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プロローグ
S大学2年生の藤野威流がマンション803号室のドアを開けながら「行ってきます」と室内に一言掛けてマンションの廊下に出ると、ちょうど同じフロアに住む同じくS大学2年生の蛸島辰明も810号室から出るところだった。
「よ、おはよう」
「おはようさん。ん?彼女は部屋に居てるんか?」
「いや?今日は悠魅は来てないぞ?」
「相変わらず律儀な奴っちゃなあ。ほんじゃ行こか」
「おう」
こうして登校した2人はその日の午後、南山田からの連絡をきっかけにして結構な騒動に巻き込まれることなど想像もしていなかった。