鬼ヶ島四天王 一人目 肥満のポテバラン
鬼ヶ島決戦が開戦して、鬼の女子高生・鬼島キル子は、走っていた。
この歴史で死ぬ予定の自分の両親を救う為に。
そんな事をすれば、未来から来た自分が過去を変えれば、今の自分は、消えてなくなるかもしれない。
そんなことは、わかっている。
しかし、鬼島キル子は、走らずには、いられなかった。
待ってて、父さん、母さん、私が鬼ヶ島の外に逃がすから。
そんな鬼島キル子を屈強な鬼供が、通せんぼする。
「何をするの!?どいて!私は、仲間よ!」
「嘘つけ!お前、桃太郎の仲間だろ!」
「この裏切り者め!鬼の風上にも置けない!」
「待って!信じて!私は、仲間よ!」
「黙れ!黙れ!どうしても、通りたくば、我らを倒していけ!」
「ぐっ……!」
鬼の屈強な男供が金棒を鬼島キル子に向け、鬼島キル子は、どうする事もできずに立ち止まる。
「あっ!鬼瓦おじさん!私よ!キル子よ!父さんと母さんを助けたいの、どいて!」
鬼島キル子は、立ち塞がる鬼の男供の中から、知り合いを見つけ、懇願する。
「キル子?何、言ってんだ?テメ。キル子は、5歳ぐらいだぞ。テメがキル子なわけがね。似ても似つかね」
鬼瓦おじは、キル子の言葉を信じない。
「ホントよ!私、キル子!未来から来たの!」
「こいつ、頭、沸いてんじゃねぇのか?」
「イカれてやがる」
鬼の男供は、金棒を持って、敵意をむき出しにして、近づいてくる。
「ひっ……」
なんの武器も持たないキル子は、前腕を前に出し、防御体勢をとる。
あわや、無抵抗に撲殺されるところの少女の前に、助け人が現れる。
「罰斗野球拳!」
合格火の丸ハチマキとロウソクが彼女の前で揺れる。
キル子を助けに来たのは、犬(犬神響也)だった。
犬は、素早くキル子に立ち塞がる鬼供のスネを金属バットで殴打、いや、バントしていく。
宇宙リーグ編で犬は、ホシアカリ丿ミコトヌシに神の加護を受けている。
そのバントの威力は、絶大である。
鬼供は、悶絶して、跪き、立ち上がれなくなる。
「あんた、どうして?」
キル子は、驚愕と困惑の目を犬に向ける。
「お父さんとお母さんを助けにいくんだろ?」
と犬。
「どうして、わかったの?」
「君を見てれば、わかるさ」
控えめに言って、キル子は、犬を気持ち悪いと思った。
「なんで、助けてくれるの?あなた、桃太郎の仲間でしょ?」
「確かに、僕は、桃太郎さんの犬だけど、犬なった覚えは、あっても、クズになった覚えは、ないよ。困ってる女の子がいれば、助けるさ」
「このまま、私が両親のところへ辿り着くまで、助けてくれるって、言うの?」
「ああ、もちろんだ。ただ、そのかわり、後でキミの足の親指を舐めさせてほしい」
「は?」
真剣な表情で言う犬を前に、固まるキル子。
「君の足の親指を舐めさせてほしい」
「二度、言うな。気持ち悪い。この変態」
「あひん」
犬は、失禁したように、身震いした。
「ありがとございまーす」
「何が?」
キル子は、犬の思考が、まるで理解できなかった。
「あらあら、あんた達、やってくれたわね」
そこにトロールのように太った巨体の鬼がやってくる。
腰にさらしを巻いただけの上半身裸の豚のように鼻の潰れた鬼だった。長髪で頭頂部が病的に禿げ上がっている。
犬に倒された鬼達を掴み、次々と鼻かみのように軽く投げ飛ばす。
「まったく、鬼のくせに情けない」
あきらかに別格な豚鼻のその鬼は、犬と鬼島キル子にこう名乗った。
「私は、鬼ヶ島四天王が一人。肥満のポテバランよ」
「男のくせにポテ腹って」
と呻くように言う犬にポテバランは、
「失礼ね。私は、女よ」
とむっくりふくれて見せる。
「だって、普通に乳出してるじゃないか」
犬は、ポテバランの不気味さに恐怖を覚えていた。
歯並びの悪い口元をにやつかせて、ポテバランは、
「ヌーディストビーチ帰りだからよ」
と言う。
「おぇえっ」
と犬は、えづいた。
「おほほほ、私のあまりの美貌にむせたようね」
ポテバランは、顔の前で手をぱたぱたさせ、紅潮する。
「さて、鬼ヶ島を危険に晒すあなた達には、ここで死んでもらいましょうか」
君子豹変す。ポテバランは、一気に殺意を宿した剣呑な目つきになる。
「待ってくれ!この娘は、未来から来たこの島の鬼だ!敵じゃない!」
「そうよ!私は、今日、死ぬ運命の両親を助けたいだけなの!」
犬とキル子は、ポテバランを説得して、無用な戦いを避けようとした。
それにポテバランは、
「関係ないわね」
と答えた。
「わたしより、かわいい女なんて、全員、死ねばいい」
ポテバランは、おもむろにその分厚い手で鬼島キル子に攻撃を加えようとした。
それに犬は、ぶちギレる。
「テメェの乳首は、何色だぁーっ!!」
「いやん。どこ見てるの。エッチ」
ポテバランは、攻撃をやめ、手ブラをし、自らの乳首を隠した。
そこに鳩尾に向け、犬は、金属バットの先端を突き立てた。
金属バットは、ポテバランの脂肪に飲み込まれ、抜けなくなる。
ポテバランは、平気そうにして、自らの身体にハマったままの金属バットを掴み、ぐちゃりと粘土のように捻じ曲げ、ぶち折って、そのグリップ側の片割れを犬に向かって、放おり投げた。
「わ〜たしは、脂肪に守られているから、どんな攻撃もノーダメージよ」
「まっマジか……。無敵すぎる」
犬は、一歩、二歩、三歩と後退りする。
ポテバランは、げにゃりと醜悪な笑みを浮かべ、右横から来た光の波を浴び、黒焦げの肉塊となって、倒れる。
犬が光の放たれた方を見ると、おじいさんとおばあさんが見たことのないピンク色の戦車を運転していた。
それは、桃太郎の育てのジジとババだった。
「ありゃ〜、このワシが作ったビーム砲戦車。照準が甘いのう。桃太郎を狙ったはずなんじゃが」
「おじいさん、しっかりして、くださいよお。もう桃ちゃんのせいで、この島全体に次元嵐ができていて、すべての次元の人達が集まって来てるんですから。育ての親のわたしたちが、責任を持って、桃ちゃんを早く始末しないと次元が吹っ飛びますよ」
「わかっておるわい。おっ、あそこにいる桃太郎が本体かのう」
「おじいさん、しっかりして、くださいよお。あれは、桃ちゃんじゃなく、フレディ・カタルシスですよお」
「うん。ほんとじゃ。ありゃ、フレディ・カタルシスじゃ。よく似てるから、わからんかった。ややこしいのう。もう、中性子爆弾で島ごとぶっ飛ばすか?」
「あなたのそういうところをマネして、桃太郎が育ったから、こういうことになったんですよ」
「そういうなよ。ばあさんや」
そう言って、桃太郎の育てのジジとババは、犬と鬼島キル子の視界からキャタピラで離れていく。
「なんだったんだ?」
犬と鬼島キル子は、ポテバランの屍を越えていき、鬼島キル子の実家へと向かいましたとさ。
つづく




