表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/45

アムラン王国で流行り病が?

 そんなふうにいろいろ考えすぎて気力も体力も消耗しかけた頃、国境を接しているアムラン王国側の町や村から、訪問して欲しいとの要望していることを知った。


 流行り病で町や村の人たちが苦しんでいるらしい。


 ということは、国境に接しているラングラン侯爵領にも流行り病が蔓延する可能性がある。いいえ。ラングラン侯爵領だけではない。アムラン王国の他の領地、それからジラルデ帝国の他の領地にも広がってしまう。


 しかし、慈善病院自体の治療をおろそかにするわけにはいかない。医師や看護師も含め、事態を把握出来ていない状況でその地域に足を踏み入れるのは無謀そのもの。


 熱や嘔吐、下痢の症状ということなので、何十年かに一度は流行る熱病の一種である可能性は高い。


 それでもやはり、いまはまだ情報が少なすぎる……。


 とはいえ、いたずらに対処を先延ばしにすれば、いろいろな意味で手遅れになる。


(そうよ。わたしが行けばいいのよ。こんなときこそ、癒しと加護の力を使うとき。その効果があるかは正直わからないけれど、そのときにはそのときよね。効果がみられなかったら、そのときには医師たちの力を借りればいい。わたし自身が現場で状況を把握しておけば、彼らにつぶさに伝えられる。きっと医師たちが適切な対処をしてくれる)


 そう考えた。 


 そう決めると、さっそく慈善病院のスタッフに告げた。


 が、みんなに全否定とまではいかなくても反対されてしまった。


「アイ様、あなたを行かせるわけにはいきません」

「そうですよ。ほとんど状況がわからないのに、なにかあったらどうするのです?」

「アイ様、隣の領地に行くわけではないのです。隣国ですよ。やはり、情報がなさすぎます」

「将軍閣下も反対されますよ」


 医師や看護師、お手伝いの人たちまで口を揃えて行ってはいけない、と言う。


 焦燥に苛まれた。こうしている間でも、流行り病にかかった人たちは苦しんでいる。その家族や知人や町や村の人たちは伝染する恐怖に怯え、不安で眠れない日々をすごしているはず。


 ここで行く行かないの議論をしても、いたずらに時間だけがすぎていく。


「では、将軍閣下に、いえ、夫に相談してみます」


 みんなにはそう言うしかない。


 みんなもわたしのことを心配して反対してくれている。その気持ちを無下にして強行突破するほど、わたしはわからず屋ではない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ