表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

9/16

9.馬鹿

「シャロ様……お知合いですか?」


「いや、知らないな」


「……ライラック家当主のわたくしをご存知ないと?」


「ライラック!?」


「有名な家の方なんでしょうか?」


「……あぁ、十数年前のドワーフとの戦争を一夜にして終わらせたのがライラック家だ」


 ドワーフ……今はダンジョンに住処を移し、外界からは姿を消したと聞く。


「君は知っていると思うが、ドワーフがダンジョンに移り住むきっかけとなったのがその戦争だ」


「それは確かにとんでもない家系の方ですね」


「ライラック、そうか君が――」


「ごちゃごちゃ煩いですわね。いいから勝負をしなさい、聖女」


 シャロ様に対してここまで敬意を持たない人間を初めて見た。


「……いったい何をしてるのですか?」


 そこに現れたのは、先ほど彼女と同じ席についていたもう一人の金髪の女の子だった。

 髪はショートボブにされており、すっきりしたような印象を受ける。

 この子もわたしより可愛い。

 ……わたしより可愛い子多すぎない?


「彼女がシャ……聖女様に勝負をしろと」


「……はぁ、姉さまは馬鹿ですか?」


「あーーー、またわたくしに馬鹿って言いましたわね! 妹が姉のことを馬鹿にするなんて許されませんわよ!」


「いえ、自分は姉さまのことを馬鹿になんてしていませんよ」


「そうでしたの? けれど、今わたくしのことを馬鹿と……」


「姉さまのことを馬鹿と指摘しただけです。自分が姉さまのことを馬鹿にしたのではなく、元々馬鹿だったのです」


「馬鹿にするって言うのはそういう意味じゃありませんわよ!」


「ヘ―ソウナンデスネー、イヤーネーサマハモノシリデスゴイナー」


「隠す気もない棒読みはやめてくださらないかしら!」


「イヤーマッタクモッテソンナコトハー」


 目の前で二人だけの世界が始められてしまった。


 しかし、どうも二人とも姉妹以上に顔が……。


「双子……?」


「はい、自分と姉さまは双子でございます」


 わたしのつぶやきにショートボブの子が応えてくれる。


「申し遅れました、自分はオリビア・ライラックと申します。同じ学園の新入生としてよろしくお願いします、聖女様、お付きの方」


「丁寧にありがとうございます、オリビアさん。私の名前はシャロット・ドッグウッドと申します。同じ新入生ですし、良ければシャロットと呼んでください」


 シャロ様がいつもとは違う丁寧な様子であいさつする。わたしに対しては、いつも砕けた感じで接していてくれたことに喜びを覚える。

 ……それだけで嬉しくなっちゃうわたしチョロいな。


「かしこまりました、シャロット様」


「わかりましたわ、シャロット!」


「あなたに名前で呼ぶことを許した覚えはないのですが?」


 なれなれしく名前を呼んでくる


「オリビアが名前で呼んでるのに、わたくしだけ聖女と呼ぶのもおかしな話ではなくて?」


「何もおかしくはないですよ、私とあなたは他人ですもの。名も知らぬ御令嬢さん」


「名乗ればいいんですわね、名乗れば。わたくしはアメリア・ライラック、以後お見知りおきを」


 その所作は先ほどまでの馬鹿な様子とはうって変わって、綺麗なものだった。

 ……オリビアさんの物言いがうつったかもしれない。


「よろしくお願いしますね、ライラックさん」


「……なんでそうなるのでしょうか?」


「どうかされましたか? ライラックさん」


「なんでわたくしだけライラック呼びなのかと聞いているんですの!」


「二人ともライラックさんとお呼びすると、わかりにくいじゃないですか。馬鹿なんですか?」


 シャロ様にまで移ってしまっていた。


「あなたまでわたくしを馬鹿にするんですのね!」


「いや、私が馬鹿にしたわけじゃ――」


「もうそのくだりは一度やりましたからいいですわよ! わたくしも名前で呼べばいいと言ってるんですの!」


 この人ずっと怒ってるのすごいなと思う。

 起こるって体力要ることなのに、オリビアさんに続いてシャロ様にまで噛みついているなて。


「まだ会ったばかりなのにそんなの馴れ馴れしいじゃないですか?」


「オリビアは!?」


 ちゃんとツッコミもできるようだ。


「彼女はルカ、私のメイドだ。仲良くしてやってくれ」


「遂に無視されましたわね!?」


 ……というか、なんか勝手にメイドにされてない?

 シャロ様の方を見ると、わたしと正反対の向きに顔を向けている。

 わざと視線を合わせないようにしているのが明らかだった。

 おそらくメイドという経ちbの方が何かと都合がいいのだろう。けれど、メイドという立場は元男としてどうしても受け入れ難かった。


「ご紹介にあずかりました、ルカと申します。聖女様の付き人をさせていただいております」


 ぎりぎりの妥協点だ。


「これから、主ともどもよろしくお願いいたします。オリビアさん、ライラックさん」


「あなたまでわたくしを馬鹿にするんですのね!」


 ここは乗らない方が無粋な気がした。

 というか、どう考えても馬鹿にはしていないと思うんだけどな。




「それで、勝負は受けてくださるんですの?」


 シャロ様は少し考えた後言った。


「わかりました、ルカに勝つことができれば私自らお相手しましょう」


 ……え? わたしが戦うの?


少しでも良かった、続きが読みたいと思ってくださったら、『ブックマーク』と広告下にある☆の評価お願いいたします。

とてもモチベーションになります。


また、感想もお待ちしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ