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8.挑戦

学園の話に入り、話が進みます。

「おはようございます。すみません、お待たせしてしまって」


 待ち合わせ場所である学園近くの喫茶店の前に着くと、すでに黄色い帽子を深くかぶったシャロ様がその場にいた。


「おはよう。大丈夫だ、まだ時間五分前だからな」


 帽子を鞄にしまいながら、彼女がそう答える。

 昨日は着てみたかっただけかなぁと疑問に思わなかったが、今日は状況が状況なだけに彼女の格好に疑問を持つ。


「その制服……どうしたんですか?」


「どうしたも何もないだろう」


「どういうことですか?」


「私の方こそ君が言うことの意味が分からないのだが? 今日から学園に入学するんだ、制服で来るのは当然であろう」


「確かに当然……え」


「どうかしたか?」


「シャロ様も学園に入られるんですか?」


「そう言っているだろう」


 てっきり学園に入るのはわたし一人だと思っていた。確かに、思い返してみればシャロ様本人は学園に来ないとは言っていなかった気がする。


「なんだ、私がいるのが不服か?」


「そんなわけないじゃないですか!」


「そ、そうか、それならいいが」


 わたしが勢いよく答えすぎたようで、少し彼女が気圧されているようだった。


「あ、すみません……」


「いや、入学式の朝なんだ。それくらい元気があった方がいいさ」


「ありがとうございます、シャロ様」


 素早くフォローまでしてくれる彼女に、本当に敵わないなと思わされるのだった。


「今日は髪も綺麗な銀色のままなんですね」


「あぁ、学園には聖女として通うつもりだからな」


「聖女として?」


「まぁそちらの方がいろいろと融通が利くんだよ」


「……なるほど」


 聖女として通われるということはきっと多くの生徒に囲まれることになるのだろう。そうすると、わたしと関わる時間も減ってしまうんだろうななどとも考えてしまう。


「朝食はまだ食べてないよな?」


「はい、食べずに出てきました」


「よろしい、ではここで食べるとしようか」


 そう言うと彼女は店内へと入っていくので、遅れないように付いていく。


「いらっしゃいま……せ。何名様でしょうか?」


 入ったところで受け付けてくれた店員さんは、彼女が聖女であることに気づいたようだった。

 けれど、それを口に出さないのは流石街の中心にあるお店の店員ということだろう。

 

「二名です」


「かしこまりました、ご案内いたします」


 移動している間も他の客からチラチラと視線を感じる。


「あれって聖女様じゃない?」


「本物初めて見た! 綺麗~」


「一緒にいる子は誰かしら?」


「彼女も凄い可愛らしいわね」


 悪いことをしているわけでも、恥ずかしいことをしているわけでもないのだが、注目されていることに身体が緊張してしまう。

 シャロ様はもっと大観衆の視線に晒されるのも慣れているのだろう、とても堂々とされていた。


 しかし、客の中の一人がシャロ様を強く睨みつけているのに気付いた。

 その子は綺麗な金髪をツインテールにしていて、学園の制服を着ていた。わたしたちと同じ新入生だろうか?

 シャロ様ほどではないが、整った顔立ちをしている美少女であった。

 わたしより可愛かった。

 ……このわたしよりとかいうのやめよう。


 向かいの席に座っている子は顔を見ることはできなかったが、同じく綺麗な金髪をしていた。


「こちらの席でよろしいでしょうか?」


 わたしたちが案内されたのはお店の奥の方で、他の客にからも見られづらい席だった。気を使ってくれたのだろう。


「はい、お気遣いありがとうございます」


 シャロ様が美しい笑みで、そう答える。


「し、失礼します」


 店員さんも女性であったのに顔を真っ赤にして去って行ってしまった。

 シャロ様のご尊顔にそれだけの素晴らしさがあることはわたしもよくわかっているから、顔を真っ赤にしてしまうのも理解できる。


「何か食べたいものはあるか?」


 シャロ様はわたしにメニューを開いて見せてくれる。

 どれもただの喫茶店……とは言えないくらいに食欲をそそられた。

 けれど、私の答えは決まっていた。


「えっと……」


「?」


「シャロ様と同じものがいいです」


「……可愛いこと言ってくれるじゃないか」


 そうして、わたしは彼女と一緒にオムレツとベーコンに、焼き立てのパンと紅茶が付いたモーニングセットを楽しむのだった。




 時計を確認すると、入学式が始まる十時まであと三十分とした、九時半を示していた。


「そろそろ出ましょうか」


「そうだな」


 流石に今日こそはわたしがと、無理やり会計を済ませることに成功した。


「私が払うつもりだったんだがな、ごちそうさま」


 店を出ると、シャロ様からお礼を言われる。


「昨日はシャロ様に払っていただいてばっかりだったので」


 聖女様の懐に比べたらさみしいものだろうが、わたしも先日までダンジョンに潜っていたんだ。そこそこくらいはお金も持っている。

 流石にいつまでも払ってもらうばかりというのは、元男としてのプライドが許さない。


 二人で学園へと向かおうとした時だった。


「ちょっと待ちなさい!」


 わたしたちの行く手を阻むように女の子が立ちふさがる。


「聖女! わたくしと勝負しなさい!」


 その子は先ほどの金髪ツインテールの美少女であった。


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