか。

後輩のコリーンはどうなったのか。

元の世界に戻る方法はあるのか。

――疑問は尽きない。


一方で、これから始まる異世界での新しい学園生活に、不安も感じつつも、ワクワクする気持ちが抑えきれない。

魔法学園は、生徒の年齢層を考えると、日本の中高一貫の学校に近い。

制服も酷似している。

高校を卒業してから、もう十年近くが過ぎた。

高校時代こそが心を大きく成長させる特別な時間だったと、社会に出た今は思う。


再び訪れる高校生活――それも、異世界の学園だ。

魔法の授業はどんなものなのか。

実技はどのように行われるのか。

ラミーシャと気持ちを共有しながら過ごす日々は、みずみずしい経験と出会いの詰まったものになるだろう――。

そんな予感がする。


#STATUS: PROJECT CURRENT PHASE TERMINATED. PROCEEDING TO THE NEXT PHASE.

第1章である【PhaseⅠ:金縛りから始まる異世界バディ】はこれで完結です。長い出会いの一日が終わりました。ここまで、付き合ってくださってありがとうございました。


続く【PhaseⅢ:異世界の学園で学ぶ地味すぎる魔法】 で、いよいよ魔法学園での生活が始まります。スタートまでしばらくお待ちください。

その前に前日譚にあたる【PhaseⅡ:天才後輩と迎える前世最期の日】について、内容はほぼ揃っているので、前後関係などを整理して完結させます。


引き続き、応援いただけるようでしたら、ぜひ「いいね」をお願いいたします。

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