↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
28/45

あの男?

「話があります」


 そう切り出してみた。


「隣国アムラン王国に行ってきます」


 一度口を開くと、言葉が勝手に口から飛び出していく。逆に口を閉じることが出来ないような勢いで言い募った。

 おそらく、支離滅裂な説明だったに違いない。彼にしてみれば、なにをどうしたいのか、どうなっているのか、さっぱりわからなかったかもしれない。


 とにかく、言葉が出るに任せて話しを続けた。


 そして、言葉を出し尽くした。


 気がつくと、肩で息をしていた。言葉の代わりに、ハアハアと荒い息が口から出ている。


 喋っている間は、彼ではなく彼のうしろの窓の向こうに広がる木々を見つめていた。このときになってやっと、視線を彼へと戻した。


 彼のごつい顔に浮かんでいるもの。


 驚きや失望や疲れや倦怠?


 いいえ、違う。


 なにも浮かんではいない。まったくの無表情。


 一瞬、わたしの説明がまったくわからなかったのかと思った。


「座ってくれ」


 その瞬間、彼が大きな溜息とともにその一語を吐き出した。手で長椅子を示しつつ。


 その通りにするにきまっている。


 長椅子にそそくさと腰かけた。


「散財か?」


 彼は、そうつぶやいてから小さく笑った。


 ごつい顔の両頬に出来たえくぼを目の当たりにし、なぜか驚きよりもほんわかした。


「どうして散財と言ったんだ?」


 一瞬、彼がなにを言っているのかわからなかった。


 が、すぐに思い出した。


 わたし自身が彼にそう言ったのである。


 ラングラン侯爵家の大切な資産を散在しまくっている、と。


「散財かそうでないかは、調べるまでもない。そのような嘘はな」


 この前、そのことで彼に問われて答えたことである。わたし自身が答えただけではない。慈善病院にまわしている資金。それをわたしがわたし自身の為に使っているようにして欲しい。管理人のマルスランや執事のモルガンには、すべての記録にそのように残して欲しいと頼んでいる。


 フェリクスは、最初から知っていたのである。


 ラングラン侯爵家の資産の使い道を。


「申し訳ありません。ですが、わたし自身が散財していることは事実です。その内容が、ドレスや貴金属や絵画ではないというだけのことです」

「きみは、かわっているな」


 彼は椅子の背に大きな背中をあずけつつ、また小さく笑った。


「まぁいい。きみの問題の話をしよう。アムラン王国に行きたいというのだな? 流行り病を癒しに? あるいは、加護をする為に? それは、あの男の要請なのか?」

「あの男?」


 またもや彼の言っていることがわからなかった。


 しかし、すぐに思いいたった。


 ジョフロワのことだ、と。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。