7.真相と彼女たちの理由②
藤野氏はもう少し残って話してくとのことだったので蛸島さんと南山田先輩と僕の3人は先に部屋を辞した。
僕らより少し遅れて部屋を出てきた南山田先輩の運転する車に乗って帰路につく。
「これでフジっちゃんの心配は解決して一件落着っちゅうわけや」
「うむ。彼女との関係も良好なままで、藤野君と日那ちゃんの関係も改善されそうじゃし。丸く収まって良かったのう」
「そうですね。一応一安心です」
「ところで瀬川君に一つ聞きたいことがあるんじゃが」
「?なんでしょう?」
「藤野君から悠魅ちゃんに送ったメッセージに『悠魅にとって大事な人』という言葉があったじゃろ?なんで日那ちゃんを名指しなかったんじゃ?瀬川君の中で悠魅ちゃんが犯人ではないのは確定しておったんじゃろ?あとは日那ちゃんしかおらんのではないか?」
「いや、そこまで絞り込むのは無理ですよ」
藤野氏から全ての必要な情報が提供されていたとは限らないのだ。
彼はどうも基本的に人を疑いたくない傾向があるようだし。
「藤野氏の情報からまるで3択(うち1人は東京在住で実行犯としては対象外)みたいに思えたかもしれませんが、他の選択肢だっていくらでも考えられますよ。例えば悠魅さんに姉妹がいたとして、その1人に多加坂氏が日那さんにやったように唆すとか。悠魅さんが長身なんですからその血縁の方も長身な可能性は高いでしょう?他にも悠魅さんと仲の良い長身の友達がいた可能性だってありました」
「なるほどの。確かにあの時点では絞り込んであの表現が精一杯じゃな」
と南山田先輩が納得したところで蛸島さんから声を掛けられる。
「なあ、さっきユキ君、一応一安心言うとったよな?一応ってなんや?まだ何かあるんか?」
「えーと、ささやかな宿題が2つ残ってるなーと。まあ、それについてはまた後日ということで」
「「?」」
◇◆◇
3日後
南山田先輩と僕は蛸島さんの部屋に来ていた。
「しっかし多加坂が日那ちゃんにレコーダー仕掛けさせた理由があれやったとはな」
あの後、藤野氏は多加坂氏のお母さんに連絡を取り、ことの真偽を問いただしてもらったところ最終的に事実と認めたそうだ。
理由については
「威流が私に言ってくれる『行ってきます』や『ただいま』を聞きたかったから」
ということだったそうだ。
「最近は部屋に居る悠魅ちゃんに言うこともあったんやけどな。元々フジっちゃんは部屋に誰もおらんでも『行ってきます』とか『ただいま』とか言う習慣があって『律儀な奴っちゃなあ』って俺があちこちで話したのがどっかであいつに伝わったんやな……お前に言っとんのとちゃうっちゅうねん」
「まあ、幸いレコーダーは彼女の手には渡りませんでしたし。奇しくも藤野氏が最初に言ったとおり『何も被害がなかった』で済んだわけですね」
「相変わらず執着されてる藤野氏には同情するがのう……多加坂氏の治療が上手くいくことを願うしかないんじゃが」
そう。多加坂氏は日那さんには
『複数の女性を連れ込んでいることを確認するため』
とデタラメを吹き込んていたようだが、肝心の本人の目的がわからず不安が残っていたのだ。
しかしこの理由なら仕掛けたのが玄関内の音しか拾えない程度の性能のレコーダーであったことも納得できる。
なお外付けバッテリーまで装着して2週間の長期稼働させたのは日那さんに真の目的がバレにくくするため以外にも
『なるべく多くのバージョンが欲しかった』
という理由があったそうだ。
「ともあれこれで1つ目の宿題は片付きました」
「ふむ、それじゃ2つ目の宿題の方はどうなったんじゃ?」
「それがこの3日間色々考えてみたんですが結局自力では解けませんでした。なので本人に聞いてみようと思います。と、そこで蛸島さんに質問なんですが」
「え!?俺!?」
突然自分にふられた蛸島さんがびっくりしている。
「どこかの時点で日那さんが実行犯だと気付いていませんでしたか?」




