表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空耳草紙  作者: 冬木洋子
1/5

 耳が悪いのか、頭が悪いのか、はたまた注意力散漫でいつもボ-ッとしているからか、そのうえトンチンカンな性格で思考回路が少々世間様とズレているせいか、私は、よく聞き間違いをします。


 しかも、普通なら、何か意味不明の言葉を聞いたと思ったら、それはきっと聞き間違いだろうと思って、話の脈絡からもとの語を推定するのでしょうが、私は頭の回転がトロい上に粗忽者なので、「……!?」と思ったとたん、それを口に出してしまいます。


 物忘れがいい私は、自分がしたすっとんきょうな聞き違いも、しばらくするとほとんど忘れてしまうのですが、たまたま覚えているのでは、たとえば、『ロマノフ家』→『山梨県』、『いちご食べる?』→『銭形平次?』などがあります。


 あと、私は、昔、図書館司書をしていたのですが、少し言葉になまりがある年配の利用者の方に「『モンテクリスト伯』はどこですか?」ときかれて、「は? 『持って来る一箱』ですか?」と言ってしまったことがあります。一生の不覚です。


 先日、実家に行った時、夫が母に、「今日はひどい筋肉痛になってしまって、明日は動けなくなって寝込んでしまうかもしれない」という話をしているのを、台所で梨をむきながら背中で聞いていると、母が突然、『妖怪ご老人』という謎の言葉を発するではありませんか。


 もちろん私は、すぐ「『妖怪ご老人』って、なに??」と聞きましたが、実は母は、「まるで、要介護老人だね」と言って夫をからかっていたのでした。私は、ふたりに背中を向けていたので、話がよく聞こえていなかったのです。


 それにしても、妖怪『ご老人』って、どんな妖怪でしょう……。


……というわけで、私や家族、友人の、いろいろな間違い、勘違いの話をてんこ盛りしてみようと思います。


★ 


 中学生のころ、友人が、国語の時間に本読みを当てられて、『新潟大人文学部にいがただい・じんぶんがくぶ』を『新潟オトナ文学部』と読んでしまいました(ちなみに、今、その言葉をワープロで一気に変換したら、『新潟大臣文学部』と出ました)。




 夫は、つい最近まで、音楽用語の『ア・カペラ』のことを、赤いペラペラのレコ-ド、すなわち『ソノシ-ト』のことだと思っていました。



 私は、『しかつめらしい』という言葉を、ずっと『しかめつらしい』だと信じていました。でも、『しかつめらしい顔』って、要するに『しかめっ面』ですよね。



 夫と一緒に、テレビのグルメ番組を見ていた時のこと。

 画面には、『チャンコ鍋(おじや、デザ-ト付き)』というテロップが出ていました。それを見た夫の言葉。

「ああ、びっくりした。『おやじ、デザ-ト付き』って何かと思った」



 近所の道を車で走っていると、沿道に、白地に黒で『大骨壺祭』と大書きされたノボリがずらりと立っていました。

「へえ~、最近はお葬式に対する意識が変わったというけれど、とうとう、こんなふうに華々しく骨壺の展示会が開かれるようになったのか。でも、さすがに普通の大売り出しみたいな紅白のノボリじゃなくて、やっぱり白黒なんだなあ」と、感心して眺めていたら、実は、『骨壺』ではなく、『大骨董こっとう祭』でした。



 学生時代の友人で、『烏賊』(イカ)という字を『からすてんぐ』と読んだ人がいます。『カラスで、海賊とか山賊のように暴れそうだから』という発想だそうですが、なかなかのセンスだと思います。



 小雨の朝の、夫と私との会話です。

夫:「今日、ずっと雨?」

私:「えっ? インスタントラ-メン?」

夫:「違うよ、『じいさんと雨』なんて誰も言ってないよ!」


私(子供の熱を計って)「七度七分」

夫「えっ、『なるほど・ザ・ワ-ルド』?」

私「えっ、『まるごとドナルド』って、何?」

(マックの新メニュ-かなあ?)


★ 


夫「今日、電車の中で、女子高生が隣に座っててさ……」

私「えっ!? 女子高生が棚に座ってた? 棚って、あの、網棚?」

(いくらオテンバさんだって、それはちょっと無理でしょう) 



私「あ、キンモクセイの匂いだ」

夫「なに? 中学生の匂い??」

(あまりいい匂いじゃなさそうですよね)



 夫と一緒に酒屋さんに行きました。

 その日の安売り目玉商品は『フランス・マスネ社のフル-ツ・ブランディ』でした。

 それを見た夫が、妙に不思議がるので何が不思議なのかと思ったら、

「なんで、フランスの会社が『マスナガ』なの?」と。

(いったい何の話?)と思ったら、手書きの看板の『マスネ』というカタカナが、夫には『マス永』に見えたらしいです。



 通販カタログ『フェリシモ』でお皿を買いました。

 それが宅急便で届いた日の会話。

夫「見た? 『フェリシモ』のお皿」

私「えっ? 『テラシマ・ノリオ』って、誰?」


 先日、新聞を読んでいると、社会面に、『店に入ったら突然男に』という見出しがありました。

 私は、とっさに、『(女の人が)店に入ったら突然男に(なってしまった)』という記事かと思って、すごくびっくりしました。

 読んでみると、なんのことはない、『店に入っていったら中に強盗がいて、その男に、突然、刃物で襲われた』というような記事でした。

 でも、この見出しって、絶対、ヘンですよねえ。



 昔、夫とドライブしていた時のことです。

 信号待ちをしていて、信号が青に変わっても夫が気がつかなかったので、教えてあげようと「青」と言うと、夫は、信じられないという顔で私を見て、「えっ? アホ?」と。

 また、細い道から国道に入ったら混んでいたので、私が、「混んでる」というと、また血相を変えて、「何ィ、このデブ?」と。

 これは結婚前のデ-トの時のことですが、このような数々の誤解にも引き裂かれることなく、私たちは、このとおり無事に結婚しました。

 その結果が、この勘違い一家というわけです(^_^;)



私「それ、いつも持ってるの?」

夫「わりといつも常備してるよ」

私「えっ、ワルプルギスの夜?」



私「なんだかんだ言っても、やっぱり公務員は強いよね」

夫「えっ、ゴブリンは強い?」

(ゲ-ムの話だと思ったのかな)



夫「より刺激の強いものを……」

私「えっ、森繁君の、何?」

(ちなみに、別に私たちに森繁君などという知人はいません)



夫「今日は、なるべく早く寝るようにしましょう」

私「えっ、行川なめがわアイランドのショ-?」



夫(息子のおもちゃで遊びながら)「カメックス、行けえ!」

私「えっ、ため息吸うと池?」

(意味不明だけど、そう聞こえちゃったんです)

夫「えっ、カメ・エキスと何だって?」

(以前、一緒に行った『千葉県民の日・県民フェスティバル』で、『カメ・エキス入りカメ・ゼリ-』という不思議な出品物を見たことがあるのです)



私「生活パタ-ンが変わると着なくなる服ってあるよね」

夫「えっ、ヒレカツとパンが変わる?」



私「『アタックNo.1』の歌が……」

夫「えっ、『叩くな、ババア』?」



 クリスマスの日、鶏の骨付きモモを焼いて出すと、息子が、嬉しそうに叫びました。、

「あっ!もしかして、これ、ハチメンチョウ!?」

 『七面鳥』といいたかったらしいです。



 テレビで駅伝の中継を見ていると、解説の人が、「やはり、先導のバイクは、花柄ですね」と言ったので、「えっ、どこが?」と、慌てて見たけど、ごく普通のバイクでした。どうやら、「花形」と言ったらしいです。



 すごく古いネタですが……。

 昔、妹が、私に尋きました。

「ねえ、薬師丸ひろ子がでてる映画で、ほら、何て言ったっけ、『起承転結』?」

……どうやら、『魔界転生』のことだったようです。



 これも妹の話です。一時期、わが実家では、トランプの『大貧民』が盛んでした。

 ある時、妹は、その名前をど忘れして、

「『貧乏神』、やろう!」と言いました。

 また、このゲ-ムには、弱い札が強くなり強い札が弱くなる『革命』というル-ルがありますが、妹は、それをやろうとして、その名前が思い出せず、

「えっと、ほら、『価値観の転換』……じゃなくって……『意識調査』!」と叫びました。



 夫が息子に絵本を読んでやっていました。川でおぼれそうになった女の子が犬に助けられるシ-ンで、「もくず(藻屑)になる身を助けられました」というのを、夫は、「モズクになる身を……」と読んでしまいました。しかも、私に指摘されるまで、自分の言い間違いに気づきませんでした。

 ところで、モズクって食べ物、知ってます?



 夫が職場の休憩室でお弁当を食べていると、後から入ってきた人が、

「あっ、ウツケ者の匂いがする!」と叫びました。

 夫はとっさに「えっ、俺のこと?」と思って驚いたら、「お漬物の匂い」だったのでした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ