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ショートショート集・2

このダンジョンに入った者たちは

作者: 青樹空良
掲載日:2025/04/10

 深呼吸して息を整える。

 よし、大丈夫。

 ここからは小走りで。

 ノックもしないで、私は勢いよくドアを開けた。


「聞いて! すっごい情報つかんじゃった!」

「おわっ!」


 ベッドに腰掛けて仕事道具の手入れをしていたらしいテオが驚いてこっちを見る。


「っちょ! エレノア! ノックしろって、いつも言ってるだろ」

「そっちだって、鍵くらい掛けなさいっていつも言ってるでしょ? 全く、不用心なんだから。貴重品の管理を任されてる私の身にもなってよねっ」


 私はやれやれとため息を吐いた。こういうところは本気で呆れてしまう。

 けど、また高圧的な口調になってしまった。嫌われていないだろうか?


「で、なんだよ。情報って」


 心配したけど、テオはなんでもないように言った。

 ほっとして、私は部屋のドアを閉める。


「そうそう! こんなこと言ってる場合じゃなかったんだった。聞いてよ!」


 私はテオの近くに腰を掛けた。ぽふん、とベッドが揺れる。

 テオは微動だにしない。


「この街の近くのダンジョンにすっごいお宝があるって聞いたの」

「こんなところにか?」

「そうなの! あまり噂にもなってないようなところらしくてね。まだお宝が残ってる可能性が高いってわけ」

「へー、相変わらずエレノアはスゲーな」

「スゲーなじゃないでしょ。情報収集は私に任せっぱなしなんだから。それでもトレジャーハンターなの? 私と組む前はどうやって生きてたのよ?」

「いいだろ。今はエレノアがいるんだから、困ってないわけだし」


 にっ、とテオが笑う。その顔が子どもっぽくて可愛い。


「そ、そう? それならいいんだけど。感謝しなさいよねっ!」


 ふん、と私は鼻を鳴らしてそっぽを向いた。唐突にそういう顔をするから困る。


「じゃあ、明日そこに行くってことでいい?」

「エレノアが調べてくれたなら大丈夫だろ」


 私の言葉にテオが頷いた。

 私は心の中でガッツポーズする。これで第一関門クリアだ。


「夜更かししないでちゃんと寝なさいよ」

「わかってる。おやすみ」

「おやすみ」


 私はテオの部屋を出る。そして、ため息を吐く。

 トレジャーハンターとして組んだ私とテオが二人で旅を始めてから、一年近く経つ。それなのに、未だに宿屋で同じ部屋に泊まったことがない。お金がもったいないからとか、それとなく一部屋でいいとか言ったことはある。それでも、テオが俺が出すからとかなんとか言ってなかなかなし崩しになんてことにはならない。

 抜けているようでいて、しっかりしているというかなんというか……。

 つまり、なかなか関係が進展しないってことだ。

 アイツは、この私の気持ちに全く気付いてないってこと!




 ◇ ◇ ◇




「意外と楽勝じゃないか? ここ」


 隣を歩いているテオが呟く。


「しかも、なんだこれ。ヒカリゴケか? 妙に明るくて進みやすいんだが」


 テオの言うとおり、さっきからダンジョンの中は歩きやすい道が続いている。しかも、謎の照明があって明るい。それもそのはず……。


「そう? あんたがぼんやりしてるからそう思うだけじゃないの?」


 私はごまかすように言ってみる。ここで気付かれて引き返されるわけにはいかない。


「きゃ!」

「そこ危ないぞ。岩が突き出てる」


 前を見ずに歩いていた私の肩を急に抱いて、テオが岩から私を守ってくれた。

 ちなみに今の悲鳴は岩じゃなくてテオに密着してびっくりしただけだ。


「くうう」

「どうした?」


 テオが私の顔をのぞいてくる。


「なんでもないっ!」


 薄暗いダンジョンの中にいるせいで顔がよく見えなくて良かった。急に接近されたせいで顔が真っ赤になってしまっている。

 普段ぼんやりしているくせに、こういうところでいきなり優しいし、頼りになるとかずるい! 最初はただのパートナーだと思っていたのに、こんなの好きになってしまうに決まってる!


「それにしても、今の岩。唐突に突き出てなかったか? ここまで結構歩きやすかったのに」


 テオが振り返って首をひねる。

 言われてみれば、確かに。


「本当にこんなところにお宝があるのか? どう見たってただの洞窟なんだが。道も一本道だし、もう誰かがお宝なんて持って行ってるんじゃないかなぁ」

「なに言ってんの! この私のことを信じられないって言うの?」

「いや、エレノアの集めてくる情報はいつも正確だしな。でもなぁ、今回は……。でも、こういうところにこそ、みんなが見落としてるお宝があるかもだしな。うん」

「そうよ!」


 なんとか納得してくれたらしい。そうでないと困る。

 ずんずんと歩き出した私だったが。


「きゃぁっ!」


 今度は道の真ん中にわかりやすくでっぱりがあったにもかかわらず、気付かずにつまづいてしまった。不注意にもほどがある。いつもならダンジョンの中ではちゃんと注意して歩いている私だが、今回はいつもと違う目的があるせいで気持ちが焦っているみたいだ。

 さすがにこんなところで怪我をしたら足手まといになってしまう。

 だが、私が転ぶことはなかった。


「エレノアっ!」


 さっとテオが抱き留めてくれたからだ。


「……っ!」


 私は言葉を失う。


「しっかりしてくれよ。今日のエレノア、変だぞ?」

「うう」


 また近い。

 これも、このダンジョンのせいなの?


「それに、やっぱりこのダンジョンおかしくないか?」


 テオが私から体を離しながら言う。


「入ったときから思ってたんだが、あまりにも整備されすぎてる気がするんだ。それに、モンスターの気配もない。これは……」


 テオが考え込むようにしている。

 やばい。何か気付かれてしまったかもしれない。

 が、


「もしかして、俺たちを誘い込もうとしてるんじゃないか? わざと入りやすくしておいて、奥に行くととんでもないトラップがあったりするかもしれないぞ。それで、誰もこの先に行かないんじゃないか? 俺たちも進むと危ないかもしれない。今日のところは引き返さないか?」

「嫌!」


 私は思わず叫んでいた。

 テオがびっくりしたような顔をしている。

 それはそうだ。危なかったらすぐに引く。それが二人で組んでからの暗黙の了解のようなものだった。だからこそ、これまでやってこれたというのもある。

 それなのに、私はそれを破ってしまった。

 もしかしたら、コンビを解消されてしまうかもしれない。

 それなのに、


「エレノアがそこまで言うなら……、行こう」

「え? いいの?」

「俺はエレノアを信じるよ」

「テオ……」


 私を後ろに守るようにしてテオが歩き出す。

 その背中が頼もしい。




 ◇ ◇ ◇




 ダンジョンを進む私たちの前に、なんだか怪しい扉が現れた。


「なんだ? ここ?」

「さあ」


 私も首をひねる。こんなの聞いてない。

 そもそも私は、そういうダンジョンがあると聞いただけで中になにがあるかまでは知らない。


「けど、他に道は……、無さそうだな」

「そうね」


 周りを見渡してみても、ここが突き当たりみたいだ。


「進むには、ここを開けるしかないみたいね」

「いやいやいや、どう見たって罠だろ。こんなダンジョンに扉なんて普通あるか?」


 そう言われてしまえば、反論も出来ない。が、


「さっき私を信じるって言ってくれたでしょ!? あの言葉は嘘だったとでも言うの?」


 ここまで来て引き下がるわけにはいかない。

 こんなチャンス、今度はいつあるかわからないんだから!


「そうは言ってもな、エレノアを危険に晒すわけにはいかないだろ。エレノアがどうしてもって言うなら、俺だけ行ってみるよ」

「……テオ」


 なんだかいつもよりも雰囲気がいい気がする。

 それならもう、突き進むしかない!


「私だって、テオだけ危険な目に遭わせるわけにはいかないんだからねっ! 二人で一緒に行きましょう」

「エレノア……。ああ、そうだな。こんなところにエレノア一人置いていくわけにはいかないしな。けどな、危なかったらすぐに逃げるんだぞ」

「わかってる」


 この先に何があるのか知らない。

 だけど、どうしても私は先に進まなければいけない。このダンジョンの最奥に。

 テオがドアノブに手を掛ける。ドアをゆっくりと開ける。

 ドアの向こうは暗くて、何があるのかわからない。この先にはヒカリゴケみたいなものは無いらしい。

 私はテオと顔を見合わせる。テオが私の手を握った。

 そして、部屋の中へと足を踏み入れる。

 その瞬間。


「しまった!」


 多分違う意味で言ってるんだろうけど、テオが叫んだ。

 部屋のドアが勝手に閉まったのだ。


「……!?」


 私も驚いた。

 暗闇でテオが見えない。


「大丈夫か! エレノア!」


 テオが叫んだときだった。突然周りが明るくなった。


「なんだ? ここ」


 テオが声を上げた。

 私も同じ気持ちだった。


「部屋?」


 テオの言うとおり、部屋だった。

 四角くてなにも無い。でも、洞窟の一部なんかには見えない。本当にただの、白い部屋。


「開かない!?」


 私が部屋の中を見回しているうちに、テオがドアノブをがちゃがちゃと鳴らしていた。


「鍵? 誰が? エレノア、俺から離れるなよ?」


 テオが私の手をつかんで引き寄せる。

 ドアノブから手を離して、テオは周りを警戒している。

 私はと言うと、そこまで警戒はしていない。

 だって、ここは………。


「エレノア? 大丈夫か?」


 私は頷く。


「そうか? 恐怖のあまり固まってないか? いつもならこういうとき、ヒステリーみたいになって騒ぐだろ?」

「なによ、それ!」


 ヒステリーとか言い方が酷い。

 確かにそうかもしれないけど!


「いや、大丈夫ならいいんだ」


 こんなところで私の機嫌を損ねないようにか、テオが焦ったような笑いを浮かべた。

 私が落ち着いているのには訳がある。だって、私はここがなんなのか知っている。知っていてテオを連れてきた。

 もちろん、危険なんか絶対無い。その代わり、お宝があるっていうのも嘘なんだけど。

 でも、実際どんなものが待ち受けているかは知らない。情報屋はそこまで教えてくれなかった。

 ここでなにが起こるのは私にもわからない。なんて思っていたら、ドアの上にとんでもないことが書かれているのを発見した。

 テオはまだ気付いてないみたいだ。

 あんなのをテオが見たら、見たら……。


「ん? どうしたんだ?」


 私が何かを見ていることに気付かれてしまった。


「なななな、なんでもないっ!」

「なんでもないってことないだろ。ここから出られるヒントがあるなら……」


 言いかけたテオが、私の視線のさっきにある文字に気付いて固まった。


「な、な、な……」


 テオは言葉にならない声を上げる。


「キスをしないと出られない部屋!?」


 思わず、といった様子でテオが大声で叫ぶ。

 私はへなへなと崩れ落ちた。


「なんだよ、それー!」


 私だって叫びたい。


「いやいやいや、どんな部屋だよ……。ありえないだろ。どこかから出口があるはずだ」


 そう言って、テオは部屋の中をぐるぐると調べている。

 私の頭はパニックになっていた。


「エレノア」


 テオが近付いてくる。

 え、まさか、本当にキスするつもりなんじゃ……。

 待って待って待って!


「このダンジョンにあるお宝ってなんなんだ? なにか聞いてるんだろ? 街の近くにあって、まだ残ってるってことは相当ヤバいんじゃないのか? それか、何か騙されて……!?」


 テオが私の肩を持って、ゆさゆさと揺する。

 それから急に真顔になった。


「……それとも、本当にキスをしたら出られるのか? いや、まさかそんなダンジョンがあるわけ……。俺が知らないだけで、そういう仕掛けも、あるのか? まさか……?」


 テオは真剣な顔をして再びドアへと向き直る。

 全然、キスとか関係なかった。

 ちょっと残念な気分になるのはどうしてだろう。


「絶対おかしいだろ……、こんなの」


 ぶつぶつ言いながらテオはまだ未練がましくドアノブをいじり倒している。

 そんなことしたって、ここからは出られないのに。

 キスしないと出られないのに!

 少し期待してしまっただけに段々恥ずかしさを通り越してイライラしてきた。


「ちょっとテオ! この部屋はキスしないと出られな……」


 私が言いかけたときだった。


「よし、開いたぞっ!」

「は?」


 確かに鍵が開く音がした。

 さすが私のパートナーをやっているだけある。

 トレジャーハンターとしてはかなりの腕だ。

 ドアが開く。


「さ、出られるぞ」

「テオ、すごい! じゃなくてっ!」


 なんで、簡単に開いちゃうわけ?

 ここの管理どうなってるの!?

 私のテオがすごいだけ!?


「おーい、エレノア?」


 ぷるぷると震えている私の顔の前でテオが手のひらをひらひらさせている。


「大丈夫か?」


 こんなときでも私のことを心配してくれているのは嬉しいけど、だけど、だけど。


「テオのバカー! そんなに私とキスしたくなかったの!?」

「は? え、ええと、そういうわけじゃ……」


 私の叫びにテオが急におろおろしている。


「どうしたんだ? 急に、出られてよかったじゃないか。キスなんてしなくてもよかったじゃないか。それとも、まさか、エレノア、俺と………」

「ばかっ!」

「そうだよな。あ、そうか、お宝だな。書いてあるとおりにしたらお宝が出てくる可能性もあったかもしれないもんな」


 あまりの鈍感っぷりにさすがに呆れてくる。


「お宝なんてどうでもいいのっ!」

「は!?」

「だって、ここは……」

「ここは?」


 ずいっとテオが身を乗り出してくる。


「二人で入ると両思いになれるって言われてるダンジョンなの! でも、私も中がどうなってるかとかしらなくて! こんな部屋があるとか聞いてなかったから!!」


 もう、やけくそになって叫ぶ。

 テオの顔を見るのが怖い。きっと呆れて……。


「はぁ」


 やっぱりため息を吐いている。

 沈黙。

 何か言って欲しい。

 この間が辛すぎる。

 呆れたなら呆れたと、このままコンビ解消したいならしたいと、今すぐ言って欲しい。

 こんなの、私がバカみたいじゃない!?

沈黙を破るように、テオはふるふると首を振りながら言った。


「そんなことしなくてもよかったのに」


 やれやれといった様子で言われてカチンときた。


「なによ、その態度! この私がわざわざこんなことまでしたのに、なんなの!? 私がこんなことして、おかしいとでも言うの!? 馬鹿みたいって笑おうとでもいうの?」


 頭に血が上る。

 もうヤケクソだ。

 あああ、せっかく両思いになれるダンジョンに二人で来ることが出来たのに。こんな鈍感男との仲が進展するなんて、もうこれくらいしか手段がないと思っていたのに。

 もうおしまいだ。

 私ってホント、バカ。

 ここでキレてどうするの。

 本当は素直になりたいだけなのに。

 いつも素直になれない私だから、本当かどうかわからないってわかっててもこんなところに誘ったのに。


「もう帰るっ!」

「エレノア!」


 走り去ろうとした私の手をテオがつかむ。


「何!?」


 思わず振り向いた私の目の前にあったのは、


「俺と結婚してください!」

「ふ、ふぇっ」


 私に向かって指輪を差し出しているテオだった。


「え、えええええええ、どういうこと……?」

「それを聞きたいのはこっちのほうだって! さっきも言っただろ? そんなことしなくてもよかったのにって」


 私たちは顔を見合わせる。


「今回の仕事が上手くいったらプロポーズするつもりだったんだ。それなのになんか変なダンジョンだしさ。困ってたんだよ」

「ぷぷぷ、プロポーズ……?」

「付き合ってください、でもよかったんだけど、どうせならずっと一緒にいたいだろ? エレノア、俺の気持ちに全く気付いてないみたいだったし、これくらいした方がいいかと思ってさ」

「はぁ? それはこっちの台詞でしょ! テオが全然私の気持ちに気付かないみたいだから、こんなダンジョンの力を借りようと思ったのに!」

「……エレノア。そんなに俺のことを……」


 テオが私のことをじっとみつめる。


「なによ……」


 なんだか、いい雰囲気。

 こんなことになるとは思わなかったけど……、本当にこのダンジョン、御利益があるみたい。

 絶対にこの男と進展することなんてないと思ってたから。

 なんて思っていたら、


「おめでとうございます! まさか、ドアを自力で開ける方がいるなんて驚きました! こんなの初めてですよー」


 祝福の声と拍手とともに、ダンジョンの入り口の方から係員さんらしき人が歩いてきた。

 え、係員さんがいるってことは、まさか今までのやりとりって全部見られてたの?

 めちゃくちゃ恥ずかしいんですけど。

 だというのに、テオは全く気にしていないみたいで、


「ありがとうございます。俺たち結婚します」


 なんて、照れくさそうに笑いながら答えている。

 そして、


「な、エレノア」


 私の手を握る。

 ああ、もう!

 いきなり結婚なんてそこまで考えてなかったんだけど!


「しょうがないわね。結婚、……してあげるわよ」


 小さく言いながらそっぽを向くと、


「きゃ!」


 急にテオが私をお姫様抱っこした。

 そして、走り出す。


「じゃあ、俺たち教会に急ぎますので! ありがとうございましたー!」

「あ、ちょっと待ってください! せっかくカップル成立したので記念の写真を!! それに、あのドアを自力で開けた前例なんてないので新しい事例として宣伝に使いたいんですがー!」


 後ろから係員さんの声が追いかけてくる。

 宣伝に使われる!?

 そんなの、絶対にやめて欲しい!

 これは、逃げるしかない。


「テオ! 急いで!」

「そうか! エレノアもすぐに結婚式挙げたいんだな! 俺もだよ!」

「ち、ちがっ……!」

「……そうか。やっぱり俺なんかと結婚するのは嫌、だよな……」

「だから、それも違うって!」


 単純に写真なんか撮られるのが恥ずかしかっただけなんだけど……。


「あ、もしかして、トイレか! それなら尚更急がなきゃな!」

「………ばかっ!」


 もはや否定する気にもなれない。

 なんで、こんなデリカシーのない男を好きになってしまったんだろう。

 だけど、


「さっきエレノア、お宝なんかないって言ってたよな」

「そうね」

「あったよ」

「は?」

「お宝はあった」

「どこによ」

「ここだよ」


 怪訝そうな私にテオははっきりと答える。


「エレノアが俺にとってのお宝だってこと」

「バカ!」

「なんだよ、いい台詞だと思ったのに」

「ほんと、バカじゃないの? もう!」


 全く、ストレートすぎて恥ずかしいけど……。

 やっぱり私は、こういうテオが好きみたい。


「ほら、そんなこと言ってないで急ぎなさいよ」


 私はそう言って、テオにぎゅっと抱きついたのだった。

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― 新着の感想 ―
テオに好意を持つエレノアの乙女心が丁寧に描かれており、素直になれず、つい虚勢を張った物言いや態度をしてしまい、心の中で反省するエレノアが可愛かったです。 それとなく気持ちを伝えてもテオの鈍さはそれらを…
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