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十九歩目 反逆

 眩く光る朝日が瞼を刺激し、心地よい波音で目を覚ます。横には赤髪の美女、シズクが心地良さそうに、すやすやと眠っていた。砂浜で話してたまま寝てしまったのか?


「シズク、朝だぞ」

「ん……翔吾……? おはよう……あれ? 海?」

「おはようシズク。昨日あのまま二人とも寝てしまったみたいだ」

「楽しくていっぱい話しちゃったね~」


 妖艶な笑みで言うシズク。寝起きで虚ろな目でも可愛く見える。

 ボスゴリに見つかる前にしれっと戻るか。昨晩の煌めく水面とは違い、青く澄んだ表情を見せる海を横目に歩く。隣を歩くシズクとの距離は以前より近く、これは良い雰囲気なんじゃないか? なんて思う。


 テントに戻ると、外でスクワットをしているボスゴリを見つける。

 鎧のように重そうな筋肉をもろともせず、テンポ良く腰を下に下ろしては上げを繰り返している。


「ようチビ! 昨晩どこに行ってたんだぁ? あれ? シズクも一緒か? 何してたんだぁ?」


 こちらに気付くと、動きを止め大きな声で話しかけてきた。


「寝付けなかったから海に行ってたんだよ! 詮索すんな!」

「進展あったのかぁ?」


 気を遣ってか、小さな声で聞いてくるボスゴリ。


「特に無かった」

「シズクへの気持ちはまだ逃げ気味だな」

「お前からシズクを守ろうとした時に、逃げるのは辞めるって決めたけどまだまだだわ」


 自分の未熟さを痛感しながら、ニヤけるボスゴリと二人でテントを片付ける。たたみ終えたテントをリルが開いた神域へと収納しながら、言う。


「さ! ギルド戻るか!」


 またガタゴトと揺られながらラグロクへ帰る。見なれた門、見慣れた店に見慣れた人。少し安心感がある。

 ギルドの扉を開け、役員のお姉さんにギルマスの部屋へ案内してもらう。

 中に入ると机に腰掛け、ティーカップを片手に優雅に視線をこちらに向けるシルヴァさんがいた。


「おかえり、ご苦労様。問題なく完了した様だね」

「ただいまシルヴァさん」


 イケメンのオーラを纏い、爽やかに労ってくれる。そしてすぐに用件が告げられる。


「早速で悪いんだけど、王城へ同行してくれるかな?」

「聖剣についてか?」

「ああ、王が直接話があるみたいなんだ。客人として迎え入れると仰っているから身構えはしなくていいと思うよ」

「わかった」


 聖剣についての話。思ったより早かったな。

 早速ギルドを後にして、王城へと向かう。街と区別する様に高い位置に建てられた大きな城。きっと王は力を誇示したいタイプのやつなんだろうな。




 ***




 金に装飾が施された大きな玉座にどっしりと座るガタイの良い王。その見た目からは、武術の経験者だという事が推測出来る。

 王と対面する騎士も、鎧で隠されているにも関わらず日々の鍛錬を感じ取れる程のオーラを纏っている。


「例の者は見つかったのか?」

「いえ、まだ見つかっておりません。誰かがかくまっていると考えた方がよろしいかと」

「そうか……では、聖剣に選ばれたという冒険者を騎士団に入れ、戦力を少しでも補う」


 渋るように、王が策略を告げる。


「どこに配属させましょうか?」


 騎士は自分の立場が危うくなるのを恐れたのか王へ質問を投げかける。


「聖騎士の称号を与え、新たな部隊を引き入らせる。この待遇なら断りはしないであろう」

「聖騎士ですか……確かにこの待遇なら断わる者はいないでしょうね」

「うむ、元はただの冒険者。お前も操りやすいであろう?」


 聖騎士の称号を与えられた者が率いる聖騎士部隊。過去に一度聖騎士部隊を率いた者がいた。だがその者は突如姿を消し、部隊は解散。そんな部隊の再結成を目論む王。王と聖騎士の不敵な笑いが王室内に響く。




 ***




 厳重な警備の門を潜り、広々とした廊下を通る。代わり映えのしない景色を見ながら数分が経ったころ、王室の前へ着く。大きな扉が庶民との差を見せつける。扉をこんなに大きくする必要あるのか?


「金持ちってどうしてこんなにも派手にするんだろな」

「どうしてだろうね! でもこういうのって憧れるな~!」


 シズクは城に憧れてるのか。女性はみんな憧れるものなのか? プリンセス願望ってやつだな。俺はシズクのプリンスになりたいです。よし! 稼いで城建てるか。

 そんな考えを察したのかボスゴリが口を開く。


「今、城建てようとか考えたろ?」

「考えてねぇよ! ニヤつくな!」


 ボスゴリはニヤつきながら俺の顔を悪戯に見てくる。こいつほんとなんなの。


「翔吾君、ハンツ君。もう王室の前だから少し落ち着こうか?」


 王室前で騒ぐ俺たちを静めるシルヴァさん。その後に目線を、王城で働くメイドに送る。何かが伝わったのか、メイドはこくりと一回頷き大きな扉に手を掛ける。

 開いた扉の先にいたのは、高飛車な雰囲気のおっさん。王だと言わんばかりの豪華なアクセサリーを見に纏い、玉座に鎮座している。

 その王の前に片膝をつけ跪くシルヴァさん。


「連れて参りました」

「よくぞ参ったな」


 腹の底から響く声で告げる王。

 ほぼ確信しているが、確認の為に隣にいたボスゴリに尋ねる。


「なぁ、あの偉そうなのが王様か?」

「あんなでけぇ椅子に座ってんだぁ、王様しかねぇだろぉ」

「ちょっ! ちょっと! 二人とも! 聞こえちゃうよ!?」

「申し訳ありません! ブーゼ王。すぐに黙らせます」

「早くしてくれ。余は冒険者と違い、暇では無いのでな」


 俺とハンツの態度に、焦りながらも止めようとするシズク。それとは対照的に冷静に王へ謝罪を済ませるシルヴァさん。こいつブーゼって名前なのか。それにしても嫌味なやつだな。


「申し訳ないですね。ですが俺達も暇では無いですよ? 嫌味はいいんで、聖剣についてだけお願いします」

「貴様! 立場を弁えろ、冒険者風情が!」

「おいおい、俺たちは客人だろぉ? 物騒なもん突きつけんなよ。これでもうちのリーダーなんだわぁ!」


 俺の挑発じみた発言に、怒りを爆発させる男。鎧をガシャリと鳴らし、薄く青色に輝く剣を俺に向け構える。

 段々と近付く鎧を着た男。それを遮る様にボスゴリが間に割って入る。その光景見つつ、ボスゴリの言葉を聞いた王は声を張り言う。


「下がれ、騎士団長シュバリエ」

「かしこまりました……」


 騎士団長シュバリエと呼ばれた男は剣を収め、従順な態度を見せる。こいつが騎士団長? こんな短気なやつが人をまとめれるのか?


「それで翔吾とやら、今回貴殿を招いたのは、聖騎士として我が国を護って欲しいからである。聖剣に選ばれたのは運命であろう。頼まれてくれるな?」

「え! 聖騎士!? 凄いよ翔吾!」


 おほん、とわざとらしく咳払いをした後に発せられた王の言葉に、ばっと身をこちらに振り向かせ驚くシズク。


「左様。聖騎士の称号を与えられた者は過去に一人。貴殿と同様、聖剣に選ばれた者だ。これ以上に誉な事は無い、喜ぶが良い」


 シズクの反応を見て、それに同調する様に言葉を少し弾ませ言い足す王。

 喜ぶが良いって言われたってな……。王の話への、俺の答えはすぐに決まった。


「あ、お断りします。要件済みました? 腹減ってるんで帰りますね」


 俺の発言に場が一瞬にして凍りついた。と錯覚する程の静寂に包まれる。その静寂を真っ先に切り裂いたのはシズクだ。ボスゴリも続いて口を開く。


「断っちゃうの!?」

「ははは!! 面白いぜぇチビ! 普通断らねぇだろぉ」

「聞こえ良くても、結局は国の道具だろ? お断りだ」


 誰かに利用されるのは嫌だ。それになんか、きな臭いんだよな。

 この世界に来る前の俺なら、場を壊さない様に自分の意思を殺して承諾してただろう。この選択が正しいかは分からない。そんな迷いをかき消すように、リルとガンテツが口を開く。


「少しは頭が良い様だな、小僧」

「正しい判断じゃぞ! 翔吾!」


 二人がここまで言うって事は俺と同じで、きな臭いって思ってたのか?

 騎士団長はまたも熱くなり、剣を抜く。


「正気か貴様! こんなにも誉な事はないんだぞ!?」

「そういうのが嫌なんだよ。あんたらには誉な事かも知れないけど俺からしたら、他人の靴紐が解けたってくらいにどうでもいいんだわ。だからさ、あんたらの価値を押し付けるなよ?」


 例えが地味だってボスゴリに言われたが、良い例えが思い付かなかったんだから仕方がない。

 そんな俺の意見を無視し、王が言葉を吐く。


「まぁそう言わずに、これは国の為なのだ。もし断るのならば、国家転覆を目論む反逆者と判断し、国から追放する事になるやもしれんぞ?」

「王が脅迫かよぉ。どうすんだチビ」

「俺は追放でもいいんだけど――」


 俺は追放でもいい。だがまだシズクの魔法を取り戻してない、ここで引くわけには……出来る事は全力で協力するって決めたんだ。この状況、どう対応する?

 駆け巡らせる俺の思考をかき消す様に、王の声が鼓膜を響かせる。


「追放になれば、聖剣は返してもらう事になるが?」

「こんな派手な剣どうだっていい……あ、そうだ! 取引をしよう王さま」


 王の一言で、打開策を閃いた。これなら確実にいける!


「取引……だと?」

「そ! あんたらは言いなりにならない俺を追放したいんだろ? それでいて聖剣は手放したく無い」

「……」

「沈黙か。まあ堂々と言えないよな。いいぜ、大人しく追放されてやる。聖剣も置いていく。ただし! 森に出現しているダンジョンを俺達に攻略させろ!」


 ダンジョンの攻略。これを聞き、王は勢いよく玉座から腰を上げる。先ほどよりも大きな声で言葉を発する王。


「森のダンジョンだと!? 正気か? あれは勇者パーティーでさえ攻略できなかった。それをたかが冒険者が攻略とは……だが良いだろう、盛大に敗北を味わうが良い」

「本当によろしいのですか?」


 一度は冷静さを失いそうになっていたもののすぐに落ち着き、また玉座へ腰掛ける。騎士団長は王へ、判断への再確認をする。

 王は、悩む様に唸り言葉をこぼす。


「構わない。冒険者に元盗賊、勇者パーティーのおちこぼれ。それに幼な子に老人。到底攻略できるとは思わん。自分の無力さ、愚かな選択で仲間を危険に晒した事を悔やむ、良い機会であろう」

「聞こえてんだよ、そういうのは俺らが帰ってから言えやぁ!」

「ほっとけ、ボスゴリ。飯行こうぜ」


 あからさまな王の挑発に乗るボスゴリ。恐らくだが分かってて乗ったなこいつ。そんなボスゴリを宥める。早く王城を去ろう、こんなとこに長居はしたくない。攻略の許可は降りたしな。ひと月の猶予付きで。

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