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ランチをともに

 ラングラン侯爵家の料理人ジョスラン・ルクレールが腕によりをかけてくれたメニューは、ジラルデ帝国の名物料理ばかりではない。


 ジラルデ帝国の名物料理よりアムラン王国で好んで食されるメニューの方が多い。


 じつは、そうしてもらうようお願いしたのである。


 ジョスランは不思議がった。


「アイ様、ふつうはこのジラルデ帝国の料理を出すものですが……」


 料理人によくあるように、彼もまた恰幅がいい。そして、コック服がよく似合っている。


 彼は背の高いコック帽をのせた頭を右に左に傾け、正直に言ってくれた。


「ジョスラン、あなたの言う通りです。だけど、わたしはふつうが好きではありません。ほら、わたしって可愛くないところがあるでしょう? それに、ワガママだから。お願いです、ジョスラン。そのメニューでいって下さい」

「もちろん、アイ様のご要望でしたらその通りにいたしますので」


 そんなやり取りがあったけれど、ジョスランの腕は確かである。それに、何か国もまわって修行しただけあり、どのようなレシピにも対応出来る。それどころか、いまだに様々な国や大陸の料理本を借りてはあたらしい料理の開拓をしている。


 文化的活動にも力を入れているこの領地には、図書館がふたつある。


 彼は、その図書館で料理本を借りるのである。


 それはともかく、ジョスランのお蔭で食堂のテーブル上にはアムラン王国の名物料理の数々が並んだ。


「おおっ、これは! ひさしぶりに食える」

「ええ、叔父上。ひさしぶりですね」


 エルキュールとジョフロワは、文字通り手を打ってよろこんだ。そして、一心不乱に食べはじめた。


「美味い。こんな美味い料理は、故郷でもそうそう食えん」

「ほんとうに美味い。ああ、感動しました」


 二人は、あっという間に平らげてしまった。


 食後、料理人を呼んで欲しいと言われた。もちろん、すぐにジョスランに来てもらった。


 すると、この心のこもった数々の料理の礼をしたいと言い出した。


 丁重に断るジョスラン。


 彼は、アイ様の指示に従っただけだとわたしを立ててくれた。


 が、エルキュールは「その指示に従えたのは、料理の知識、それ以上に腕があればこそ」と譲らず、結局ジョスランは見たい料理本を要望した。図書館にはなく、そこでは入手出来ない料理本らしい。


 エルキュールは快諾した。


 かならずや届けさせる、と約束してくれたのである。


 こうしてランチタイムは無事終了した。


 それから、庭のテラスに移動してお茶を飲んだ。


 そこで今度は、わたしがプレゼンを行うのである。


 本日、彼らを招待した目的を達成する為に。

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