第1話ラブフェニックス、嘘偽りない愛、その代わり地獄
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愛は不死鳥のように儚く…
不死鳥はあんまり…儚くないと思う…
死なないし…
街を破壊するし…
嗚呼、この街も不死鳥に焼かれてしまうのか…
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いつものように授業の終わりを示すチャイムが鳴り、いつものように教室を去る。今俺が向かっているのは家…ではなく我が丸罰高校図書室である。今日は受付当番の日だからである。委員決めのじゃんけんに惜敗し、泣く泣く図書委員の一人になった。最初の方はすごく嫌で、早く帰りたいとぶつぶつ呟いていたのだが…
「あ、飛騨君。ど、どうもです…」
俺はおんなじクラスの図書委員、倉井さんに恋をしてしまった。
「今日もよ、よろシク戦争…」
「うん、よろしく」
倉井さん。メガネをかけた癖っ毛の女の子。クラスの中では目立たない方でいつも教室の端っこで友達と喋っている。メガネを外すと超絶美少女…にはならないけど、メガネのままでも結構可愛い。身体つきは…ちょっと痩せてる…もう少し食べてほしい… 見た目も好きなんだけど、そうじゃない。俺が好きなのは…
「明日も頑張り魔性の女…」
何故か語尾に変なダジャレをつけたり…
「今日の昼飯ですか?キムチ丼です」
弁当キムチ丼だったりするけど…
「あ、その問題ですか?3は文中の中で…」
でも優しくて賢くて、変なところも可愛い。倉井さんはそんな人だ。この前だって…
(ピギーッ!)
…なんだ?頭の中で鳥の声がしたような、そんな声。
「飛騨君?大丈夫ですか?」
「ん、ああ、ごめんごめん。大丈夫、全然元気」
まあいいか。好きな子と一緒に仕事出来るんだから気にしてられっかよ。
1時間が過ぎた。2人しか来ていない。しかもその片方は倉井さんの友達の狐山さんと、もう片方は忘れ物を取りに来た昨日の図書当番。図書室は二人の空間だった。
「飛騨君も最近本読むようになりましたね」
「倉井さんのおかげでね」
「私のおすすめした本がそんなによかったんです?いいセンスでした?」
「ん、まあね」
自慢げな表情をする彼女。可愛い。つい、キュンとしてしまった。
(ピギーーーッ!)
その瞬間、火を纏った鳥が飛んでいる風景が見えた。見えたというか、身体全体に浮かび上がったというか…
「飛騨君?ちょっと、体調悪いんですか?」
「あ、なんでもないよ。ちょっとぼーっとしただけ」
「そうですか?ならいいですけど…」
「うん、大丈夫大丈夫。そういえば倉井さんって狐山さんと仲良いよね」
「彼女、幼馴染なんです。なんだかんだずっと一緒で… あっちもちょっと暗い感じの子なんで話が合うんです」
狐山さん、割と明るい寄りの子に見えるんだけど。
「サキホちゃんがどうかしたんですか?まさかサキホちゃんの事好きだったりして」
「違うよ。ただ、狐山さんと喋ってるときはよく笑ってるなーって」
「えーっ、そうなんですか?私、自覚なかっタリウム… 」
タリウム。この謎ダジャレ、照れ隠しだったりするのかな
「狐山さんと喋ってる時の倉井さん、楽しそうだなあって」
「そうですね…彼女と喋るのは学校生活での一番の楽しみですから。でも…」
「でも?」
「貴方と喋るのは学校生活で二番目に楽しみですよ、飛騨くん」
えっ、なに、えっ、えっ、かわい、え?え〜〜
(ピギャーーーーーーッ!)
!?頭の中で火を纏った鳥が飛んで舞って、鳴いている。さっきからなんなんだ、俺は倉井さんと喋っているのに…
(愛は不死鳥のように儚いものだ… だが、愛を力にすれば不死鳥は永遠だ…)
ちが、くない、か…ウッ…頭が痛い…
(愛は最強!不死鳥は最強!愛を兼ね備えた不死鳥はさらに最強!愛!不死鳥!愛不死鳥!ラブフェニックス!ラブフェニックスと呼んでくれ!)
なんか、しょうも、ないことを、言ってる…
(ああああああああ愛は不滅也也也也也也也ナリナリナリ)
頭が、あたま、が、割れるように、痛い!なんだ、これ…
(不死鳥、この現世に華麗に参戦!)
あ、あぁ… なに、これ…
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…ここは保健室のベッドか?あの後気絶して…あーいてててててて、頭いってぇ…
「目覚めタ?」
「メカ山先生」
保健室の先生?のメカ山先生がこちらを見ていた。
「なんで俺保健室に?」
「あなたのお友達の女の子が『男の子が意識がない』ってこっちに来たんだヨ」
倉井さんか…ありがたいねぇ…心…
「俺、元気になったんで帰ります。ありがとうございました」
「ンンー、今の街は少し怖いからネ、先生送ってあげよう」
「?まあ気絶してたけど身体は元気ですし… ていうか街?なんかありましたっけ」
「テレビ見たらわかるヨ…」
メカ山先生がテレビをつける。よく分からないままテレビを見ると…
『赤い鳥のような形の飛行体が三十分ほど街を飛び回りビルや一軒家に火をつけていき…』
…?
何言ってんの?
つづく