表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/32

二十一歩目 決意

「へ~、翔吾十九歳なんだ! 私の方がお姉さんだね!」


 誇らしげに言うシズク。え? お姉さんなの!? 見えねぇ。同い年だと思ってたり


「私とは同い年ですね!」


 え? マリアは同い年!? それも見えねぇ。年下だと思ってた。「シズクちゃん、お姉さんって言っても一つしか変わりませんけどね!」なんて言いながらボアを俺の前に置く。


「グイッといっちゃって下さい!」

「ありがとう! 飲むぞ! ボスゴリ!」

「酔い潰れんじゃねぇぞぉ? チビ!」


 こちらを見つめ微笑む、リルとガンテツ。さすがこのパーティーの保護者。


 木のジョッキから、溢れんばかりに膨れ上がった泡をすする。唇にまとわりつくものの、口当たりは滑らかですぐに溶けていく感覚。泡の下に待機している黄金色の液体は、ほのかな苦味を残しつつもフルーツの様な爽やかさを醸し出している。

 

「美味い!」

「さっぱりしてて美味しいよね!」


 隣で飲んでいたシズクは、小さな口をジョッキから離す。


「チビ、ペース遅いんじゃねぇのかぁ?」

「そう言うボスゴリは、顔が赤くなってるぞ」

「まだまだいけんぜぇ! 一気に飲み干してやるよぉ!」

「俺だって!」


 大きく手を上げる。


「おかわり!」「もう一杯くれぇ!」


 オーダーを聞き、ジョッキを二つ持ってきたマリアが、呆れた顔を見せる。


「お母さんからの伝言! 競うのも良いけど、お酒は美味しく飲んでね?」

「はい……すんません」


 厨房から、いたずらな表情でこちらを見ているメリダさんに二人で詫びる。そうだよな、美味しく飲まないと失礼だな!

 

「もう……飲めないよ〜」


 あれ? シズク? 酔い潰れた……? 一杯目じゃない?


「シズクちゃん、ほんとすぐ酔っちゃうね」

「案外チビが一番、酒豪だったりしてなぁ! 顔が赤くすらならねぇ!」

「あの二人には敵わない」


 視線の先には、ジョッキに囲まれたリルとガンテツがいた。酔っている素振りすらない。てかいつの間にあんなに飲んだんだ?


「儂としたことが飲みすぎてしまった……」

「なんじゃ? 酔っておるのか? ガンテツ」

「この程度では酔えんな」


 まだ余裕な態度を見せる二人。こいつらやべぇな。

 そのまま時が流れる。ボスゴリは酔い潰れ、シズクは俺の隣で、テーブルに突っ伏して熟睡している。リルとガンテツは未だに飲み続けていた。

 俺はクールダウンで、水を口に含む。


「翔吾くん、今日泊まってたらどうだい? 宿代はサービスしてあげるよ」

「いいのか?」

「いいよ、たくさん飲んでくれたしね! マリアも喜ぶよ! それにシズクちゃん運んで帰るのはしんどいでしょ?」


 メリダさんは、熟睡するシズクを眺め、朗らかな表情を見せる。お言葉に甘えさせてもらうか。


「翔吾さん、一緒に飲んでくれませんか? 客足が落ち着いたので……」

「うん、飲もっか。シズクもボスゴリも酔っちゃって、飲み足りなかったんだ」


 マリアは横に座り、ジョッキを持ち上げる。


「それじゃ、乾杯!」

「乾杯!」


 二人して、一気にジョッキを空にする。マリアいい飲みっぷりだな。


「翔吾さん……本当に、ダンジョンに行くんですか? 危険なんですよね?」

「うん、行くよ。心配?」

「心配に決まってるじゃないですか! 意地悪ですね」


 俺の頬をつねるマリア。痛い痛い。


「そっか、心配か。でも大丈夫! 俺、強くなってるから。それに仲間もいる」

「随分と信頼されてるものだな」

「ガンテツ、もう飲み終わったのか?」


 スタスタとこちらへ向かってくるガンテツ。あんなに飲んでたのにピンピンしてやがる……。

 あ、リルはさすがに酔い潰れてるみたいだ。


「ああ、それにしても小僧がそんなにも仲間を信頼していたとはな。儂も全力を注ごう」

「ありがとな、ガンテツ」


 ガンテツは「邪魔して悪かったな」と言い残し、夜風を浴びに店を後にした。


「翔吾さん、いいお仲間に出会えて良かったですね!」

「そうだな、俺は幸せ者だ!」


 ぐびぐびとボアを飲み進め、マリアはすっかり酔っていた。俺、まだ飲めるな。酒豪か?


「翔吾しゃん! シズクちゃんとわらし、どっちがしゅきなんれすか?」

「ふ、二人とも好きだよ? いい友人だし」

「らめれす! 異性として!」


 両手を俺の首にまわして、顔を近付けるマリア。その表情はどこか不安そうで、はっきり言わないといけないと思った。


「俺は……」

「おいチビィ! ちょっと付き合えやぁ」

「は? 何言ってんだよ?」


 不意に来るボスゴリ。まだ酔いが抜けてないのか、ふらふらの足取り。手首を引っ張られ、俺は店の外へと連れ出される。マリアはキャパを越えたのか、机に突っ伏す。


 夜空に散りばめられた星の輝きの下、目的も無く歩く。ガタイのいい男と。


「チビ、てめぇの気持ちを真っ先に伝えるべき相手は、本人だろ?」

「話聞いてたのか?」

「まぁな。ちょうど酔いが覚め始めたらおもしれぇ事になってたからなぁ。しばらく様子見てたんだぁ」


 俺の背中を強く叩くボスゴリ。確かに、この気持ちは真っ先に、シズクに伝えるべきだな。


「さんきゅーな。ダンジョン攻略し終えたら、シズクに伝えるわ」


 死亡フラグみたいだな。いや、これは決意だ。消して死なない。


「おう。チビはまだまだ強くなるぜぇ、なんせ守るもんがあるからなぁ」


 こいつなんやかんやで優しいんだよな。暗闇を抜け、店へ戻る。ほのかに料理の香りが残る店内、後片付けを手伝う。


「悪いね、翔吾くん。手伝ってもらっちゃって」

「これくらい、いいよ。騒ぎまくったし」



 ある程度片付けて、メリダさんに「もういいよ、ありがとう!」と言われたので、シズクを部屋まで連れていく。ベッドにシズクを置き、俺も部屋に戻る。なんだか懐かしさすらあるな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ