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先輩の事

作者: あけよん

「え?先輩高校いかないんですか?」


中学生の頃の話だ。私の一つ上の学年に高校入試を受けないと決めていた先輩がいた。


「どうして受けないんですか?」


「だってさ、馬鹿にしてるじゃん?まず受験番号って何だよ!人間だぞ!番号で扱われるなんてくそ食らえだ」


先輩は何かと強がる人だ。また、破天荒な生き方に憧れを持っていて何より負けず嫌いだ。


「でもとりあえずでもどっかに入学するだけしといた方が」


「めんどくせぇよ!入ったところでどのみち続かねぇ。俺は俺はの道を行く」


先輩はどこまで本気なのか分からない人だ。ただそんな先輩の事を心のどこかでカッコいいと思っていた。そして先輩は本当に高校入試を受けないまま中学校を出ていった。


翌年、私は受験した高校に見事に合格して通学していた。学校のレベルはけして高いわけではないがとりあえずは入学できてほっとしていた。友達もそれなりに出来たし部活も大変だが嫌ではなかった。そんな生活をしばらく送っていた時に道端で声をかけられた。


「おい、久しぶりだな!覚えてるか?」


「あ、先輩!お久しぶりです!」


先輩が中学校を卒業して以来の再会だった。見た目はお互いそんなに変わっていないが私は今の高校の制服、先輩は私服だった。そいえば先輩の私服って初めてみるな。


「お前どこの高校いったの?」


「◯◯高校です」


「へぇ、けっこうかわいい制服じゃん」


「先輩は今何しているんですか?」


「俺?何もしてねぇよ?」


「え?バイトとかは」


「しねぇよそんなもん。だってさ、馬鹿にしてるじゃん?まず言われた通りに動かなきゃ給料貰えねぇって意味がわかんねぇ。人間だぞ!強制労働なんてくそ食らえだ」


先輩は変わらない。自分と言うものをしっかりと持っているのだ。やっぱりカッコいいと思う。私には出来ないことを先輩は堂々とこなす。


時は過ぎ私は高校を卒業して何とか入社した職場で働いている。あか抜けた日々とはほど遠いいのだが辛くはなかった。それなりの日々を送っていた。ただ心のどこかであの先輩の事がずっと気になっていた。


(先輩どうしてるかな)


そんなある日テレビでニュースを見ていたら、とある事件で逮捕者が出たと報道されていた。私は驚いた。その逮捕者は先輩だった。

どうやら実家を追い出され、どこにも就職出来ずとうとうお金に困り悪い事に手を染めたのだ。


そして刑務所で先輩は結局番号で呼ばれながら強制労働の日々を送る事となったのだった。

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